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ITと農がシリコンバレーで出会った!食の問題を解決する美味しいハッカソン「HACK//MEAT」

Meat Hackathon
Photo by Mona T. Brooks

食卓を囲むと、初めての出会いでも話がはずむことってありますよね。それは日本だけでなく世界共通です。

今年6月シリコンバレーに、ITエンジニアや政策研究者、農家、シェフなど多様なバックグラウンドを持つ250人以上が集まりました。普段あまり接点のないプロたちが食卓でつながって、農・食の課題に挑むビジネスコンテスト。それが、今回ご紹介する「HACK//MEAT(ハックミート)」です。

テーマは “IT × 食肉”!

HACK//MEATプレゼンテーション
Photo by Andre Hermann

「HACK//MEAT」は3日間、48時間にわたって行われました。この期間内で作り出した成果を最終的にプレゼンして優秀なアイデアを審査するのです。

このように短期集中的に成果をつくるコンテストは、IT業界で「ハッカソン」と呼ばれ、ウェブサービスやアプリケーションなどのプロトタイプ開発手法として用いられています。日本でも、日本最大級のハッカソンイベント「Mashup Awards 9」なども開催されているので、ご存知のかたもいるかもしれません。

HACK//MEATスナックブレイク
Photo by Mona T. Brooks

「HACK//MEAT」がユニークなのは、”肉”をテーマにさまざまな専門家が交流して、プロトタイプをつくりあげること。参加者は必ずしも、すべての分野のことに詳しい必要はありません。3日間の多くは情報交換やネットワーキングにあてられ、新たな課題やヒントに出会います。そうして課題を解決しそうなアイデアを、ITを含めた多様なスキルで作り上げるのです。

そうした具体的な成果以外にも、「HACK//MEAT」によって短期集中的につくりあげられるものがあります。それは将来的なイノベーションにつながりうる、新たな課題・関心の発見や、それを実現するコミュニティです。

エンジニアのメンターには、位置情報サービス「Foursquare」のエンジニア、睡眠や運動の活動を記録するリストバンド「UP by Jawbone」の事業開発者、世界最大規模のレシピ検索サービス「Yummly」のCEO、などが参加。その結果、FacebookやGoogleなどで働く一線級のエンジニアも数多く参加しました。

一緒に食べることで、つながりを持つ

会場の様子はフードイベントのようにとてもリラックスした雰囲気。夕食2回、朝食2回、ランチ2回、スナックブレイク2回、3日間で計8回食卓を囲んで語り合います。一緒に食べることで参加者同士が自然とつながりあうようになっているのです。

料理はHACK//MEATに賛同する飲食店やオーガニック農家による提供。参加者にとっては食べる食材がそのまま”食育”プログラムになります。このテーブルでは、抗生物質を使わずに育てた肉について語り合っています。

HACK//MEATディナー
Photo by Mona T. Brooks

鼻先から尻尾まで丸焼きの豚ローストを味わったり、

HACK//MEAT google社提供の豚ロースト
Photo by Andre Hermann

肉の解体デモ講義を受けたり、

HACK//MEAT 4505 Meatsの解体デモ
Photo by Mona T. Brooks

プログラミングツールを提供する開発者とディスカッションしたり。

HACK//MEAT Esri社のArcGIS API解説
Photo by Mona T. Brooks

3日間、美味しい食卓を囲んで吸収した知識をもとに、成果発表が行われます。そして「食肉の未来をハックして、よりサステナブルで、高収益で、ヘルシーなものに描きなおすための、情報や技術の使い方」として新しい、24の技術やビジネスモデルが生み出されました。

大賞を受賞したのは、就農希望者と農地をマッチングするウェブサービス「FarmStacker」。実はこのチームにはエンジニアはいませんでしたが、新規就農した27歳の農家、Kevin Watt(以下、ケビンさん)が、自身の経験とこの場の交流で得た技術やビジネスモデルの知識から、新規就農者サポートのアイデアを思いついたのです。

HACK MEAT winner
Photo by Mike Koozmin

アメリカ内の農家数は減っていて、さらに今後10年で現役農家の約50%が高齢化によりリタイアしてしまう、とアメリカ合衆国農務省は予測しています。ケビンさんのプランは農家高齢化の課題に挑戦するものとして評価され、賞金の他に事業化支援の報償も与えられました。

IT x 異業種の可能性

「HACK//MEAT」を主催するのは、「Food+Tech Connect」というメディアを運営する女性たちです。

HACK//MEAT 主催者
Photo by Mona T. Brooks

週末のハッカソン1回で、世界の飢えが解決されるわけではありません。私たちのゴールは、起業家的な問題解決を促すように、さまざまな課題をブレイクダウンしていくことなのです。

と語ります。

日本でも8月24日に福井県鯖江市で地域課題解決型ハッカソンが行われるなど、短期集中型でアイデアを生み出す取り組みが進められています。

ITと異業種を掛け算することで、お互いのフィールドを拡張しあう出会いの場から育っていく新しいアイデアやコミュニティが、世の中を素敵に描きなおしていくかもしれません。「HACK//FISH」や「HACK//MISO」など、みなさんも美味しいハッカソンを考えてみてはいかがでしょうか。

(Text:板村成道)

[via HACK//MEAT, Food+Tech Connect, S.F.Examiner]