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大量生産の時代に必要なのは”捨て方のデザイン”!素材として廃棄物にいのちを吹き込む「モノ:ファクトリー」

多種多様なマテリアル(廃材)が並ぶナカダイの工場

多種多様なマテリアル(廃材)が並ぶナカダイの工場

産業廃棄物というと、あまり馴染みがないかもしれません。でもそこで扱われているモノは、私たちの身近にあるものばかり。例えば、売れ残ってしまった何千、何万というシャンプーボトルや、社内異動で一掃された古い机やイス。そうしたものはすべて産業廃棄物となり、処理業者の手で解体・分解されてリサイクルされた後に、焼却処分、埋め立て処分されます。

今回は、「廃棄物をリサイクルするだけではもったいない!素材(マテリアル)として活かしたい」そんな想いから始まった「モノ:ファクトリー」という取り組みをご紹介します。

「モノ:ファクトリー」とは?

産業廃棄物を解体・分解し、そこからまたモノが生まれるプロセスを体験できる場
産業廃棄物を解体・分解し、そこからまたモノが生まれるプロセスを体験できる場

「モノ:ファクトリー」とは、産業廃棄物の処理業者である株式会社ナカダイが始めた、モノづくりの工場です。ここでは、廃棄物の解体や分別を体験できるワークショップが開催され、豊富な素材や機材を使って実際にモノづくりを体験することができます。

リサイクルが本当に環境にいいことなのか。そのことに疑問を持つようになったんです。それから、日々搬入される面白い、変わったマテリアルを、そのまま破砕やプレスをしてしまう処理に疑問を感じていました。

と「モノ:ファクトリー」を運営する株式会社ナカダイの中台澄之さんは語ります。

多くの製品は、規格通りに製造され、消費者のもとに届き、使用されたあとに廃棄されます。この「廃棄」までで、モノづくりのプロセスは終わりと考えるのが普通かもしれません。

一方ナカダイの取り組みの面白いところは、「廃棄」がモノづくりのスタートであること。工場に運ばれてきた廃棄物を、ゴミではなく“素材”と捉え、解体した後も大切に保管し、その素材から新しい価値を生み出しているのです。

大型トラックに満載された段ボールの在庫品。中身はすべて新品

大型トラックに満載された段ボールの在庫品。中身はすべて新品

「モノ:ファクトリー」で行われていること

そんな中台さんの想いが反映された「モノ:ファクトリー」について、もう少し詳しく見ていきましょう。

1. 解体・分別の体験講座

壊して学ぶ、つくって学ぶワークショップです。もしかしたら子どもの頃に“ラジカセ”を分解してみた、という方もいるかませんね。こちらでは工場に集まった多種多様なモノを、自分で実際に分解してみることができます。また、素材を使って当たらな作品をつくるワークショップも開催されています。

2. 豊富な素材を使うモノづくり

240平方メートルもある広いスタジオには、豊富な素材だけでなく、家庭では扱いにくい加工機材が置いてあり、誰でも自由に使うことができます。こうした機材は、熟練した技術を持つスタッフがサポートしてくれるので、大人から子どもまで安心してモノづくりを楽しむことができます。

3 マテリアルライブラリー

さまざまな産業で使われている多種多様なマテリアルは、実に興味深いモノがたくさんあります。それらを幅広くアーカイブ化し、実際に手に取って選び、パーツとして購入することができます。もちろん、工場見学も随時開催されています。

「創る」と「壊す(解体する)」が同時に体験できる。上の写真は、銅線を叩いてオリジナルリングをつくっているところ

「創る」と「壊す(解体する)」が同時に体験できる。上の写真は、銅線を叩いてオリジナルリングをつくっているところ

子どもの真剣なまなざしの先にはパソコンが。お隣さんと工具を貸し借りしたり、「このネジ取れば良いんだよ」と得意になる子どもたち。大きな笑い声がずっと会場を包んでいました

子どもの真剣なまなざしの先にはパソコンが。お隣さんと工具を貸し借りしたり、「このネジ取れば良いんだよ」と得意になる子どもたち。大きな笑い声がずっと会場を包んでいました

さっきまで走り回って落ち着かなかった子どもたちが、一気に真剣な表情になって、黙々と分解したり、何かを組み立てたりする姿を見るのは面白いですよ。親子で参加されても、大人も子どもも自分の作業に集中している(笑)。そこから生み出されるものは、レシピや型紙のような“つくりかた”の存在しない、本当に自由なクリエイティブですからね。

そう楽しそうにお話をされる姿が印象的でした。

モノの“一生”を考える

「まずは、廃棄物というものを自分の目で見てほしい」と中台さんは語ります。

工場を案内してくれる中台さん

工場を案内してくれる中台さん

産業廃棄物というのは、本来はみなさんには見えない部分ですが、捨てられたその先に待っている現実を知ってほしいのです。どれほどの量が毎日捨てられているのか。捨てられたモノの中に、新品同様の製品がどれだけあるのか。知らないことには、何も始まりません。

さらに、「捨てる」ということ自体を見直すきっかけになればいいと、中台さんは続けます。

買うときは、当たり前のように考えますよね。本当に必要なモノなのか、あるいは、対価に見合うモノなのかと。でも、「捨てる」ということを考えることはほとんどないでしょう。どんなモノでも、仮にそれが燃やせるものだったら、その灰は最終的に埋め立て地に埋められます。人にも最期があるように、モノにも最後があるんです。

捨てられた後、どのようにモノがその“一生”を終えるのか。そのことを考えることこそが、ナカダイの提案なのです。そう考えてみると、モノの見方が少しだけ変わりそうですね。

「捨て方のデザイン」を広めたい

捨てられた銅線が、あたたかみのあるオリジナルリングに

捨てられた銅線が、あたたかみのあるオリジナルリングに

アルミの板に金属で刻印をするアクセサリー。好きな文字を入れることができる

アルミの板に金属で刻印をするアクセサリー。好きな文字を入れることができる

ナカダイのマテリアルを使ってつくられた猫の照明

ナカダイのマテリアルを使ってつくられた猫の照明

廃棄物を解体したり、そこから何かを組み立ててみたり…。ナカダイの試みは、モノづくりのプロセスが専門化し、見えにくくなってしまっている現状を、あらためて知るきっかけにもなりそうです。

廃材のデザイン、エコ商品という言い方はよく聞きますが、捨て方にもデザインがあると思うのです。デザインということを広い意味で捉えれば、目的をよりよい方法でかなえるための計画も意味します。そんなことを真剣に考えるべき時代が来ているんです。

聞けば、東京都にある現在の埋め立て地はあと数年でいっぱいになり、現在建設が進んでいる新しい埋め立て地も、計算上では50年分しか埋め立てができないのだそう。

ゴミを増やさないために、といった議論では、ゴミは減らないと思うのです。消費することに慣れてしまって、いとも簡単にモノが捨てられる。だから、廃棄物のモノの流れを公開し、排出されたマテリアルをまた別の何かに使う体験をすることで、その気づきを日々の生活のなかで実践してほしいのです。

今後ナカダイとして取り組んでいくのは、北海道なら北海道の、鹿児島なら鹿児島の、京都なら京都の「モノ:ファクトリー」として、各地域の中間処理業者にもモデルを広げていくこと。それぞれの場所ならではのユニークな”素材”が見つかりそうですね。

ゴミというと、一気に難しい問題になってしまうかもしれないが、デザインというと、ちょっと気になるという方も多いはず。ナカダイの「モノ:ファクトリー」の試みに、あなたも参加してみては?