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難民問題を解決する”社会彫刻”!難民もアーティストも旅行者も集まる「グランドホテル・コスモポリス」がドイツに誕生

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ドイツ第三の都市、ミュンヘンから電車で約1時間ほどにある歴史的都市・アウグスブルクを知っていますか?南ドイツに位置する人口約27万人の、この小さな都市の中心部奥に、不思議とひきつけられる建物「グランドホテル・コスモポリス」が佇んでいます。

ここの住民で、このホテルを知らない人はほとんどいません。「何が起きているんだろう?」「何かありそうだな」と何かしら興味をそそられる不思議な場所なのです。

「グランドホテル・コスモポリス」は、一言でいってしまうと宿泊施設。でも、旅行者のためだけのものではありません。そこにはカフェや、アーティストのアトリエがあり、その他イベントスペース、学びの場もあります。

また、社会的にも貢献しています。というのは、難民の住居としての役割も担っているのです。つまり、ここは難民、アーティスト、地元住民、旅行者が集う場なのです。

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主体的に暮らせる場所

ところで、みなさんは難民のことをどれだけ知っていますか?

難民とは、さまざまな理由により、自国にいると迫害あるいは迫害を受ける恐れがあるために、他国へ逃れてきた人々のことです。日本ではあまりなじみのない難民ですが、ドイツでは、なんと日本の数十倍もの難民がいます。しかし、現状は難民を受け入れる施設は多くなく、中には小さくて寒い寝床にするのがやっとという施設もあるようです。

そのため、アーティストのアトリエと旅行者の宿泊ホテルと難民施設の融合するこのホテルの取り組みは、ドイツを始め、他の難民問題を抱えるヨーロッパの国からも注目を集めています。つい先日もオランダからのテレビ局の取材もありました。

また、このホテルはソーシャル・スカルプチャー(社会彫刻)とも呼ばれています。その由来は、ドイツのアーティスト・社会活動家のヨーゼフ・ボイスの言葉「だれもがアーティストである(Jeder Mensch ist ein Künstler)」から。

彼のその言葉を反映するかのように、このホテルでは難民も自分で好きなように部屋を装飾できるので、彼らが主体的に住むことを可能にしているのです。

DIYで老人福祉施設をリノベーション

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グランドホテルのプロジェクトがスタートしたのは2011年。もともとは老人福祉施設として使用されていて、長い間廃屋となっていた建物をリノベーションしました。壁にペンキを塗るために新聞で壁を保護したり、下準備のための特別な液をハケで塗ったり、ローラーでペンキ塗りしたり、電気の回線をつなげたり。工事は全てDIY。

ドイツの人たちには「自分たちでできることは自分たちでする」という習慣があり、ペンキを塗ったり、器具で穴を開けたるのを簡単にできる人が多く、もともとDIY精神が高いのだそう。

多くの人がボランティアとして協力し合い、ようやく2013年7月から初の難民の受け入れが始まりました。現在、カフェバーはオープン。レストランはリノベーション中で、旅行者用ホテルの正式オープンは10月上旬予定です。

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グランドホテルは旅行者の宿泊のためのホテルでもあります。旅行者用の部屋も様々なアーティストたちが手がけた個性溢れるものばかり。それぞれ部屋ごとにデザイン、雰囲気が全く異なります。

例えば、ストーリー性を感じるような、人が壁へと消えていく模型のある部屋、洗剤で作られたベットの壁がある斬新な部屋、赤を基調としたガーリーでインパクトのある女の子の部屋…。どれも非常にユニークで一風変わっていて、居るだけでわくわくしてしまいます。

もちろんこだわりは客室だけではありません。通路に飾ってあるランプもシャワールームのタイルも、さまざまなアーティストによって制作されたもの。これらのランプの材料は、洗濯機の一部や台所用品の一部などで、一見ゴミになるようなものに手を加えることで、価値のあるものへと変化させています。歩いているだけで、まるで展示会に迷い込んだかのような雰囲気で、この建物自体がアップサイクリングのシンボルなのです。

ボランティアで働くグランドホテルの人々

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驚くべきことに、ここで働いている人たちは基本的にボランティア。新しい生き方を追求するため、人生をより豊かにするため、それぞれが自分の意志で合間をぬって、ここにやって来ては自主的に働いています。

なぜ、そこまで「グランドホテル・コスモポリス」が人を惹き付けるのでしょうか?それは、ここで働いている人々がお金ではなく、人としての豊かさを大切にしているからかもしれません。

「グランドホテル・コスモポリス」は、地域の人々の社会的問題や関心事を、アーティスティックなアプローチで解決し、常に変化し続けるプラットフォームです。いるだけでインスピレーションが湧き、新しい出会いや、面白いことが発見できるような、人々を惹き付けてやまない不思議な空間。その答えは無限にありそうです。

“Was ist passiert ?“(何が起きた?)
常に未完成な「グランドホテル・コスモポリス」では、こうしている今も、何かが起きています。

(Text: Fujiko Yamamoto)