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次の世代へギフトネクスト!世界で挑戦する仲間を”おせっかい満載”で支援する「S.T.E.P.22」

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NGOの活動に参加するためカンボジアに滞在中の藤野さんは、デング熱を発症。緊急搬送されたタイ・バンコクの病院で、奨学金とともに自らを送り出してくれた団体にメールをすると……心配して病院に駆けつけてくれた二人の女性。それはちょうどバンコクを訪問中だった、まだ会ったことがないOGたち。

こんな具合に、まるで親戚のようなあったかさで支援し合い、「海外」というキーワードでつながって、継続的にお互いを高め合っている団体があります。

海外で働く女性のリアル・ボイスを発信している「なでしこボイス」代表の濱田真里さんや、フィリピン北部の山岳先住民族の無形文化継承を、アクセサリー販売などを通して実現していくことを提案する「EDAYA」代表の山下彩香さんなどを輩出している、特定非営利活動法人「S.T.E.P.22」です。

現在、2014年度奨学生を募集中と聞いて、S.T.E.P.22の第0期(立ち上げ期)で現在「Happy Workplace International Program」主宰の大和亜基さんと、第7期(2008年渡航)の橋本紗織さん、第9期(2010年渡航)の藤野太一朗さん、第12期(2013年渡航)の山田さんにお話を伺いました。

左から藤野さん、橋本さん、大和さん、山田さん
左から藤野さん、橋本さん、大和さん、山田さん

S.T.E.P.22とは?

S.T.E.P.22は「日本社会における個々人が、経験・知識・金銭などをグローバル社会に還元しながら、それらを伝播していく“ギフトネクスト”的循環型グローバル社会の形成に貢献すること」を理念に掲げた団体。毎年「海外に渡航して新しいチャレンジをしたい!」と希望する人を奨学生として迎え、返済義務のない奨学金(10万円)とともに、手厚い“おせっかい”=メンタリングで支援して、海外に送り出しています。

活動の流れ

奨学生としての活動期間は2年間。1年目は1月から夏前まで支援を受けながら渡航の準備をし、夏頃に1ヶ月以上の渡航をして、秋の帰国後に報告会を行います。2年目は次期奨学生のサポートをすることで、受けた支援を次の世代と自分の成長につなげていくと言うプログラムです。

「おせっかい満載」の支援

冒頭のエピソードは、藤野さんがカンボジアに行った時のできごと。デング熱にかかってふらふらになりながら、S.T.E.P.22に報告すると、ちょうどタイに滞在していた、今まで会ったこともなかったS.T.E.P.22のOGメンバーが駆けつけてくれたのです。

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藤野さん 海外で病気になって心細いところに、まるで秘密結社のエージェントが派遣されてきたかのように大和さんと第7期奨学生の黒須さんが来てくれて、びっくりしました。心強かったです。

山田さんもアメリカに滞在中、第1期の中田さんにいろいろと助けてもらったとのこと。海外に滞在中だけではなく、日本国内にいるときもS.T.E.P.22のメンバー間のあったかい温度感は続いています。

お話を伺った日、山田さんと大和さんは初対面。しかし、お互い活動内容をメールベースで把握しあっていることもあり、前々から知っていたかのように話が弾んでいました。

橋本さん 奨学生の期間だけの関係ではなく、S.T.E.P.22メンバーというだけでいつでも連絡が取り合えるような、緩やかな繋がりがメンバー全員の間にあります。奨学生としての期間を終えても、お互いの活動を応援し、情報交換をしあっているんですよ。S.T.E.P.22のOG、OBは海外で活躍している人が多いので、刺激になります。

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プロジェクトの支援ではなく、人を支援

S.T.E.P.22の支援の大きな特徴は、支援する対象がプロジェクトではなく、「人」であること。

応募し、晴れて奨学生に決まった後には、奨学生は「本当にそのプロジェクトをやりたいのか」と様々な角度から問いかけられ、自己探求をして、時にはプロジェクトの内容を変更することも。

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橋本さん 「なでしこボイス代表の濱田真里さんも、最初はカンボジアでフェアトレードについて学びたいと言っていました。でも、奨学生に決まった後で様々な角度から自己探求をするうちに、「私、やっぱり海外で生き生きと働く女性のことを知りたいです!」と、濱田さんの本当にやりたいことが見えてきたんです。そして「海外で働く女性に100人にインタビューしてきます!」とカンボジア、タイ、ベトナム、マレーシアに出発したんですよ。

自己探求をして、世の中の固定観念も、自分のなかの固定観念も一度壊してから旅立ってもらっています。

藤野さん この自己探求が、実はとても辛かった。自分の弱さを直視しないといけない辛さがありました。S.T.E.P.22の奨学生になったのは大学2年生のときだったのですが、偉そうなことを書いても簡単に見破られてしまうんです。

対話を通じて自分の上っ面な部分を削り取られて、まっさらな状態に戻ってから再度、本当にやりたいことを問い直したのです。辛かったけれど、渡航した経験を最大にするために必要だったなと感じています。

ギフトネクスト型で、前期の奨学生がメインで支援

また、支援の方法も特徴的。ルールとしては、前期の奨学生が次の期の支援をメインで行なうことになっていますが、第0期メンバーを始め、多数のOG、OBが自然と集まり、奨学生を支えています。

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橋本さん 奨学生の支援は基本的に月に2回の対面ミーティングと、メーリングリストを使ったメールベースでのやり取りで行なっています。OG、OBもそのメールが見られるのですが、見ていると熱い想いにほだされて関わりたくなってしまうんです。基本的に、おせっかいな人が多いんですよね。

大和さん OG、OBは任意での参加ですが、参加するOG、OBは想像以上に本気です。ここまで真剣にサポートできるのは、奨学生が本気だから。そして、OG、OBにも学びがあります。自分のことだけを考えているときのパワーと、他の人のことを考えているときに出せるパワーは全然違います。後者の力が、S.T.E.P.22では非常にうまく生かされていると思います。

比較的少人数の団体ということもあり、もちろんライフステージや環境によって少し活動から離れることはありつつも、戻ってくるのもいつでも自由。緩やかに、継続的に交流し続けている様子です。

渡航した先での活動内容と現在の取り組み

おせっかいなメンタリングを受けたメンバーたちは、海外でどんな活動をしたのでしょうか。

2008年度の奨学生、橋本紗織さん
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2008年度の奨学生、橋本紗織さんは、タイとカンボジアに教育現状と若者のエンパワーメントの実態を調査しに出かけました。もともとスタディー・ツアーでカンボジアを訪れ、インターン等を通じて教育に対して問題意識を持っていた橋本さん。

途上国の教育は校舎や教科書など、ハード面の支援はあっても、現場で働く人は孤軍奮闘していることが多いことを知りました。それに対する打ち手を考えるため、カンボジアの現状と、カンボジアよりも社会的事業が盛んなタイを先進事例として調査してきたのです。

調査渡航の翌年には、教職課程にいる日本人とカンボジアで学校の問題点を分析し、授業プランを作るワークショップを行なうなど、精力的に取り組みました。出産、育児を経て、現在は次のステップにむけて情報収集中とのこと。

2010年度の奨学生、藤野太一朗さん
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2010年度の奨学生、藤野太一朗さんは「途上国の子どもたちはなぜ勉強したいのだろう」という強い疑問から、カンボジアで教育支援を行なうNPOでインターンを経験。その結果、実はテレビでやっているほど、みんながみんな勉強をしたいわけではないとわかったものの、勉強をしたい子どもができない現実もあることを確認。

現在は、未舗装の道路を徒歩で数時間かけて通学する大変さから就学を諦める子供に、自転車を提供することで就学支援を行なう「cycle beyond the Borders」という団体をカンボジアで立ち上げて、活動をしています。

2013年度の奨学生、山田さん
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2013年度の奨学生である山田さんは、S.T.E.P.22をきっかけに「LGBT Youth Japan」という団体を設立。性的マイノリティのLGBTに特化したスタディー・ツアーを企画することを目的に応募しました。

ツアーの目的は、ニューヨークでLGBT支援体制を学び、日本の未来を考えていく人材を育てるということ。日本でのLGBT団体の取り組みや事前合宿等を経て、NYでのツアーを実行しました。

ツアー期間は10日間。アメリカのLGBTの置かれている環境に関心を持つ若者が8名集まって、GAPIMNY(アジア地域のLGBTエンパワーのための活動を行う団体)、Peter Cicchino Youth Project(アメリカで問題になっているLGBTQホームレス支援団体)、TLDEF(主にトランスジェンダーの法的支援団体)など17団体を訪問しました。

来年度の奨学生に望むもの

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現在、S.T.E.P.22は2014年夏に渡航する度奨学生を募集中。今年度は奨学生を8名募集し、大学1、2年を対象にしたユース枠と、職業・年齢を問わず、ある程度の経験や活動プランを持っている方向けのチャレンジ枠を設けています。

選考には、次年度の奨学生をメインで支援する、今年度の奨学生の意見が考慮されるとのこと。そこで、2013年度の奨学生である山田さんに、どのような方に応募してほしいかを聞きました。

山田さん 渡航をして、どんなことをやりたいかという実行プランがしっかりしていることよりも、自分の解決したい問題に対して強い気持ちを持っている人に応募してほしいと思っています。世の中全体から賞賛されるようなことではなくても、S.T.E.P.22ならしっかりと応援してもらえます。他の団体では支援してもらえなそうだけれど、どうしてもこの問題を解決したいという人を応援したいです。

またS.T.E.P.22では、22世紀にも繋がる活動をしていきたいと思っています。そのため前例や慣習、固定観念にとらわれずに積極的に挑戦していきたい人を応援しています。今回ユース枠という大学1、2年生向けの枠を設けたのは、可能性に満ち溢れていながら、海外での経験やスキルがなくて、何をどう始めたらいいのかわからないという方にもぜひチャンスを提供したいという想いがあったからです。ぜひ多くの人に応募してもらえたら嬉しいです」

10代後半から30代後半までの幅広い年代の人たちが自由に意見を交わしあい、あたかも親戚のように寄り添いながら支援し、継続的にお互いを高め合っているS.T.E.P.22。海外で何か自分の問題意識を解決するための取り組みをしてみたい人は、応募してみてはいかがでしょうか。