情報技術の発達。それは私たちの暮らしを飛躍的に向上させました。
インターネットさえあればどこでも連絡が取れ、世界中が一つになったかのよう。新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で外出が難しくなったときも、メッセージアプリやZoomにより、ビジネスの停滞や孤立を防ぐことができた方も多いことでしょう。
技術が人びとを孤立から防ぐ一方で、どうしても距離を埋められない状況もあります。世界に目を向けてみると、紛争や国際情勢などの問題で人々が分けられ、お互いが近くに住んでるのに”遠い存在”があるのです。
今回ご紹介する事例の舞台、インドとパキスタンはそんな状況下になります。この二カ国のあいだでは50年以上も政治的な対立が続いており、インドの北西部にあるカシミール地方は世界で最も危険な紛争地帯の一つ。(参考)市民間の意識間にも大きな溝があり、いわば”近くて遠い国”なのです。
インドとパキスタンの対立を乗り越え、人々の心をつなげたい。そう考えたコカ・コーラ社が取り組んだあるキャンペーンが、2013年に世界中で話題になりました。
まずはこちらの動画をご覧ください。
「Open Happiness」というキャンペーンで使われたのは「Small World Machine」と名付けられた2台の自動販売機。
インドとパキスタンのショッピングモールにそれぞれひとつずつ設置され、タッチスクリーンとカメラを通じてリアルタイムで2国間の人々を結びつけます。
そこではお互いの様子を見れるだけではなく、スクリーンの向こう側の相手とペアとなって取り組む簡単な指令が出されます。その指令を無事にクリアすると、無料でコカ・コーラが手に入るという仕組みです!
指令は、どれも敵視しあう相手のことを知るファーストステップになるものばかり。
画面を通して手を振りあったり。
一緒に平和のシンボルであるピースマークを書いたり。
ダンスの指令が出た人は、なんだかとてもイキイキとしていますね!
小さな子どもからお年寄りまで、年代を超え国境を越えて人々をつなぎます。
インターネットを通じて”笑顔”を生み出し、人々の心をつないだ「Small World Machine」。生まれてからずっとインドに暮らすある男性は、このスクリーンを通して初めてパキスタンの人々がどんな服を着ているのか知ることができたそうです。
あるパキスタン人は、「Small World Machine」を体験した感想をこう話します。
インド人のことを全く知らない私が、同じく私たちのことをまったく知らないであろうインド人とつながれたことはすばらしい経験だった。
一方インド人も同様に、お互いを知る良いきっかけになった様子。
お互いを見ることができ、もはやパキスタン人は私たちにとって”正体不明”な存在ではなくなった。このような変化が、国をつなげることにつながるんだ。
“A moment of happiness has the power to bring the world closer together.”
(幸せを分かち合う瞬間は、世界を近づける力をもつ)
そんなメッセージを掲げた、コカ・コーラ社による「Open Happiness」キャンペーン。「Small World Machine」の大活躍によって、3日間で約1万本のコーラを無料で配布したのだとか!
この自動販売機に使われたタッチスクリーンやカメラは、展開当時の2013年にとっても、すごく特別で最新鋭のテクノロジーというわけではありませんでした。けれど、”幸せを分かち合う瞬間を生み出すために”という目的設定によってテクノロジーの使い方・活かし方を考えてみれば、それは大きな変化を生み出すことができるかもしれない。そう、「Open Happiness」キャンペーンは教えてくれます。
キャンペーンから9年経った、2022年。テクノロジーはさらに進化しています。改めて私たちの身の回りにも、視点を少し変えるだけで問題解決につながるような”あったかテクノロジー”があるはず。この機会に探してみませんか?
(Text: 阿部星渚)
(編集: 兼松佳宏)
[via Co.CREATE, Coca-Cola Journey (retrieved July 17 2022),Wikipedia (retrieved July 17 2022),The Inspiration Room]