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関西を元気にするコミュニティをつくるには?大阪ガス×グリーンズ「マイプロSHOWCASE関西編」座談会

左から、兼松(greenz.jp編集長)、江本さん、山納さん、田畑さん(大阪ガス)
左から、兼松(greenz.jp編集長)、江本さん、山納さん、田畑さん(大阪ガス)

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

関西のみなさん、こんにちは!

2013年3月、グリーンズは大阪ガスとコラボレーションによるプロジェクト「マイプロSHOWCASE関西編」をスタートします。「マイプロSHOWCASE関西編」は、グリーンズとして初めてのローカルプロジェクト。関西のインフラを支える大阪ガスと共に、ローカルで活躍するソーシャルデザイナーを応援していきます。

まずは、今回のプロジェクトを担当する大阪ガスの江本雅朗さん田畑真理さん山納洋さんとgreenz.jp編集長・兼松佳宏が、座談会形式で「マイプロSHOWCASE関西編」への思いを語り合いました。

今、大阪ガスがソーシャルデザイナーを応援する理由とは?

大阪ガスは、環境に優しい天然ガスを近畿2府4県の約700万のお客さまに、安定・安全に供給することにより、快適・安心な暮らしをお届けする会社です。その一方で、グループ会社も含めて幅広い企業活動を展開し、さまざまな社会貢献事業を通して「関西の元気」を応援してきました。たとえば、1985年から18年間にわたって若者文化の拠点となり、多くの演劇人やアーティストを輩出した複合文化施設「扇町ミュージアムスクエア(OMS)」、起業家・研究者を支援するインキュベーション施設「京都リサーチパーク(KRP)」などは、関西の文化・経済に大きなインパクトを与えました。

「マイプロSHOWCASE関西編」に関わってくれるのは、大阪ガスの社会貢献活動に長年携わってきた人たち。江本さん、山納さんは「OMS」、田畑さんは「KRP」を担当した人です。そしてこれから、彼らが「関西を元気にする」ために応援しようとしているのが、グリーンズが応援してきた”ソーシャルデザイナー”たちなのです(以下、敬称略)。

関西に住み、働く人が感じている「今の関西」に思うこと

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大阪 Some rights reserved by michaelvito

兼松 今日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます!僕たちもずっと東京をベースとしてきたので、今回のようなローカルなプロジェクトをローカルなライターさんと一緒に紹介していくという新しい取り組みにとってもワクワクしています。

はじめに、僕たちがまだ関西の解像度があまり高くないので、関西にお住まいになり、働いている人として「最近の関西ってどうですか?」というところからお伺いしたいと思います。

江本 少なからぬ企業が本社機能を東京に移転させたこともあり、関西は人口が減りはじめています。全体的に元気がなくなっているので、もっと元気になってほしいですね。

田畑 60歳以上のシニアは元気ですね。大学が多く、若者人口が多い京都でさえ、美術館などではあまり若い人を見かけないです。

山納 「OMS」閉館後、僕は「メビック扇町」でクリエイター支援をはじめました。デザイナーや編集者は、クライアント企業が本社を東京に移転するとついて行かざるをえない。でも、関西を愛して残る人もいれば、一度東京に出た後「やはり関西が好きだ」と戻ってくる人もいますね。

兼松 素敵な理由ですね。

江本 それもありますが、東京は人が多すぎて疲れてしまうこともあると聞きました。関西は、ほどよいコミュニティがあって、仕事が成り立つ環境があるんですね。

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京都 License Some rights reserved by Adam Kahtava

兼松 東京で揉まれてスキルが高まったから、関西に戻ってもやっていけるという自信が出てきた、という側面もあるのかもしれませんね。

田畑 そうですね。「KRP」で起業されたベンチャーのひとつ「はてな」さんなどはその好例です。さらなる成長を目指して東京に移られましたが、ある程度の地位が確立されたのちは、落ち着いた環境で若い人たちとクリエイティブなことをしたいと京都に戻ってこられました。創業者が京都大学出身ということもあり、優秀な後輩たちが東京に流れる前に採用したいともおっしゃっていましたね。

山納 今、全国で東京や大阪で仕事を経験したデザイナーが地元に帰って地域の町おこしをする例がすごく増えていますよね。「大阪、関西が好き」「人との距離感や街のサイズがいい」とか、すごく身体感覚的な理由で帰ってくる人たちがいます。

また、演劇やクリエイターの世界を見てきて、才能が育つ都市だと感じてきました。関西のインキュベーション都市としての側面をもっと活かしたいなあと思います。

大阪ガスのコミュニティの取り組み

大阪ガス×greenz.jp座談会

兼松 そもそもの話なのですが、大阪ガスさんが、アーティスト、クリエイター、そして起業家支援とさまざまなコミュニティづくりに取り組むのはどうしてなのでしょうか?

田畑 それは、1933年にできた大阪ガス本社ビル「大阪瓦斯ビルヂング(ガスビル)」が原点かもしれません。大正末期に、街灯がガス灯から電灯に取って代わられてしまったので、「ガスを使う暮らしはかっこいいんだ」と都市ガスの生活需要を増やしていった歴史があるんですね。このビルは「ガスのある世界最先端の暮らし」を見せようとショウルームの役割もはたしていたそうです。

江本 ガスだけでなく、生活・文化も一緒に提案しましょうという発想ですね。最上階にレストランを作り、3階にあったホールで洋画の映画観賞会やファッションショーも開いていたそうです。大阪ガスの先輩たちには、すごく先進的な人たちがいたんですよね。

田畑 そういうセンスで建てられた本社社屋を持っていることは強みになっている気がしています。

大阪ガス本社ビル「大阪瓦斯ビルヂング」
大阪ガス本社ビル「大阪瓦斯ビルヂング」

兼松 そのセンスは、大阪ガスさんの社会貢献プロジェクトにもつながっているのかもしれませんね。

江本 やはり、社員のDNAとして受け継がれてきているんだと思います。

田畑 都市ガスは、使い方のご提案とともに売るべき商品ですから。アーティストやクリエイター、起業家を支援することも、彼らが元気になることによって地域、社会が元気になり、回り回って本業であるところのガス需要を増やすだろうという発想です。迂遠なようですが、結局は当社の持続可能性ににつながることなんですね。

「扇町ミュージアムスクエア」で学んだこと

「扇町ミュージアムスクエア」を語る山納さん
「扇町ミュージアムスクエア」を語る山納さん

兼松 みなさんの原点である「OMS」の18年間についてお話を伺いたいと思います。みなさんとお話していると「自分ごと」に近いところで仕事につながっている感じがすごいなあと感じているのですが。

江本 ソーシャルをやっている人たちの原体験はそれぞれにあると思いますが、我々の原体験は完全に「OMS」です。「OMS」には、劇場、映画館、ギャラリー、カフェ・レストランがあり、当時はまだ珍しかった雑貨店も入っていました。映画館がポツンとあるのではなく、アフターシアター/ビフォアシアターの時間消費ができるしくみを考えたことが画期的だったんですね。さらには、雑誌『ぴあ』の関西支社が入ったことで情報発信力もありました。我々はそこに出勤して、毎日のように新しい人に出会い、新しいプロジェクトを立ち上げていたわけです。

兼松 とても”ソーシャルデザイン”的ですね。

山納 大阪ガスとしては、「OMS」を作ることによって、これまで大阪ガスファンとして取り込めていなかった独身女性層に訴求し、知名度や愛着度を増やそうという狙いもあったと思います。でも、劇場をやることによって、サブカルチャーの中からすごい才能が出てくることに気づいたんですね。今も第一線で活躍している演劇人と立ち話をしたり、夜は飲みに行ったり。『ぴあ』の人たちは隣の事務所で仕事をしている。そういう環境で毎日仕事をする20代、30代を送っていたので、彼らから受けた影響は非常に大きいですね。

兼松 「OMS」での18年間の経験が残してきたものって何だったのでしょうね。

山納 「OMS」には「思いついたらすぐカタチにする」という伝統があって、その伝統はずっと引き継いでいこうと思っていました。それは、ふだん”請負仕事”をやっている人が”自分ごと”をやるということなんです。

僕は「OMS」から「メビック扇町」に移って、つきあう相手がアーティストからクリエイターに変わったのですが、ミッションは同じだったんですね。アーティストは食えるかどうかわからないけど楽しい”自分ごと”を中心にしている人。クリエイターは主に”請負仕事”で生計を立てる人ですが、アーティストの中にも”請負仕事”を通じて作品の幅を広げていく人もいますし、クリエイターの中にも、あふれんばかりの”自分ごと”への情熱を持っている人もいます。そういうことがわかったのは、「OMS」と「メビック扇町」の両方を見たからだと思います。

兼松 アーティスト、クリエイターは時代をリードしてきた存在ですが、今そこにソーシャルデザイナーも加わってきた、と。

江本 そうかもしれませんね。今、大阪ガスとして新しい社会貢献のカタチを模索するなかで、ソーシャルな人たちを応援することで、新しいコミュニティを作っていきたいという思いがあってのことなのです。

「マイプロSHOWCASE関西編」に期待していることは?

大阪ガス×greenz.jp座談会

兼松 お話を伺っていて、大阪ガスという会社が脈々と受け継いできたこと、そしてみなさんがご経験されてきたことが今回の「マイプロSHOWCASE関西編」応援へと自然につながっていることがわかります。まだはじまったばかりですが、この時点でみなさんがこのプロジェクトに期待されていることはなんですか?

江本 新しいコミュニティを作って関西を元気にしていきたいという思いとともに、未来のステークホルダーとつながっておきたいという期待もありますね。ソーシャルな人たちが、今後社会の中心になっていく可能性は大いにあると思っています。

山納 多くのサラリーマンは先輩から教えられたルーティンワークをするわけですよね。でも、”自分ごと”からものごとをはじめる人たちは、自分で考えて失敗しながら、自分をプロデュースしていきます。それは本当にすごいことだと思っているんですね。僕は、ソーシャルデザインに関わる若い人たちと接点を持つことで、僕らや僕らの会社が、どんな影響や刺激を受けるのか、それによって自分たちの仕事のやり方がどう変わるのか? ということにすごく期待をしています。

兼松 僕らは「ソーシャルデザインのインフラになりたい」という思いがあるのですが、ホンモノのインフラである大阪ガスさんも同じようなマインドがあるのかなと共感しています。僕たちが東京で「green drinks Tokyo」を開催しているように、人と人が出会うコミュニティも、一緒に作っていけたらいいですね。

江本 我々以外の社員、特に若い人たちに来てもらって、価値観の違う人たちと共感できる場を作っていきたいですね。僕は「OMS」でいろんな人に出会うことで、仕事も自分自身の人生もかなり豊かなものにできたと勝手に思っています。だから、「マイプロSHOWCASE関西編」は社会に向けたものであると同時に、社員に向けての”SHOWCASE”でもあってほしいという思いもあります。

田畑 企業ですから、利潤追求はしなければいけませんが、その時間軸は四半期単位だけではないことにも目配りしてもらいたいと思います。10年、20年という時間軸での利潤追求という観点を持てば視野が広がって社会課題に目が向くのではないかと思うのです。多様なものの見方があることにきづいてもらいたいですね。

山納 社会を良くするための競争なんてありません。「いかに儲けたか」ではなく「いかに自分が本気でやれたか」ということで動いているのが、ソーシャルな人たちだと思います。彼らの立ち居振る舞いを見ているうちに、ルーティンワークに疲弊している人が「仕事ってもっと面白いかも。可能性があるのかも」と思ってくれたらうれしいです。

江本 ソーシャルって誰が得をするとか損をするという世界ではなく、「ALL WIN」が成立する分野だと思っているので、このプロジェクトによってみんなが前向きでハッピーになれたらと思います。

兼松 ありがとうございました!

(座談会終わり)



「マイプロSHOWCASE関西編」キックオフ対談、いかがでしたでしょうか?企業によるこれからの社会貢献のあり方としても注目の事例だと思います。これから5月まで、ほぼ毎日関西の素敵なプロジェクトをご紹介していく予定です。

どうぞ、お楽しみに!

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