冷たい雨に、強い風…“家”はいつも私たちを厳しい自然界から守ってくれます。
自然は厳しいとはいえ、かつては誰もが周りの環境と調和するように暮らしていました。しかし、いつしか家は自然とは切り離された空間がより好まれるようになっていきます。
エアコンで気温も湿度もコントロールしやすいように、呼吸する木の家よりも気密性の高いほうがいい。鳥のさえずりや近所の子どもたちの声が聞こえるよりも、外の音がシャットアウトできるほうがいい。日中は外に働きに出ているから、日当りの良さは気にならない…それが本当に“いい家”だと言えるのでしょうか。
今回ご紹介するのがこちらのおうち。内と外が緩やかにつながり、いつでも自然を感じながら暮らせる「小舟木の家」です。
この家が建てられているのは、滋賀県近江八幡市にある「小舟木エコ村」。エコ村は持続可能な社会の実現を目指して2000年にはじまったコミュニティプロジェクトで、「二酸化炭素の排出を現在より80%削減するライフスタイルの創出」を目標に、地場の木材を使った家作りを実践しています。
「小舟木の家」を設計したのは、滋賀県の建築設計事務所「ALTS DESIGN OFFICE」代表の水本さんと久我さん。二人はこの家に「自然と共に生きるということを見つめ直し、住まいを再構築する」という思いを込めました。お二人はこういいます。
自然とともに生きる…それは時には生活を不便にし、手間のかかることや、うまく行かないこともあるかもしれません。しかし自然の光や風、植物は我々に、それ以上の価値を与えてくれます。
住まいを完全に内と外に区切って考えるのではなく、もっと内と外が緩やかにつながり、常に森を感じられる空間を造りだすことで、自然を感じ、四季を楽しむ。それは家族を和ませ、暮らしを豊かにし、森と共に家族を成長させることができるでしょう。
内装には自然の木がふんだんに使われ、十分な自然光が取り入れられるよう間取りも工夫がされています。玄関を一歩入ると広がるスペースは、日本の伝統的な民家にある”土間”の考えを取り入れたもの。閉じられた家の中ではなく、緩やかに外へとつながる中間部分を造り上げています。
その土間の一部には砂利を敷き詰め、高さの異なる数種類の木を植えることで、家の中にいながらも季節の移ろいを感じられるような演出も。自然の中に暮らしていることを、壁の内側にいても忘れずにいられそうです。
内と外は、家の外側と内側には限りません。小舟木の家では、家の中の内と外、つまりは部屋と共有部分も流れるようにつながっています。
階段や、2階の廊下部分をオープンな作りにし、家のあらゆる場所で家族と視線を交わすことができるように。さらには部屋の間仕切り壁を極力減らし、半透明のカーテンを使って仕切ることで廊下から部屋へとゆるやかにつなげています。壁が少ないため、別々の部屋にいてもお互いの立てる音が聞こえ、常に家族の存在を感じられるでしょう。
自然と人とのつながりを強めてくれるこの家は、緩やかに空間を区切ることで家族同士のつながりも強めてくれそうです。
ともすると忘れてしまいがちですが、人の周りに自然があるのではなく、自然の中に私たちは暮らしています。暑いや寒いに振り回されていると感じるのではなく、季節の移ろいを感じ、自然を慈しむ…そういった緩やかな心を持って暮らしていきたいものですね。
[via treehugger]
小舟木の家について
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