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READYFOR?で史上最高額を集めた「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」のその後

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今や、次々とクラウドファンディングのサイトが開設され、たくさんのプロジェクトがファンドレイズに成功していますが、「寄付したおカネはどう活かされているの?」とか「資金調達に成功した人たちの、その後が知りたい!」という声も上がっています。

そこでgreenz.jpでは、クラウドファンディングで資金調達に成功したプロジェクトの「その後」を追跡してみることにしました。

2011年3月29日、日本初のクラウドファンディング「READYFOR?」は活動を開始しました。現在までに、このサイトに掲載されたプロジェクトは、108件以上にのぼります。

greenz.jpではおなじみの言葉になって来ましたが、「クラウドファンディング」とは自分が思いついたプロジェクト、アイディアに対して寄付を募るというもの。ただし、「READYROR?」の場合、通常の寄付とは違い、プロジェクト実行者は、寄付金に応じた「引換券」を用意して、何らかのお返しを寄付者に約束します。

さて、今回紹介するのは、READYFOR?で資金調達に大成功した「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」です。

このプロジェクトは、陸前高田市モビリア仮設住宅在住の吉田晃子さんが、東日本大震災で津波に飲み込まれてしまった地元の図書館の代わりに、仮設住宅の中に図書室を建設して、そこを本でいっぱいにしようというプロジェクトです。

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吉田晃子さん(右から2人目)

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再建された図書館の外観

図書室の建設費用は、神戸市の篤志家が提供してくれましたが、肝心の本棚や収蔵する本の購入資金がないので、その資金を調達するために、クラウドファンディングに挑戦したのです。

目標金額は200万円。不安な気持ちでREADYFOR?のサイトにプロジェクトをアップしたそうですが、なんと3日目にして目標金額を達成。そして、最終的には824万5千円もの資金が集まり、支援者は862人にのぼったのです!

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その成功要因を、プロジェクト責任者・吉田晃子さんの自称「秘書」として活躍する鎌倉幸子さんは振り返ってくれました。

目的もプランもしっかりと持っていましたし、プロジェクトのタイトル自体、場所も目的も一目瞭然で、明確なメッセージだったからではないでしょうか。ただ、いくらの引換券でどんなお返しをするかは、色々と逆提案もしていただきました。

現在、陸前高田市モビリア仮設住宅に設置された図書室には、約5000冊の本が収蔵されています。また、この図書室は、「本を読むだけでなく、コーヒーを飲むだけ、雑誌を読むだけ、受付の人と話をするだけでもかまわないのです。人と接することで安心感が生まれ、心のケアにもつながるのではないかと考えています」(吉田晃子さん)と、「心の診療所」にしたいという想いがありましたが、その想いも実現されているようです。

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住民の皆さんが、図書室に置いてある法律書を手にして高台移転について語り合ったり、新聞をめくりながら世間話に花を咲かせたりしています。この活動のキャッチフレーズが「立ち読み お茶のみ お楽しみ」なんですが、同じ本や雑誌を読んでいる人同士で、テーブルで話が始まったりするんです。いわば、本や雑誌が住民の方々を結び付ける役割をしているんですね。お茶とコーヒーを提供しているので、気楽に立ち寄れるカフェテリアにもなっています。(鎌倉幸子さん)

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予想をはるかに上回る資金が調達できたので、今後の目標は、この資金を元手に、2〰3年かけて収蔵本を17000冊に増やすことだとか。また、現在、図書室は「仮設」だけれど、将来的には「本設」にすることも視野に入れているそうです。

空っぽの図書室を本でいっぱいにして、その図書室の場が人と人とを結び付ける新しいコミュニティを創り出す…クラウドファンディングでの資金調達の成功を足がかりに、このプロジェクトは、その想いをしっかりと実現させているようですね。

最後に、READYFOR?からコメントをいただきました。

このプロジェクトは国内クラウドファンディングで最も資金を集めたプロジェクトです。クラウドファンディングは、資金調達が主な目的ではありますが、このプロジェクトを通して、資金を集める以上に、今までつながりのなかった人と人とが繋がる瞬間を創りだすことができるということもわかりました。

このプロジェクトの支援者の中には、実際に図書室に足を運んでいる方もいるそうで、ネットというバーチャルな空間を超えて、リアルに繋がっていくことはとても面白い気づきでした。

今後もREADYFOR?では、このプロジェクトのように、お金を集めるだけではなく、人と人が繋がり、みんなで目標を達成できるようなプラットフォームに育てていきたいと思います。

次回も、成功したクラウドファンディング事例を紹介しながら、成功した要因、そしてその後のストーリーをお届けしたいと思います。お楽しみに!

(TEXT:高馬卓史)

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