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50年後の「ふつうの会社」とは?
未来の会社のあり方を探る「ノンスタカフェ」

ノンスタカフェ第11回「未来にあるふつうの会社とカレー」 Photo by Shota Sato.

Photo by Shota Sato.

「経営学者のドラッカーは、未来の会社はNPOのようになると予言しました」。こんな気になる告知文を掲げて開催されたのは、株式会社non-standard world(ノンスタンダードワールド/通称「ノンスタ」)が主催するイベント「ノンスタカフェ」。

第11回となる2月23日(土)は、カレー激戦区の西荻窪にて、「未来にあるふつうの会社とカレー」をテーマに、代表の高崎健司さんの講義と、カレーを囲んでの参加者交流会が行われました。

「ノンスタカフェ」とは?

高崎さんはソフトバンクに4年半勤めた後、フリーランスを経て仲間とともに2012年に株式会社non-standard worldを設立。「アートとテクノロジーを使って、人が穏やかに生きることを手助けする」ことをミッションに、ウェブサイトや映像、アプリケーションの制作、アート作品のセレクトショップ運営、人がつながる場づくりと、「つくる、とどける、つながる」の一連を手がけています。

afod
ノンスタが運営するウェブサイト「afod」 http://afod.net/

ノンスタカフェ」は、飲み会と勉強会の中間のような形で、肩肘張らずに一つのテーマについて考える、non-standard world主催の月例イベントです。テーマに関心のある人ならば、誰でも参加可能。これまで「自分の会社をつくるということ」「資本主義と自由とパンとケーキ」といったテーマで開催されてきました。

第11回目の「未来にあるふつうの会社とカレー」の参加者は、20代後半から30代前半。自己紹介タイムでは、「働いている同世代の人たちが、どんなことを考えているのか知りたくて来ました」「2週間後に会社を辞めて、フリーランスになります」「仕事場のわたしは仮の姿。お金の為と割りきってしまっています」などといった声が聞かれ、会社との付き合い方を模索する世代のリアルな姿が浮き上がりました。

50年後の「ふつうの会社」って?

株式会社non-standard world代表の高崎健司さんPhoto by Shota Sato.

株式会社non-standard world代表の高崎健司さん (Photo by Shota Sato.)

高崎さんの講演でスライドに登場したのは、50年前の日本。ドイツのドキュメンタリー作家が撮った映像です。満員電車での通勤ラッシュや、工場のライン製造の様子が映し出されました。

50年前の「会社」って、ずいぶん違いますね。では、今から50年後ってどうなるんでしょうね。

と、問いかけた高崎さん。

「50年後のふつうの会社」を考えていくために、高崎さんは経営学者ピーター・ドラッカーの著書『非営利組織の経営』を紐解きます。本書でドラッカーは、「未来の会社はNPOのようになる」と予言し、個人が会社に求めるものとして、1. 訓練(その会社で働くことによって自分の能力が向上すること)2. 共同体の中でのアイデンティティの確立(会社という共同体の中で、自分の居場所があること)3. 昇進(誰にでもできる仕事ではなく、一定の責任と裁量のある仕事ができること)の3条件を挙げています。

「目的ドリブン」から「価値観ドリブン」へ

高崎さんは、こうした文献を踏まえ、今後50年で、会社は「目的ドリブン」から「価値観ドリブン」へ変化すると考えます。例えば、これまでは「車を生産する」などの物づくりが中心でしたが、今後は、地域に貢献したい、人をつなげたいといった、価値観を持った会社が増えていく、という変化です。

未来の会社のあり方を体現している会社として、高崎さんが気になっている糸井重里さんの活動、「石見銀山権現堂」の地域に根付いた経済活動、島根県隠岐郡「巡りの環」の攻めのIターン事業、雑誌『自遊人』の本社新潟移転などの事例を見ていき、これらの会社が、一つの価値観のもとに結ばれた共同体であることを確認しました。

「大学のような会社」を目指して Photo by Shota Sato.

Photo by Shota Sato.

「大学のような会社」を目指して

以上を踏まえて、高崎さんは「未来のふつうの会社」を模索する中でたどり着いたのが、「大学のような会社」というあり方でした。

ノンスタも「未来にあるふつうの会社」のロールモデルになりたいと思っていて、何ができるのかいろいろ考えてきたのですが、その一つの解として「大学のような会社」になれたらいいと思っています。

これまで、利害関係なく色々な人と出会えて、価値観でつながって何かを創り出した場を考えてみると、それは大学だったと思うんですよね。

ノンスタという共同体に所属することで、アートとテクノロジーを使った付加価値を生み出せる。各人の創意工夫でプロジェクトを行っているけれど、一つの共同体としてきちんと存在している。そして、プロジェクトを通してそれぞれが成長して「卒業」する。そんな場にしていきたいです。

西荻窪有名店のカレーを囲んで交流会 Photo by Shota Sato.

西荻窪有名店のカレーを囲んで交流会 Photo by Shota Sato.

イベント後の交流会では、カレーとお酒を囲みながら参加者同士で雑談。「会社に対してモヤモヤした不満を持っていたけど、わたし個人の問題じゃなくて、社会の流れなのかな、なんて思ったら、気持ちが軽くなりました」「大学のような会社が増えたら、わたしはハッピーだし、結果的に会社にとっても、社会にとってもハッピーだと思いました」などといった声が聞かれました。

non-standard worldのような実践が積み重ねられると同時に、このノンスタカフェのように価値観を共有し、時代の問いの答えをともに探る場が増えていくことが、「未来にあるふつうの会社」を「今日のふつう」にしていくのかもしれません。