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廃墟に工事現場、橋の下…ホームレスの住まいを予約できるホテルサイト「FAKTUM HOTELS」[Cannes Lions2013]

FAKTUM HOTELS

連載でお届けしているカンヌライオンズ・国際クリエイティビティ・フェスティバルのソーシャルグッドな受賞作品。今日はスウェーデンの施策をご紹介します。

FAKTUM HOTELS」のホームページでは、一見、趣のある景色が表示されています。オシャレな観光地のホテル選びサイトかと思って、10か所ほど紹介されている部屋を見てみると、そこは公園の植え込みや工事現場、橋の下や廃墟だったりします。

泊まるには酷すぎるロケーションの写真と説明文が載っているのですが、そこにはちゃんとした予約サイトのように一泊の料金と、自分で泊まるかギフトとしてプレゼントするかを選ぶボタンが。

えっ、泊まれるの?と思いますが、実はこれ、「FAKTUM」という、ホームレスが路上で販売するビッグイシューのような雑誌がつくった寄付サイトなんです。ホームレスの人たちが寝泊まりしそうな場所を宿泊先として選び、予約ができるような体裁で寄付を募るような仕組みをつくったんですね。

スウェーデンのイェテーボリという街には、3400人ものホームレスが生活していました。彼らを援助する活動をするために資金が必要だったのですが、普通に寄付を募っても限界があります。そこで、「ホームレスの体験ができるホテルのサイトがオープンした」というニュースで口コミとサイトへの訪問を誘発し、ホームレスの実態を知ってもらうことで寄付につなげることを狙ったというわけです。

実際は寄付だけで泊まることはできないのですが、「友だちに宿泊をプレゼント」というかたちにすると、Facebook上で予約した場所の写真とともに“Good Night!”というメッセージが送られます。送られたほうはビックリしますし、無視できないですよね。

ホームレスの問題は都会で生活する人ならだれもが知っていることだとは思うのですが、自分たちとは関係がないフリをしたり、遠ざけようとする人も少なくないのではないでしょうか。そんなホームレスの問題を、関心ごとに変える。そんな難しい課題を、みんなの関心ごとであるレジャーを絡めた表現でうまくクリアした事例だと思いました。

カンヌライオンズ2013受賞作の連載はまだまだ続きます!引き続きお楽しみに。

(翻訳協力:モリジュンヤ