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ベンチャーもパラレルキャリアも選択肢。ボツワナで”育自分”に挑戦する長山悦子さんが求めた働き方とは? [企業内起業家論]

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ボツワナの風景 Some rights reserved by zampano!!!

みなさんは、「一旦、会社をやめても6年間は復職の機会を保障する」という制度があったら、どんなことに挑戦しますか?

そんなユニークな「育自分休暇制度」を導入したのが、グリーンズでもマイプロジェクトに役立つツールとして紹介してきた「サイボウズLive」を運営する株式会社サイボウズです。

サイボウズLiveの運用に関わってきた長山悦子さんは、自身もマイプロジェクトとして地方の民宿を紹介する「ヤドノマド」の活動を続けてきました。

そんな長山さんが、今度は青年海外協力隊としてボツワナに渡ろうとしています。”パラレルキャリア”という新しい働き方を切り開いてきた長山さんが、これから実現しようとしている働き方とはどのようなものなのでしょうか。話を伺いました。

「青年海外協力隊」という選択

長山悦子さん 長山悦子さん

サイボウズの「育自分休暇制度」を利用して2年間ボツワナに行くことにした長山さん。しかし、なぜ青年海外協力隊だったのでしょうか。

長山さんは22歳くらいの時に協力隊の説明会に行ったものの、経験がなければ参加しても意味な無いことに気づき、大学院に進みます。

大学院でも途上国支援などについても学んだのですが、ある町に、途上国の人達が日本の農業や行政を勉強するというプログラムの調査に行った際、過疎と高齢化が進むその村の人々が、頑張ってはいるんだけれど若者は減るばかりでどうしようもないこと、そして「せめて看取ってください」というメッセージを発していることにショックを受け、それに対して何もできないことにすごく無力感を感じたそうです。

そして、インドネシアで世界各国の学生と話すした経験から、「途上国と先進国とを分けること自体がナンセンスだ」ということにも気づいた長山さん。途上国支援ということにこだわらず、「『何かしなきゃ』という思いと『支援する』という具体的な行動の間にある大きなステップを埋めるための活動をしたい」と思うようになったのです。そして、そのためのツールとして注目したのがインターネットでした。

自分自身でも今は支援できないけどいつかできるようになるかもしれない、そのためには繋がり続けていることが重要だと気づいたんです。

当時mixiでオンラインだったら同級生とかともつながり続けられるんだということを実感していて、Facebookなら海外ともつながれるかもしれないと思って、そういうツールを使えばこの無力感をプラスの行動に変えられるんじゃないかと気づいたんです。

そしてインターネットをツールとして使えるようになるとともに、「普通の企業で働いていても国際協力に関われるということを見せつけてやる」ためにサイボウズに入ります。

最初は「3年くらいで辞めることも考えていた」のですが、居心地が良くて辞めたくなくなってしまっていた今年、「育自分休暇」という制度ができます。

「育自分休暇」を利用すると、最大6年まで会社を離れて好きな事ができるんです。

もちろん給料は出ないですけど。私は結婚もしていないし自由な身なので、ふと「行ってみたらどうだろう」と思って、上司に相談してみたんです。そうしたら「ぜひ行ってきなさい」と言われて、他の人達に反対されることもなかったので決断しました。

青年海外協力隊は制度がしっかりしていて、自分のやりたいことを実現できると思ったので、上司の勧めもあって、すぐに応募しました。

自分のやりたいことを実現するためにさまざまなことにトライしながら、原点とも言える青年海外協力隊へとたどり着いた長山さん。「会社をやめることは考えていない」ということですが、2年間を予定する”育自分”の時間で、何を得ようとしているのでしょうか。

会社のためにも自分のためにも「成長」が必要

「育自分休暇証」を手にする長山さん 「育自分休暇証」を手にする長山さん

育自分休暇の目的は、なによりマネジメント能力です。私の役割はコミュニティ開発といって、要するに村おこし。赴任先で現地の人達が何をしたいかっていうのを聞いて、スモールビジネスを立ち上げる。

プロジェクトを一から、しかも仲間もいないところで立ち上げることで会社の業務では身につかないマネジメント能力が身につくのではないかと思っています。

長山さんが赴任予定のボツワナはダイヤモンド鉱業が盛んで国は潤っているものの生活保護に頼って生活する国民が多いという場所。しかもダイヤモンドもあと20年で採り尽くされると予想されるため、その後に国民が自活できるような産業の育成や仕組みの構築が大きな課題としてあるといいます。

果たしてそのような状況で、どのようにして「村おこし」ができるのでしょうか。

村おこしって村を興したい人がそもそもいるのかという根本的な問題があると思うんですが、私はちょっとのやる気があるならみんなのを集めれば何かできると思っているので、そのちょっとのやる気を形にするためのサポートをすることをヤドノマドを通してやってきました。

そして、サイボウズも面倒くさいことを簡単にできるようにすることでやる気をかきたてる技術のイノベーションだと思っているので、それをアフリカでも実践できるといいですね。

長山さんが日本でやってきた「人のやる気をかきたてる」ということに、改めて外国で挑戦しようと決断するに至るには、「行き詰まり」という理由もあったようです。
 

民宿のIT化で村を訪れるファンを増やせ!Facebookで地域をサポートする「ヤドノマド」

育自分休暇制度を利用することにした理由の一つに、仕事とヤドノマドと両方やってきて自分がパツパツになってきてしまったというのがあるんです。仕事の方ももっと頑張れみたいなプレッシャーがある一方で、ヤドノマドも私がやらないと何も進まないという状況が続いてしまって。

何かでレベルが上げられれば今よりできるはずだから、なにか一つ深堀りしてから拡大しようかなと思ったんです。それで海外で一から事業を立ち上げるという課題に挑戦してみようかなと。

そして、この課題が「自分を成長させる」と感じられたのは、「パラレルキャリアの経験によるものだ」ともいいます。

ヤドノマドという小さな組織でリーダーの役割を果たすことで、会社で日々の業務をこなしていただけでは見えてこなかったであろう「大局的な視点」を持つことができたのだというのです。

会社で働いている時は「売上何%上げなきゃ」というような大局的な視点から意思決定をすることって無いんですよ。それは上の人がやってくれるから。でもそれをしないと成長はできないわけで、小規模でもそれができるパラレルキャリアとか社内起業というのはすごく健全に成長できる方法なんだと思うんです。

社内ベンチャーでもパラレルキャリアでも、別の組織で活動を始めることで「自分を成長させることができる」ということは声を大にして言いたいです。

「新しいことに挑戦することで自分が成長し、それが組織の利益にもなる、そのためには組織外で働くことも必要だ」というのが長山さんの考え方のようです。

しかし、その選択は自分のやりたいことをやりやすいのが組織外であっただけで、会社の中で自分を成長させてくれる挑戦ができるのなら、それに挑戦すればいいということでもあります。

起業という挑戦?

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ヤドノマドの活動の様子

自分のやりたいことをやるために、新しいことに挑戦し続ける長山さんですが、最終的に「起業」へと向かっているわけではないようです。

しかし、サイボウズは「社員みんなに自立してほしいという会社」で、社員が起業することを推奨すらしているので、個人的にやりたいことと会社の利益の両方を実現する考えた時に、「起業が手段として最適であれば選択することもあるかもしれない」ともいいます。

自分のやりたいことがあったら、それを社外でやるか社内でやるか、そこで悩む人は多いと思うんです。社外でやればパラレルキャリアになるし、社内でやれば社内ベンチャーになる。

でも、どちらにしても「自分のやりたいこと」ができる、それを選ぶことができるというのは素晴らしいことだと思います。だからその機会があるなら挑戦してほしい、そう思います。

自分のやりたいことができる働き方、それが一番重要であって、形はパラレルキャリアでも社内ベンチャーでも起業でも構わない、そう考える長山さんが2年間の経験を経て選択する働き方はどのようなものになるのでしょうか。

どのようなものになったとしてもそのような選択ができること自体が彼女が素晴らしい働き方をしているということの証明であり、たくさんの学ぶべきヒントが詰まっていると思います。長山さんの選択、みなさんはどんなことを感じましたか?