グリーンズが毎月開催している「green drinks Tokyo」。12月は総選挙を3日後に控えた13日に行われたということもあり、政治や社会づくりを「自分ごと」にしていくためのオープンな対話の場「せんきょcamp渋谷」で、「参加型民主主義がつくる未来」をテーマにトークライブ形式で開催しました。
今回の選挙はすでに終わってしまいましたが、「選挙が終わった時こそ行動する時」というメッセージがこの時すでに発せられていました。選挙の結果に満足している人も、不満な人も、関心がなかった人も、いまこそ政治に参加するべき時だと実感するに違いない、そんなイベントの様子をレポートでお届けします。
ゲストにお呼びしたのは、インターネット選挙運動解禁を目指す「One voice Campaign」の原田謙介さん、港区議会議員でgreen bird 代表の横尾俊成さん、「Change.org」のハリス鈴木絵美さん、司会進行は、greenz.jp発行人でせんきょcamp の発起人でもある鈴木菜央です。
日常と政治をつなぐ活動とは?
まずはゲストからひと方ずつ現在の活動を、参加型民主主義という観点から紹介していただきました。
原田謙介さんは、学生の頃に政治家の元でインターンなどをする中で「日本はこれからどうなっていくんだろう」という危機感と「政治は力を持っている」という実感を覚え、「政治が変わらないと日本はヤバイ。そのためには若い人が主体的に活動して行かないといけない」と考え、2009年に学生団体「ivote」を立ち上げました。それが現在の「One voice Campaign」につながるわけですが、共通するのは政治と若者の間に接点を作るということ。
選挙期間中というみんなが政治に興味をもつときに候補者がインターネットを使えないというのはどう考えてもおかしい、ネットが使えればネットを通して多くの人に演説を聞いてもらえるし、有権者と直接対話することで、もっと政策本位の選挙になるはずだ。
というのです。それを実現するために、有権者の声を政治家に届け、逆に政治家がネット選挙についてどう思っているかを有権者に発信し、まず若者は政治に興味が無いと思われているから、それを変えるために「選挙に行くべき」だといいます。
横尾俊成さんは、まず「政治の話を人前ですることはあまりしない」といい、その理由を「実際に政治の世界に入ってみるとやっぱりきな臭いところがあって、そういうネガティブなところは伝えたくない」といいます。横尾さん自身は選挙カーなしで「港区を良くする20のアイデア」という面白いマニフェストを作って当選し、マニフェスト大賞も受賞したそうです。
そのマニフェストというのは、「たくさんの人にまちづくりに参加して欲しい」という想いで作ったもので、議員になってからは「Blabo!」などを使ってインターネットで若者の意見を集めてそれを議会に提案したり、「みなとフューチャーセンター」を立ち上げて、社会の役に立ちたいけれど機会がないという人達の力をまちづくりに活かす取り組みなどをやっているとのこと。
ハリス鈴木絵美さんは、まずChange.orgについて説明。
Change.orgは何かを変えたいと思った人がキャンペーンを立ち上て署名を集め、その署名を使ってアクションをして行こうというプラットフォーム。今年から18ヶ国語での展開がはじまり、私は日本での版もはじまりました。
そして、絵美さんはChange.orgが伸びている理由として「ウェブを通してつながりが出来るという時代が来ていること」「政治的なリーダーへの不信感」「社会運動を生み出す実践的な例が国境を超えてすぐにシェアできる状態になっていること」の3つを上げます。特に3つ目がチェンジにとっては重要で、例えば「アラブの春」のような例をチェンジの戦術に取り込み「誰でも社会を変えていけるプラットフォームを提供する」というのです。
そして、「それによって選挙だけじゃなくて毎日のあらゆる活動で政治的な活動ができるようになってきていて、そういったところでChangeが活用されている」と言います。
そんな活動の例として3つのキャンペーンを紹介していただきました。1つは「日比谷公園での民主的なデモを制限しないでください!」というもの。これは24時間で1500人以上の賛同者を集め、実際に公園課長に届けに行き話をしたそうです。公園課長が「毎日来たら敏感になる」と冗談でも言っていたのが印象的だったと話します。
2つ目は「福島県: 県外避難の選択肢を奪わないでください!」というもの。これについては「7万7000人の署名が集まった時点で福島県に署名を私に言ったのですが、大部分が国際的な署名だった」といいます。
3つ目は「東京都知事選の立候補者へ:殺処分「ゼロ」を公約に!」というもの。こちらはえみさんのお母さんが始めたものだそうですが、「Changeが選挙中でも活用できるツールだというひとつの例」だといいます。
活動を通じて感じること
続いて、活動の手応えとこれからの展開についておうかがいしました。
原田さん
はじめてまだ半年余りですが、いろんなところで「知ってます」って言ってくれる人が増えてきているし、政治家の中でも党の中でも動き出したといってくれる人が出てきているのは成果を感じる部分です。でも、今回の選挙に間に合わなかったのがすごく悔しいので、みんなの関心が高まっている選挙後すぐに思いをぶつけて、解禁が実現したらいいなと思っています。
横尾さん
Change.orgの日比谷公園の事例のように行政というのは声が聞こえる人の声を聞くので、町会長とか声の大きい人の言葉が民意として行政に反映されるわけです。だから、僕が集めた意見を「若者たちの意見です」といって出すと、「仕方ないから聞いてみようかな」というようになる。行政もいろんな人の意見を聞こうという姿勢は持っているので、そういうふうに届けていければいいかなと思っています。
絵美さん
最初は「日本ではChangeはうまくいかない」って言われてたんでが、立ち上げてすぐ「なでしこジャパンのロンドン五輪からの帰国時は男女平等に対応して頂きたい!」というキャンペーンが2万人の署名を集めて、サッカー協会は署名は認めなかったんですが、平等にはなったんです。それで日本でも成功できると思うことができたし、福島の県外避難もそうですが、これまで政治的な発言をする人に色がついたイメージがあったのが、そういう活動をするのがカッコいいと思われたりヒーロー扱いされたりする日本を作りたいと思います。
参加型民主主義とは?
ここまでのまとめとして鈴木菜央から「3人に共通しているのは、向こう側にあった政治とか社会変化とかをこっち側に持ってきて、大げさだった話を身近にして言えなかったことも言えるようにするということで、それがまさに今日のテーマの参加型民主主義なのかなと思いました」と発言があり、続いて「参加型民主主義」について感じることを聞いたんですが、その前に、この話の途中に飛び入り山口から電話参加して頂いた選挙活動中の飯田哲也さんのお話を。
これまで日本はおまかせ民主主義、政治は政治で非常に古臭い活動にとどまっていました。前世紀的な政治とおまかせ民主主義に対して、現実にはポストモダンなテクノロジーやソーシャルメディアがある、これらをしっかりつないで、政治ももっと開かれた今日的なものにしないといけないですし、政治の事柄に一人一人がソーシャルメディアを交えて参加していくという新しい形をもう作って行く必要があるでしょう。
特に原発の問題では、日本人は世界中でかつ歴史的に最もリテラシーが高い民族になってるので、これからの原子力エネルギー政策をどうしていくのか、それを国民全員がさまざまな形で熟慮することが必要な段階に来ています。そういった意味でもこの総選挙のタイミングで、参加型民主主義がバラバラになった市民と古臭い政治を現代的に高めてつないでいくことを期待しています。
というお話でした。まさに参加型民主主義がこれからの政治を変えていくだろうというわけですが、その参加型民主主義とはいったいどのようなものなのか、ゲストの3人の考えを聞いてみましょう。
原田さん
選挙の時だけ盛り上げるのってすごく嫌で、普段から暮らしてて困ったことがあったら政治家に言えるようなもっとみんなが参加できる仕組みを作っていくのが参加型民主主義なのかなと。さらに意識の問題として、有権者が政治に関わっていくだけじゃなくて、議員の側でも多くの人達の意見を聞く方向に広がっていけばいいかなとも思います。いまは政治家が選挙前だけ有権者にぺこぺこするみたいにスレ違いが起こってると思うので、それが普通に話し合える関係になれればいいんじゃないでしょうか。
横尾さん
僕は有権者にペコペコっていうのが一番いやで、だって僕も一生懸命街を盛り上げようとしてるわけですし。そういう状況を作っているのは声を大きく上げる人達がいて、そこに票も見えているからで、その人たちに向けて「よろしくお願いします」みたいになってしまうからなわけです。
参加型という時に、えみさんが言う「選挙だけなじゃない」というのはすごく芯になる部分だと思っていて、別に投票しなくたって社会は動かせるしまちは良くすることはできるわけですが、僕としては民主主義の一つ大きな領域として政治を何とかしなきゃいけないと思っているので、政治という領域についてもっと考えていいんじゃないかとは思っています。
それを進めていくと政治家が要らなくなるんじゃないかとも思うんですが、もし政治家がいる役割があるとすると課題を投げかけて意見を集めてそれを議会に提案するというようなファシリテーター的な役割じゃないかとは感がしています。そういう部分の政治家ではありたいなと。
絵美さん
参加というときに、どこから参加するのかが大事だと思います。いきなり国レベルの政治というのは権力の問題もあるし、人数も多いのでなかなか参加しにくい。Changeはそこを誰でも参加できるプラットフォームという形で提供していて、それは数で勝負するという感じす。規模が小さくても大きくてもいいから小さなキャンペーンを積み上げていけば、20年後には総理大臣が当たり前に民意を聞くようになるんじゃないかという発想です。
だから大きな政治じゃなくて、「自分の近所の問題」とか「子どもが通ってる学校の問題」といった小さなところから変えていけばいい。特に原発とか大きな問題が動かない時に、それで諦めてしまうんじゃなくて、小さな変えられるところから結果を出していって元気にやっていこうよということです。
「民主主義」というと大きな問題に見えますが、それを自分たちの方に引きつけて、目の前にある小さな問題を解決し、それを積み重ねていくことでその大きな問題へと向かっていく。参加型民主主義とは、民主主義に参加することではなく、あらゆる物事を民主的に行うことで、社会や国のあり方を決めていくそのプロセスへと参加していくそのような「参加」の形なのだと感じました。
それは政治にかかわらずあらゆることについて言えることで、そのあたりを含めて、最後に鈴木菜央からこのようなまとめの発言がありました。
greenz.jpで紹介するいろんな事例も小さなステップをたくさん積み重ねたところがうまく言ってるんですよね。社会づくりも一緒だなと思っていて、ヒーローが突然現れて解決するんじゃなくて、みんなが小さなプチ成功体験を作って行きたい。だからみんなが手を取り合って変えていくっていうのが早いし楽しい。
民主主義っていうのは、自分が考えた社会ができていくんだから楽しいにきまってるわけで、そのためにスモールステップを積み重ねていくことも楽しいことだと、その楽しいスパイラルに入って行くことができれば止まらなくなるという希望を感じました。
最後にみなさんに一言ずつということだったので、本当に一言にまとめました。
原田さん「ヒーローに頼らずみんなで支えていく!」
えみさん「変えたいっていう気持ちを自信もって勇気を出して言ってみよう!」
横尾さん「政治家でいいことしてるひとがいたら褒めて!」
ということで、今回の選挙は終わってしまいましたが、グリーンズではこれからもせんきょcampと一緒に参加型民主主義を盛りあげていこうと思っています!みなさんも身近な問題を考えて見ることから民主主義をはじめて見ませんか?
今年のgreen drinks Tokyoはこれにて終了!来年もどうぞお楽しみに!