「自給自足できる街」をテーマに飲み、語り合うgreen drinks松戸。「カシワがカシワのままであり続けるために」をテーマに飲み、語り合うgreen drinks柏。二つの地域が力強いタッグを組み、やっぱり飲んで語り合うのがgreen drinks松柏(しょうはく)です。過去3回、イベントを通じて交流を重ねてきました。
今回そのgd松柏で、green drinks Japanサミットの開催が決定!これまで東京で行われていたサミットですが、他のまちでもいいんじゃない?という声から、松戸と柏に全国のgreen drinksオーガナイザーをお招きすることになったのです。
gd松柏vol.4であると同時に、東京以外の地で初の開催となるgreen drinks Japanサミット。参加者の皆さんに楽しんでもらうため、gd松柏が掲げたテーマは「おもてなし」! そこで今回のサミットは、豪華二部構成となりました。
第一部は、松戸と柏の魅力を発見するまち歩きツアー。第二部は、地元の野菜を始めとしたローカルな食材で楽しむ鍋パーティーです!
昼はローカルな魅力が見つかって楽しい! 夜は鍋をつつきながら飲み、語り合って、まちを面白くするアイデアをシェア! gd松柏の地元愛に溢れたエネルギッシュな「おもてなし」が、全国のgreen drinks間で新たなコラボを生んだ一日をレポートします。
人の個性がぶつかって、何かが生まれる柏
第一部は柏と松戸のまち案内のツアー。とはいえ、柏も松戸も、雄大な自然景観があるわけでも、有名な観光地があるわけでもありません。
ところが!柏と松戸に精通するツアーガイド行政翔平さんにかかれば、二つのまちがとてもクリエイティブで、面白いことが起こっているまちに変身します。
行政さんは、松戸のまちづくりプロジェクト「MAD City」を紹介する公式ガイドであり、柏で地元の資源を生かしたコミュニティと仕事の創出を目指す合同会社EDGE HAUS のスタッフでもあります。千葉県我孫子市出身で、幼少から柏と松戸に親しんできた、いわば柏・松戸ネイティブの行政さん。ガイド中のトークも、地元に長く親しんだ人ならではのローカルネタが飛び出していました。
ツアーに集まったのは、全国のgreen drinksオーガナイザーや今後green drinksを始めようとしている方々。JR柏駅前からスタートです。
「駅の自動改札機が日本で初めて導入されたのは柏駅なんですよー」「へぇー!」
まちを歩きながら、ところどころで行政さんの解説が入ります。通りを行く人も「なんだ?」と興味のある様子。観光地ではよくある光景ですが、ベットタウンの駅前では珍しいかもしれませんね!
「そこの角にあるマクドナルドは、地元の方から『三角マック』と呼ばれて親しまれていますよ」
実は柏、音楽のまちでもあるとか。路上ライブからメジャーデビューを果たした「Something ELse」もここ柏から生まれたそうです。一頃の盛り上がりはありませんが、柏銀座商店街には、ライブハウスが2つあります。その柏銀座商店街を歩いていたら偶然、まちの案内所である柏インフォメーションセンターから生まれたゆるキャラ「カシワニ」に遭遇!子どもたちにも大人気のようです。
続いて訪れたのは「Noblesse Oblige(ノブレス・オブリージュ)」、通称NOB(ノブ)。行政さんもスタッフとして働くEDGE HAUSが運営する「空間」です。
重厚感のある扉を開けるとそこには、建物の外観からは想像できない非日常空間が。
NOBという「空間」は、4つの機能を持っています。
①フューチャーセンター/フューチャーセッション
企業や大学のオープンイノベーションの場、未来に向けた市民参加のまちづくりの場。NOBではその箱としての機能だけではなく、対話空間を設計し演出するフューチャーセンターディレクターや、進行役であるファシリテーターの派遣も行っているそうです。
②コワーキング・スペース
異業種同士のさまざまな人が集い、コラボレーションを活性化していく場。地域に住む人が地域で働く、職住近接型のロールモデルの創造を目指しているとのこと。
③セミナー/貸し会議室
④パーティースペース
「クリエイティブな人たちが集まり何かがスパークする場」という空間コンセプトの通り、お洒落で洗練されたフロアからは、アイデアを持った人が集まり、建設的な議論を広げる様子がイメージできました。
「活用している人は、近隣のセレクトショップ店員やカフェ店員、デザイナー、Webデザイナー、サラリーマンと様々」と行政さん。
地域を拠点としたクリエイターや地元の活性化を目指して企業を志す若者たちの創造的な拠点になることを目指したいと思っています。地元と密着したコワーキング・スペースという点が大きな特徴ですね。
柏を盛り上げる拠点として成長してほしいな、と願いつつNOBを後に。ツアーはまだまだ続きます。
絵本専門の「ハックルベリーブックス」。長居必至の絵本の世界が広がっています。カウンターにはかわいいフクロウがいました
次なるエリアは「裏カシ」。ファッションのセレクトショップが数店出店しているエリアということで近年注目が高まっているエリアだとか。「裏原」ほどではないにせよ、ストリート系や古着など、エッジの効いたショップが並んでいます。
行政さん一押しのセレクトショップ「iii3(アイスリー)」。ファッションやコスメ、動物のぬいぐるみなど、独特の感性が息づくスタイリッシュなアイテムが揃っています。
柏も奥が深いな〜と感心した後、訪れたのは「YOL Frosch Cafe」(通称フロッシュ)。今や「柏のたまり場」的な場所だそうです。
お昼は武井佑介店長によるランチが楽しめ、夜は曜日によって店長が変わるシステム。水曜はアジア料理が堪能できる「パクチーナイト」、金曜は野菜作りに励む若手農家が店長の「農民バル」、土曜はOLが将来居酒屋をオープンさせたいとの思いから始めた、手料理とトークが楽しめる「かかあの恵み」など、店長の個性が溢れ出ています。
(上)コミュニティ新聞「月刊Frosch」を興味読む参加者たち/(左下)昼の部店長の武井佑介さん(右)。/(右下)店内にはカエルがいっぱい
行政さんも常連の一人でふらっと立ち寄る機会も多いとか。「基本的に相席なので、落ち着いて飲むことはできません(笑)。一緒に飲む人との会話が楽しいんですよ」。柏を楽しむ人たちは、フロッシュに集い、混ざり合って、小さなコミュニティが作り出しているようです。
JR柏駅に向かいます
歴史に彩られDIY精神が息づく松戸
柏を後にして次なるまち、松戸へ! 早速向かったのは「PARADISE STUDIO」です。
「PARADISE STUDIO」があるビルは、かつてラブホテルと飲食店が入居していた7階建ての雑居ビル。現在は1〜3階でパチンコ店楽園を営む浜友観光株式会社がビルを所有しており、活用されていなかった上階のホテル部分のうち4階のワンフロアを利活用しているのです。
赤い絨毯が印象的。みんなでなぜかどきどきしながら潜入します
6部屋がMAD Cityの扱うクリエイティブスペース「PARADISE STUDIO」として活用されており、残りの2部屋はMAD Cityも関わる地域団体「松戸まちづくり会議」の運営するアーティストインレジデンスのスペースとなっています。
まだ使用者が入っていないクリエイティブスペースはまさに元ラブホテルといったところ。見学時、レジデンススペースにはポーランド人アーティストが滞在されていました。運営を担う松戸まちづくり会議には、一ヵ月単位で日本で活動を行う海外アーティストからの問い合わせが殺到中だとか。確かにこんなレアな滞在スペースはなかなかありません。感心しながら、次の場所へ向かいます。
1887年創業の床屋「大井」。堂々とした佇まいです
松戸は江戸時代から水戸街道の宿場町として栄えた伝統があります。特に松戸駅西側のエリアには、昔ながらの建物が残り、伝統的な商売をする方たちがたくさんいます。
たとえばここ八嶋商店。古くから営んでいるちょうちん屋です。ツアー一行を店主が温かく出迎えてくれました。
八嶋商店も3.11の震災により、建物に被害が出たため建て替えをしました。現在の建物の一部には解体時に出た古材を使い、MAD Cityのイラストレーターさんと設計士がコラボレーションしてルーバーをつくっています。
片方から見ると招き猫、反対側から見るとちょうちんの絵。
「PARADISE STUDIO」に八嶋商店の事例をはじめ、松戸のまちの中でアーティストが住み、さまざまな活動を行っています。そんな仕掛けを生み出しているのが、まちづくり会社まちづクリエイティブです。
一行はそのまちづクリエイティブへ。いわばMAD Cityの本拠地です。MAD Cityプロジェクトとは、「JR松戸駅前を「マッドシティ」と称し、クリエイターやアーティストなどによる創造的なコミュニティづくりを進め、より魅力あるエリアに変えていく、まちづくりのプロジェクト」のこと。松戸市本町にあるMAD City Galleryを中心とした、半径500mのエリアをマッドシティとして定義し、まちを盛り上げるさまざまなイベントを行っています。
お米屋だった建物をリノベーションしたシェアアトリエ「旧・原田米店」。20人近いアーティストやクリエイターが共同で借りています。
日本家屋の裏には現代的なマンションが。その対比も松戸らしさの一つといえるのかもしれません。
幼児、小学生を対象としたアート教室「アトリエミルクル」の鈴木美穂さん
最初、大家さんに説明するのは大変だったそうですが、今では「良いリノベーションをしてくれたね」と言ってくれるようになったそう。
段々と辺りも暗くなってきました。宝光院にある四国八十八箇所のお砂を祀った「松戸四国八十八箇所」を抜けて、歩きます。
自然が随所に残っているのも松戸の特徴の一つ。坂川沿いは穏やかな雰囲気です。地域アートプロジェクト「松戸アートラインプロジェクト」でも作品展示の舞台となりました。8月には「松戸宿坂川献灯祭り」も行われます。
そしてMAD City名物!根本壁画通りへ。大山エンリコイサムさんとオランダ人アーティストによるの作品が目の前に現れました。作品のちょっと右側には、道路標識のように見えてサイズ感がちょっと違う「根本壁画通り」の文字が。町会の方が働きかけて、松戸市が設置したそうです。「松戸市民には自治精神が息づいているのかもしれません」と行政さん。
古くから息づくまちにアーティストが入り込み、新しい何かが生まれつつある松戸。洗練もされすぎず、下町感覚を残す松戸。あのドラッグストア『マツモトキヨシ』の生みの親が市長だった時代もある。あのIKEAが早過ぎた日本初出店をしすぐに撤退したこともある。そんなトピックも含め、一言でその全容を言い表しにくいのが、松戸というまちなのかもしれません。
「松戸っていわゆる中心地がないんですね。だからこそ、新しいコミュニティが育つ余地があるのかも」と行政さんは語ってくれました。
ここでツアーは終了です。たった半日で、とても詳しくなれた気がします。が、このレポートで伝えられた魅力は半分にも満たないでしょう。博覧強記の行政さんのトークが聞きたい方はぜひツアーに参加してください。そして、実際に歩いて、空気を吸って、まちを感じてほしいですね。
第二部はおもてなし鍋パーティー!!
さて!ツアーの後の第二部は、gd松柏の面々が鍋でおもてなし!場所は松戸のイベントスペース・カフェの「FANCLUB」。平日は「Life Cafe」として営業しています。
今回のgdサミットの仕掛人はこの二人!gd柏オーガナイザーの吉岡龍一さんと、gd松戸オーガナイザーの殿塚建吾さんです。乾杯〜!
鍋の野菜もたくさん!農業も営んでいる吉岡さんや吉岡さんの友人の畑で穫れたオーガニックの野菜が並びます。お米はgd松戸が今年育てた自然栽培米です。
各地の名物も集まってお鍋もにぎやかに。小田原かごせいの「どうぶつかまぼこ」や豪華飛騨牛など。
そしてgdオーガナイザーの皆さんから発表がありました。一言ずつご紹介します。
六本木
安藤 光展さん
具体的な取り組みはこれからです。まずは小規模からかなと。六本木の地域性を生かしたコミュニティに育てていきたいと考えています!
飛騨
白石 達史さん
「田舎の未来」と題した第1回~松柏と一緒に行った遠征ツアーまで、特にテーマを絞らずに開催してきましたが、これからは飛騨の暮らしと関わりのある小さなことをテーマにしていきたいと思います。飛騨で暮らす私たちが手の届く範囲で、近所のおっちゃんがふらっと来ても楽しめるgreendrinksにしていきたいですね。
足利
曽根田 敏治さん
gdAshikagaでは、npo法人コミュニケーションラボが主体となり、街のことを自分事化したくなる 人が増えるように街の情報の共有化を行っています。現在のgdでは、私自身が移住者ということもあり、外から来た人が楽に関われるような”足利の教科書” という本の作成を市民と一緒に行っています。コンテンツ自体は面白くなってきていますが、オーガナイザー側のまとめ力ファシリテーション能力が至らない時を感じ、もどかしさがあります。
Edo
内藤 克也さん
海外の人とつながるプラットフォームが作りたいと考えて立ち上げました。EDOは「Everything Do it Ourself.」の頭文字。今年の10月には、手作りの縁日スタイルでイベントを開催しています。人をつなぐ活動に広げていきたいです。
green drinks the world
三上 薫さん
これから開催予定ですが、オーガナイザーの皆さんから刺激をもらえるのではと思って参加しました。世田谷の外に住む人の視点が入ると、地域面白くなるのではと思っています。手探りですが、徐々に進めていきます!
取手
飯島 ゆうすけさん
地域の問題は地域で解決するべき。なんとかしなければ!という思いで立ち上げ、今に至ります。農業やまちづくりなどいろいろなテーマで開催してきましたが、実際に行動するとなるとなかなか手が上がらないのが課題ですね。汗をかける人が集まる場所にバージョンアップさせたいと考えています。
宇都宮
古河 大輔さん
宇都宮を楽しみ尽くすことをテーマに今年の3月からスタートしました。gdの開催を通じて、普段まちづくりや社会課題などに関わりがない人たちと、地域の楽しみや課題、面白スポットなどの新しい発見を、自然と参加できる形で共有できたのが一番の成果です。また様々なバックグラウンドをもった人たちとの交流や開催テーマを探しながら面白いヒトやモノ、コトに出会えるのもgdの醍醐味だと思います!
松本
小林 聖也さん、中山 兼一さん
私たちの活動テーマは、「地元愛の底上げ」。松本に住む人、松本を生活の場とする人たちが、より松本を好きになる、そのきっかけづくりを目指しています。そのためには、いかに入り口を大きく、敷居を低くするか、そして何より、いかに楽しそう!楽しい!と思える企画を発信していけるかが課題です。皆さんと一緒に、様々な企画、方法を試行錯誤し、このgreen drinks Matsumotoを楽しみながら、松本をもっと好きになっていきたいです。
江戸川
徳田 真人さん
まだまだスタートアップですが、green drinks で得た皆の意見や、こうだったらいいのにという、アクションや場を形成のアクションの実践により、一人でも多くの住民の方が地域創りに関心をもち、かつ参加できる、そのためのアイデアだしの場にしていこうと考えています。行政まで巻き込んだアクションのきっかけが生まれる場となればと。地域創りのプラットフォーム化したいと意気込んでいます。
静岡
当日参加できなかった静岡からもメッセージをいただきました!
全国のgreen drinksつながりの皆さん、こんにちは!2010年に始まった”シズオカ”をキーワードに集まる人々のプラットフォームを目指す「green drinks静岡」は、ようやく15回目を迎えることができそうです。静岡らしいゆるさで、気楽に集まりお酒を片手に語らいながら、地元を改めて見直したり、なんとなく”放っておけないなぁ”というような愛着心が育まれてきたような気がします。仲間も少しずつ増えてきました。
呼びたいゲストもやってみたい企画も、まだまだたくさん!ほんの少しだけペースアップをしつつ、これからも変わらぬ”ゆるさ”で楽しく続けていくことが一番の目標です★静岡にお越しの際は、お気軽にご連絡くださいね。
参加者の皆さんの語り合いもより饒舌に。名酒も飛び出し大盛り上がりです。鍋も大人気でした。
楽しい時間も終わりを迎えます。最後はgd松柏のメンバーがお見送りしてくれました。ありがとうございました!
イベントを終えて
大成功を収めたgd松柏vol.4、gd Japanサミット。東京以外で初の開催となった今回の試みを、gd松柏のお二人と、gdtokyoの小野 裕之さんはどう感じたのでしょうか?
「green drinks のサミットを東京以外でやるということでそれならせっかく選んでもらった松戸と柏にいる僕達の日常を見てもらうことが、何よりのおもてなしだろうと思って企画をさせて頂きました。
松戸と柏にわざわざ都内をはじめ長野や飛騨、宇都宮など遠方からも人が来てくれるというのは、地元の僕らにとってはとっても嬉しい驚きでした(もちろん近くの方々もありがとうございます)。
green drinks の良いところは各地の様々な人とつながりを持てることだと思っているので、今回の松柏での出会いをきっかけに、また松柏が出かけられたら嬉しいです。これだからgdはやめられません!
(殿塚 建吾さん)
green drinks松柏はこれまで金谷や飛騨など、松戸柏を飛び越えて他の地域やまちを見学するイベントを多く開催してきました。 そんな松柏でサミットを開催して各地からいらっしゃる人々をおもてなしするのは初めての経験でした。 でも松柏にはおもてなしのプロが揃っていて、日中に開催したツアーも夜の鍋も松柏らしいおもてなしができたと思います。
地元で作った野菜や地元で焙煎しているコーヒー、食の分野で松柏には面白い人間が多くいるので、今後も自分たちの活動をPRできればと思います。 でもやっぱりどこかへ行く方が楽しいなー。(吉岡 龍一さん)
2010年の1月に「あなたの町でもgreen drinksを開催しませんか?」という呼びかけで始めた「green drinks Japan」ムーブメント。それから4年が経ち、全国130箇所での開催にまで広がってきていることに驚いているのと同時に、日々、勇気をもらっています。そして、今後も健康的で、自律したネットワークに育てていくべく試行錯誤していきたいと思っています。
そのひとつの方法として、グリーンズ自身がオーガナイザーである「green drinks Tokyo」は守りながら、「green drinks Japan」ではグリーンズの存在感をどのように薄めていけるかが鍵になるんじゃないか。そんなことをボンヤリと感じています。殿塚くん、吉岡くん、ありがとう!(小野 裕之さん)
green drinksは、年齢や職業の垣根を越え、人と人の思いをつなげる”出会いの場”。あなたのまちのgreen drinksに参加してみませんか?