前回の記事、「『世界で一番大切な人々のために』イケアが取り組む教育支援事業」で登場したイケアのソフトトイ・キャンペーン。
学校に行けない、勉強することができずにいる世界中の子どもたちに教育の機会を提供するために開始されたこのキャンペーンは、開催期間中にイケアストアでソフトトイまたは絵本を購入すると、1商品あたり1ユーロ(約100円)がユニセフとセーブ・ザ・チルドレンが実施する教育プログラムに寄付されるという仕組み。そして、2003年からこれまでに46カ国90プロジェクトを通じて教育の機会が贈られた子どもは、なんと1,000万人以上になるのだそう!
SCHOOL FOR SCHOOL船橋校を訪問!
そのソフトトイ・キャンペーンの一環として今年、2013年から加わったのが、日本の子どもたちが世界の子どもたちの教育問題について考える「SCHOOL FOR SCHOOL」プロジェクト。イケアが「こども国連環境会議」とともに開校したこのSCHOOLでは、船橋、福岡、鶴浜のイケアストアを舞台に、集まった生徒たち(中学生・高校生)が途上国のリアルな教育問題について考え、自ら表現し、発信する。子どもたち自身が世界の教育問題についてアクションを起こすことを体験できるSCHOOLなのです。
「でも、一体、どんなことをするの?」というわけで、船橋で開校されたSCHOOL FOR SCHOOLを訪問してきました!
ストアの一角に開校されたSCHOOL FOR SCHOOL。普段はそれぞれ違った中学校や高校に通う生徒たちが肩を並べて席に着くと、さっそく最初の授業がスタート。最初の講師として登場したのは、セーブ・ザ・チルドレンの深見俊朗さん。世界中の子どもたちの現実を知るための授業です。ある国では貧困のため、もうひとつの国では紛争のため、そして、他の国では差別、災害のため……と、さまざまな理由で勉強することができない子どもたち。セーブ・ザ・チルドレンで活動する方々がいくつもの国々で目の当たりにしてきた途上国のリアルな教育状況を知り、さらに、各国の就学率や識字率についてデータ化された調査資料をもとに、生徒同士でのディスカッションが始まりました。
「小学校に行けないってことは、中学校にも行けないんだよね?」
「字が読めないと、仕事もできないよね? そうすると、結婚したり、子育てってできるのかな?」
「薬を買ってもさ、説明書読めないんだよね?」
「校舎があってもトイレがないんだって。女子としては……、学校行くの嫌だよねぇ」
「2時間も歩いて学校に行くって、雨の日も行くのかなぁ?」
ディスカッションから聞こえて来たのは、こんな声。自分自身も学校に通う子どもたちだからこその意見には、ハッとさせられるものがあります。
いざ、インフォグラフィックスに!
アイデアを抱えて、ストア内をまわる!
そんなディスカッションの後に始まったのは、「インフォグラフィックスで表現しよう!」という制作の授業。そして、「インフォグラフィックスって何?」という疑問に応えるべく登場したのは、東京工芸大学デザイン学科教授であるデザイナーの福島治先生。グラフィックデザインや広告制作、そしてソーシャルデザインを手がけてきた福島先生が、「情報やデータを視覚的に見せ、より強くメッセージを伝えることができるインフォグラフィックスだからできること」をレクチャー。データをインフォグラフィックス化する制作って、なかなかおもしろそうです。
与えられたテーマを、より多くの人に伝える効果的なインフォグラフィックスのイメージを練り上げたら、生徒のみなさんは、いざ、ストアへ! そう、インフォグラフィックスを作る素材は、ストア内に並ぶ商品から調達するのです。イケアの商品だったら何でも使ってよし! ちなみに、組み立てている間に陽がくれてしまいそうな商品や、ポスターに入りきらない大きな商品以外はNG。あ、もちろん、個人的なショッピングも授業中にはNGです!
広いストア内をぐるぐるとめぐった末、思い思いの商品を持ち帰ってきた生徒のみなさん。これらの商品を使って、制作スタートです。
高校3年生の女の子ペアは、「小学校に入学した生徒が最終学年まで残る割合」における日本とモザンビークの差を表現することにチャレンジ。そして、「女の子の識字率」というテーマを受け取った男の子ペアが選んだのは、ワイングラス。
思い思いの表現が完成
長い時間をかけて出来上がったそれぞれのインフォグラフィックス。渾身の作品が仕上がったら、カメラとライトのセッティングされた撮影コーナへ。カメラマンさんによって撮影された作品画像は、なんとこの後、ポスターに。
丸一日をかけた充実のSCHOOL。すべての作品が撮影を終え、いよいよ発表の時間に。それぞれが作り上げた作品をずらりと紹介します!
個性豊かな作品たち。ひとつひとつの作品をじっと見てみると、彼らがそれぞれの商品を選んだ思いが見えてきます。例えば、中学生の女の子ペアが受け取ったのは、「女の子の識字率」というテーマ。「字が読めないって、女の子にとっては、どういうことだろう?」という疑問に、彼女たちの頭に浮かんだのは……。
“もらったラブレターを読むことができない” と解釈しようというアイデア。ピンクの背景、土台にはアルファベットがプリントされたカーテンを。そして、肌の色の違う女の子たちを乗せているのは、手を伸ばし合うハートのクッション。女の子の識字率が47%のエチオピアは、女の子の識字率が100%である日本の半分の数しかクッションがありません。一瞬、「なんだろう?」と思って目を奪われ、「なるほどねえ〜」と腑に落ちる。それが、インフォグラフィックスの効力なんですね。
それにしても、どの作品のなかでも、アイテムの色や角度、組み合わせ方、並べ方と、細かなところまで、自らの「意思」を組み込んで表現されていることに驚きです! ペンを選んだ女の子ペア、そして、チョークを選んだ男の子ペアの作品も思わず「な〜るほどね〜」と頷いてしまう個性的な作品に仕上がっています。ぜひ、チェックしてみてくださいね(他のストアで開催されたSCHOOLに参加した生徒さんの作品も合わせて、たくさんの個性あふれる作品が掲載されています)。
「熱気ある空気のなかでのものづくりの時間でしたね。みなさんには、見る人の心を掴む作品を作る力がある。この教室から、世界を変えるクリエイターが生まれることを願っています」と、すべての作品講評を終えた福島先生。
子どもたちが世界の子どもたちが直面する問題を知り、自ら表現したポスターたち。おとなも受けたくなるようななんとも充実の授業ですが、「初めて会うクラスメイトと話ながらすごく真剣に考えていたら、あっという間に過ぎた一日だった」と語る彼らこそが持つ可能性も痛感。これから世界の教育問題を変えていくひとりになるかもしれないと頼もしく感じていたら、「SCHOOL FOR SCHOOL」という名前に込められたイケアの思いになんだか納得してしまいました。
ソフトトイ・キャンペーンは、各ストアで2014年4月4日まで開催中。ソフトトイを購入することで、世界の子どもたちに教育の機会を贈ることができます。