ラピスラズリに金粉で描いたもの。夜空の星みたいでとってもきれい!店頭では即完売だったそう。
ちょうど一年前にこちらの記事でご紹介した、日本の伝統工芸を伝えるブランド「KARAFURU」。オシャレ感度高めのお店での取り扱いも始まり、着実に成長の道を歩んでおられるよう。ブランドが成長する中での挑戦や課題について、代表の黒田幸(ゆき)さんに伺いました。
昨年末には新宿伊勢丹でのポップアップショップや、drama H.P.Franceでのインスタレーションイベント、藤巻百貨店での取り扱いなどなど。エシカルとして以上に、ファッションとして受け入れられている「KARAFURU」。最近の動きについて、黒田さんは次のように話します。
drama H.P. Franceでのインスタレーションの様子
H.P.FRANCEさんでのインスタレーション(4月1日〜17日)では、歌舞伎の舞台で使用する藤の花を伝統芸能の舞台花を作っている職人さんが、和紙を一枚ずつ手染めして作ってくださいました。日本の伝統工芸についての説明はどこにも付けていなかったのですが、お客さまからの評判も良くて、ウィンドウの前で記念撮影する外国の方もいらっしゃったそうです。言葉であれこれ説明しなくても、日本の美を感じていただけていたら嬉しいですね。
舞台の花は遠目から眺めるものなのですが、下のほうになるにつれて色が濃くなっていたり、手作業による色ムラが自然の色味をよく表していたりと、細部までこだわってあるので近くで見てもきれいなんです。
さまざまな虫がモチーフに描かれた蒔絵×天然石のピアス
カリスマバイヤー藤巻幸大氏がセレクトするこだわりアイテムのオンラインショップ「藤巻百貨店」でも、蒔絵×パールのピアス(イアリング)が即日完売!しかし、嬉しいニュースとともに、今後の課題も新たに浮上していると話します。
モノがはっきり語っているとおっしゃってくださり、販売スタートから数時間後にはほとんどの商品が在庫切れになって、職人さんともども大喜びでした。同時に、今後生産ラインをどう安定させていくか、切実な悩みになってきました。制作に時間がかかるうえに少ない資本でまわしているので、一気に職人さんにオーダーできないのをどう克服するかが今後の課題ですね。
蒔絵ピアスの新作では、蜘蛛や蚊がモチーフに。蒔絵のモチーフに昆虫が使われることは昔からよくあるそう。金粉を重ねてところどころ厚みを出し立体的に仕上げているのでリアルな迫力たっぷり。また、箔を貼りつけたパールのネックレスは、銀箔を染色した色箔を貼り付けており、淡く滲むような色味がとても繊細。
昭恵夫人がセレクトしたという金箔を貼り付けたパールのネックレス
このネックレスは、安倍首相夫人・昭恵夫人がスリランカ大統領夫人への来日のお土産に選んだアイテムだそう。「日本を象徴するようなものをプレゼントしたいけれども、ネックレスは取り入れやすいし、手持ちの服にも合わせていただきやすい」という思いから選ばれたとのこと。また他にも、来日されていた某有名海外監督・女優へのプレゼントに選んでいただいたりもしたそうで、KARAFURUの思いも着実に実現しているよう。
こういう機会に選んでいただけることは本当にうれしいです。その監督の方も、どうやって作られたものなのか、興味を持っていろいろお尋ねくださったそうです。モノを介して日本の技術や美を伝えていくというのは、KARAFURUの目指すところなので嬉しいですね。
それもそのはず。それは、KARAFURUのアイテムはモノが持つチカラが強いから。例えば、ネックレスの「金箔」について見てみましょう。
金箔の作り方は、基本的には昔も現在も変わっていません。昔は、小さな金の延板を紙や皮の間に挟み、交互に金づちなどで打ち延ばして作られました。海外の金箔は主に皮を使用しているのに対し、日本では箔打紙と呼ばれる和紙を用います。つまり日本の金箔の技術は、和紙の技術あればこそのもの。一つの技術をとっても、さまざまな日本固有の要素が絡み合ってできたという悠久さと奥深さがあるものなのです。
パールに絵を描く職人さん。写真からもじわじわと緊張感が伝わります。
その伝統工芸を残し伝えるために、KARAFURUの変わらぬミッションについて、黒田さんは次のように話します。
伝統工芸を残し伝えるには、新たな仕事を創出することが必要です。日本の伝統工芸品産業全体の生産額は、バブル期の1984年をピークに下降線を辿り、2002年には約3分の1まで落ち込み、そのまま現在推移しています。バブル期の隆盛まで再興するのは難しくても、適正なボリュームで残していくために、今までやってきたことの他にも新たに仕事を生み出さなければいけません。
パールや天然石に金箔を乗せるというのはこれまでにない試みだったようで、職人さんたちも試行錯誤してくださいました。KARAFURUは、新しい挑戦と需要を生み出すきっかけになっていきたいですね。
KARAFURU代表・黒田さん。ご自身もとってもおしゃれ!
伊勢神宮の式年遷宮(※)の展示の中にもこのような言葉があります――「繰り返すことによって限りあるものを永遠なるものにするのです」。KARAFURUの取り組みは、まさに技術を繰り返し、そしてそこに時代の風を吹き込むもの。時代を超えて、永遠に楽しめる名品となる可能性大!そんなKARAFURUのアイテムが、次もその次もずっと楽しみです!
(※)伊勢神宮の式年遷宮……原則として20年ごとに、内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の二つの正宮の正殿、14の別宮の全ての社殿を造り替えて神座を遷す。このとき、宝殿外幣殿、鳥居、御垣、御饌殿など計65棟の殿舎のほか、装束・神宝、宇治橋[1]なども造り替えられる。[→wikipedia]