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うまくいっていない時こそ、何かを変えるチャンス!マーマーマガジン編集長・服部みれいさんの”レイブル期” [STORY OF MY DOTS]

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特集「STORY OF MY DOTS」は、“レイブル期”=「仕事はしていないけれど、将来のために種まきをしている時期」にある若者を応援していく、レイブル応援プロジェクト大阪一丸との共同企画です。

今回は、自然やからだを見つめる雑誌「murmur magazine(マーマーマガジン)」編集長の服部みれいさんに伺いました。
 

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服部みれい
文筆家、『murmur magazine』編集長、詩人。育児雑誌の編集を経て、1998年独立。ファッション誌のライティング、書籍の編集・執筆を行う。近著に『あたらしい結婚日記』(大和書房二刊)。2008年春に『murmur magazine』を創刊。2011年12月より発行人に。冷えとりグッズと本のレーベル「マーマーなブックス アンド ソックス」(旧mmsocks、mmbooks)主宰。あたらしい時代を生きるための、ホリスティックな知恵、あたらしい意識について発信を続ける。『冷えとりガールのスタイルブック』(主婦と生活社=刊)をはじめ、代替医療に関する書籍の企画、編集も多数。忍田彩(ex.SGA)とのバンド「mma」では、ベースを担当。メルマガ「服部みれいの超☆私的通信ッ」発行中。岐阜県生まれ。http://hattorimirei.com/

ゼロからのはじまり

「マーマーマガジン」は、2008年に発行された女性向けのエコカルチャー雑誌。「美しく甘く、生きること」をテーマに、エシカルなファッションだけでなく、身体やこころへの気づきを提案しています。

服部さんがこの「マーマーマガジン」を立ち上げたのは、33歳ごろのことでした。

ある雑誌の創刊に携わっていたのですが、出版社などの関係で、2号目で休刊になってしまったんです。さらに同じ頃、プライベートでも大きな別れがあり、一度にたくさんのものを失って、本当にゼロの状態になってしまいました。

仕事でもプライベートでも、いろんな人たちに迷惑をかけて申し訳ないという思いと、情けない、悲しいといった気持ちでいっぱいでした。

しかし、そうした気持ちが原動力となったと言います。

雑誌はなくなっても、これからやろうと思っていた企画はこころの中で残ったので、これを何か形にできないかと思い、自分で雑誌をつくることを決めていました。一度倒れても、また起き上がってみようと思って…。それが、今の「マーマーマガジン」です。

当時、廃刊になってしまった雑誌の仕事しかしていなかったため生活を立て直す必要もありましたが、そのときはどこかに転職するという選択肢はなく、「雑誌をつくるしかない!」と決意は固かったのだそうです。

あの頃の私は迫力がありましたよ。あのくらいパワーがないと、雑誌の創刊なんてできなかっと思います。

こうして、たくさんのものを失ったつらさをバネに、「マーマーマガジン」の芽がぐんぐんと伸びていきます。
 
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(左)創刊準備号、(右)創刊号

まずはクライアント探し

自分で雑誌をつくる。そう決めてから企画書を作成し、まず向かった先は、出版社…ではなくアパレル会社でした。

出版社では雑誌の創刊を承認してもらうのに、たくさんの時間と手間がかかりそうだと思いました。それに、雑誌をつくるには広告費が必要なので、一人でたくさんの企業とやりとりするのは大変だな、と。

「でも一社となら、少しの力でたくさんのことができるだろう」と、クライアント探しをすることに。

小さな規模でなら、企業が一つの雑誌に広告を出すお金で、雑誌が作れると思ったんです。そこで、私の伝えたいことを発信しつつ、その会社のブランディングにもつながるような雑誌づくりを考えました。

「雑誌」という既成の枠組みに自分をあてはめるのではなく、「自分」に雑誌というものを合わせていくことを考えたのです。

テーマはエコロジーにしようと思ったのですが、その当時はすでに、車や建築、食べ物、コスメなどの業界ではエコとかオーガニックといったものが少しずつ広まっていました。でも、衣類の世界だけはまだまだ遅れていると感じていたんです。

そこでアパレル会社に注目し、ある会社に提案したところ、ちょうどエシカルファッションに取り組みたいと思っていたブランドが「一緒にやりましょう」と言ってくださり、「マーマーマガジン」を出すことに決まりました。

こうして創刊へ向けて、準備が始まります。

ついに創刊!

「マーマーマガジン」は、B5サイズで70ページほどの小さな雑誌。

普通、雑誌をつくるときは「こんなデザインで、ページはこのくらいで…」と決めていきますが、私たちはやりたいこととできることを見合わせながら作っていきました。この装丁になったのも、試行錯誤した結果です。

創刊時の会議はすごく活気がありましたね。いろんな人を呼んで話を聞いたり、ブランドの人たちと編集会議を重ねたり…。一年くらいかけて創刊準備をしました。

こうして2008年2月に創刊準備号、4月に創刊号が発行されました。
 
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ウェブサイトも読み応えのあるページが満載

自分たちスタッフも楽しく、体力的にも、内容の面でもいきいきと続けられるよう発行は年4回とし、今月の最新号でちょうど20号目を迎えます。(現在は不定期の発刊

次なる一歩へ

読者も増え、着実に広がっていった中で、転機となったのは3.11でした。

雑誌も成長して、ワークショップやイベントなどを開催するようになり、もっと読者との交流を積極的に増やしたいと思っていました。

そんなときに震災が起きて、私もみんなも価値観が揺さぶられて、本当に何をしたいかがはっきりしたんです。

それで販元だったブランドの方と話し合っていくうちに、より本質的な雑誌づくりを目指して、そのブランドから独立することになりました。自然と行き着いた、お互いにとって良い着地点でしたね。

その後は雑誌の内容も、服部さんや編集部が本当にやりたいことを発信するようになっていきました。

2012年には、別冊「マーマーマガジンbody&soul」を発行。本誌でも取り上げてきた、冷えとり健康法を特集した一冊です。

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別冊「マーマーマガジンbody&soul」

冷えとりとは、からだとこころの「冷え」に着目し、冷えをとることによって心身を整えていくという東洋医学をベースとした健康法で、マーマーマガジンではこうした自然療法も紹介しています。

もともとは母が冷えとりを実践していて、私も高校生のときから触れてはいましたが、本格的に出会ったのは30代になってからです。

長い歴史の中で大事にされてきたことって新鮮ですごく面白いし、ワクワクしませんか?今は知られていないけど昔はみんなやっていた民間療法で、今改めて「あたらしい」というもの…簡単に言えばおばあちゃんの知恵的なものを、現代風に新しく伝えているのが「マーマーマガジン」なんです。

本来の輝きを取り戻してもらうために

また、「マーマーマガジン」では身体だけでなく、こころを浄化していくヒントも紹介しています。その根底には、こんな思いがありました。

みんな「もっと頑張らなきゃ」って自分に厳しいけど、等身大の自分を受け入れて、自分のいのちとか感覚を本当の意味で大事にしたら、もっと楽に生きられるんじゃないかな。

例えばお母さんがいつもニコニコしていたら、きっとその子どもにもワクワクがうつりますよね。こういう小さな、ささやかなことから、平和とか愛って始まると思うんです。

そんな風にみんなが本来の輝きを取り戻してもらうために、「マーマーマガジン」を作っています。

忙しい日々のなかで埋もれてしまった本来の自分を取り戻すことを、服部さんは「あたらしい自分になる」とよく表現しています。服部さん自身も、雑誌づくりを通して「あたらしい自分」を見つけていったようです。

「問題は機会である」という言葉がありますが、本当にそうだと思うんです。うまくいっていない時は、何かを変えるチャンス。

決まりきった地図の通りに生きていくのはつまらないし、人生は何が起きるか分からないのが面白いところ。「マーマーマガジン」では、人生に対してもっといろんな選択肢があることも伝えていきたいと思っています。

自然の世界では、いきなり花が咲くことってないですよね。土の中で根をはり、芽が出て、花が咲く。物事の成り立ちも同じだと思うんです。すぐに結果を求めてしまう人が多いですが、今まさにレイブルの状態にいる人は、焦らなくてもいいと思いますよ。

レイブル期こそ種まきに最適な季節。そんな季節があってこそ必要な時間をかけて収穫の季節にいたるのではないでしょうか。

仕事や家庭など、大切に積み上げてきたものを失ってしまうと落ち込んでしまいがちですが、そのつらさをエネルギーに変換すると、やりたいことを実現させるパワーになる。服部さんからはこのパワーがとても力強く伝わりました。

何かに行き詰まったとき、それを好機だと捉えてみる。みなさんも小さな悩みごとのなかに、ヒントを探してみませんか?