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「TEDxKids@Chiyoda」のつくりかた ー 青木竜太さんインタビュー(中編)

このインタビューシリーズは、「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア」を実現して、よりよい未来を自らの手でつくりだしている方々へのインタビューをお届けします。

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こんにちは、greenz.jp発行人鈴木菜央です。
前回に続き、未来を作る子ども達と子どもの環境を作る大人達に向けたカンファレンス「TEDxKids @Chiyoda」(以下、TEDxKids)を開催する、青木竜太さんにお話をお伺いします。

前編では青木さんがTEDに関わった理由と、今取り組んでいることについて聞いてきましたが、中編ではTEDxのコミュニティについて聞いていきたいと思います。

インタビュー中の動画は、青木さんに選んでいただいたおすすめのTED Talkです。キャプションも青木さんにご提供頂きました。

TEDxTokyo yzのつくりかた

鈴木 TEDxに関わりはじめたころには、どんな苦労がありましたか?

青木 ちょうど僕がTEDxTokyoに関わり始めたころに、TEDxTokyo yzっていう、20、30代向けのイベントをオーガナイズするという話が持ち上がりました。そのときTEDxTokyoは完成されていたんですけど、僕自身、大きくてある程度ブランドがあるものよりも、ゼロから作るもののほうが好きだったんですよ。なのでTEDxTokyo yzファウンダーの井口奈保と一緒にそちらのほうに注力するようになったんですね。

TEDxTokyo yzに関しては、まったくゼロベースから始めたので、「面白そうだ」と思ったみんなが集まって、試行錯誤を繰り返しながらつくっていったという感じでした。

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TEDxTokyo yz (http://tedxtokyoyz.com/)

鈴木 そのときに参考にした動きとかあるんですか?

青木 TEDxTokyoを立ち上げたトッド・ポーターパトリック・ニューウェルの動きにはすごく影響は受けてきましたね。TEDxTokyoではもちろんパトリックなどがビジョンを示して先導していくんですけど、それぞれの活動に関しては任されているというか。自分たちの好きなようにやればいいと。僕は今、プロジェクトに関わるみんなの自発性をいかに喚起させるか?ということがすごく大事だと思っていますが、彼らの影響が大きいですね。

今は基本的には人にお願いすることもほとんどない。「こういうことがあるよ」と共有した上で、「あなたは何がやりたいですか?」と尋ねるようにしています。そういうところに飛び込んだ人たちは、自分たちでどんどんやりはじめるので。

鈴木 なるほど。みんなが自発的に何かやってみて、上手くいったら仕組みにするって感じ?

青木 仕組みにすることはあまりないです。効率化することは意図的に求めないようにしています。システム化しちゃうとコミュニケーションが無くなっちゃうと思っています。ですから、非効率だけど一つひとつみんなで話して共有していくことを大事にしています。そうすることでコミュニケーションが必然的に生まれて、信頼が生まれていくと思います。その関係性を築きながら彼らのやりたいことを見つけ出して、それに対してサポートしてあげる、ということが大切ですね。

鈴木 イベントだけ見ていると、こうふうにしよう!っていうトップダウン的な活動なのかな、と勝手に想像していたけど、みんなの話を聞いてそれぞれのやりたいことを形にしようって感じなんですか?

青木 そうですね。TEDxによって結構性格が違うんですけど。TEDxTokyoはトッドとパトリックが「こういうテーマでこういう登壇者で…」と決めて、あとは必要な要素をみんなで埋めていく感じ。でも、TEDxTokyo yzは草の根的にそれぞれ。ファウンダーの思いや考えがコミュニティデザインに大きく影響があるんじゃないかと。

TEDxTokyoはわりとシニア層というか上の人たちが来るところで、エスタブリッシュ(確立された)な感じ。一方、TEDxTokyo yzは20、30代の人がメインで、色々な可能性に挑戦したい人たちが集まる場だったので、トップダウンじゃ合わないんじゃないかなって。僕自身もそのときの経験がかなりTEDxKidsにも反映されていますね。

大事にしていることは、創造性と自発性

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鈴木 TEDxは全国に広がるムーブメントになりつつあると思うんですが、ムーブメントになった、成功要因はなんだと思いますか?

青木 難しいですね。僕たちも活動していく中でたまたま成功したってのもあると思うんですけど。デレク・シヴァーズのTED動画「社会運動はどうやって起こすか」をご覧になったことはありますか? やはり、フォロワーをどれだけ巻き込めるかってところが一番重要だと思います。リーダー個人の成功云々じゃなくて、フォローしてくれた人たちをちゃんとサポート出来ているか。彼らをしっかり巻き込んで、彼らのステージをちゃんとつくって、彼らも楽しいとか、やっていて意義がある、という風にすることが、結果的にムーブメントに繋がっていくんじゃないかと思います。

鈴木 それは意識したんですか?

青木 いえ、ムーブメントを起こそうというのは特になくて。でも、参加者たちに対して、「彼らは何がやりたいんだろう」ということを考えて、あとは任せようと。

鈴木 コントロールを渡す、ということですね。

青木 そうですね。ただ、お願いしちゃうとその時点で僕のお願いに依存してしまうんですよ。そうするとその人は僕から何か言われない限り動かなくなっちゃいます。人って必ず何か自発性や創造性を持っていると思うので、まずその自発性を発揮させてあげることによって、活動し始めていく。そうするとみんなから認められはじめて、どんどん自分の創造性を出すようになってくるんですよ。それで結局みんな楽しんでる、っていう形になっています。

鈴木 他に大事にしていることとかありますか?

青木 やっぱりワクワク感はすごく重要視していて、ミーティングでも必ず笑いがあったり、知的好奇心が満たされるように、影ながら(笑)意識しています。僕は必ずTED Talkを見せるようにしてるんですよ。そのときに話したいこととか、意識してほしいことを、映像を通して感じてもらう。そうすると場が変わるんですよね。イメージを共有するというか。

鈴木 TED動画を通してイメージを共有するというのは、面白いね。


青木竜太さんオススメのTED動画2:ジェイミーオリバー「子供たちに食の教育を」
青木さんコメント「TED Prize 2010 受賞者のジェイミー・オリバーが我々の食への無関心に反旗を翻します。教育の重要性について再認識させられるTED Talk です。」

青木 ちょっと意地悪な言い方すると、僕は人間の欲望というループをある課題にリンクさせようとしているんです。いろんな欲望を目的と上手くつなげられるようにコーディネートしているというか。

例えばある参加者は、はじめ何をしたらいいのか分からなかった。そういうとき、多くの人は「こうしたら?ああしたら?」って言うと思うんですけど、僕は放置したんですよ。彼女だったらきっと何かやり始めるだろう、という雰囲気があったから。

あるとき、彼女が「人と話をしたい」って言い始めたんですね。それなら、パティシパント・コーディネーションという仕事があるよ、と教えた。これは多くの人たちとコミュニケーションをとりながら、イベント参加者に、どういう人が来るのかをデザインする仕事です。

たとえばデザインに関することがテーマの回に、単純にデザイナーだけが集まる、というふうにならないよう、教育者、IT系、マーケッター、ブロガーなどの分野別で割り振ったり、年代もバラけるようにするんです。そしたら1週間後くらいに「私、それやりたいです」って言ってくれたんですよ。参加者の「やりたい」って思いと、やれることの橋渡しをすることで繋がる。その後はどんどん自分から動き始めます。

「TEDx自分」は誰でもできる

鈴木 興味深いです。他にも、大事にしていることはありますか?

青木 とにかく重要だと思うのは、自発性と創造性をどれだけ出せるか、ですね。今、僕はここの2点にかなり絞っているところです。そのために、「Prototype People’s Creativity」っていうミッションを掲げています。参加者がやりたいことを実現して、自己実現に繋がって、結果的には幸せになるんじゃないかって思っていて。それにはどうしたらいいのか、ってことで色々サポートをしたり思いを聞き出したりしています。

鈴木 そうか、クリエイティビティはプロトタイプできるのか。

青木 企業の中にいるとできないんですよ。クライアントワークで失敗できないし、「それは儲かるのか?」というプレッシャーがある。みんないろんな視点で革新的ななにかを生み出す力を持っていると思うんですけど、それを試す場がない。だからこそTEDxTokyoや、VOLOCITEEのコミュニティが必要なのかなと思います。

鈴木 そこで練習して、「じぶんごと」にして持ち帰ったりできるしね。そういう意味では、TEDは本当に大きな影響を世界中に与えてきたと思うんだけど、TEDがTEDxを始めたのはすごく大きいなぁと思うんです。TEDの理念に共感した人が「参加」できる余地を作って、それにみんなが乗っかって。世界中のいろんなコンテンツがTEDの文脈で広がっていく。すごくエキサイティングです。

青木 ありがとうございます。TEDxってまさにオープンソースのプラットフォームで、それぞれフォーマットに乗っかって自分の思いをそこで実現していくものだと思っています。それがTEDという、ある程度ブランンドの看板がついているので、全世界に広がっていったという感じですね。だからTEDxは、TED本体とは違うやり方で広まっていったというか、グラスルーツ的に広まったんです。

日本でも未だに「TEDxってすごいよね」ってイメージがあると思うんですけど、僕はそうじゃないと思っていて。「すごいね」っていうのはつまり「自分たちじゃ起こしにくいよね」というイメージを持っている人が多分たくさんいると思うんだけど、実は全然そうじゃなくて。例えば、参加者も含めてTEDxを5人くらいで開催している人たちがいるんです。野原でプロジェクターを投影して、green drinksに近いところもあると思うんだけど、もっとそれよりも小さくてリラックスしてやってる。

鈴木 「TEDx俺」、みたいな?

青木 そうそう、そういうのもありなんですよ。僕たちは今後、そういうことが可能だ、ってメッセージを広げていきたいですね。TEDxを始めるときに、心の中の壁があると思うんですけど、それをうまく取り払えるようにブログとかで発信できたらなと思っています。それぞれ運営していく過程で壁にぶち当たるだろうから、僕たちはこうして乗り越えた、みたいなことを伝えていけたらみんなもどんどん独自のTEDxを立ち上げて、クリエイティビティを発揮できる場が増えてくるんじゃないかな、と。

全国にTEDxKidsを広めたい

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鈴木 TEDみたいなイベントを開くとなると敷居が高いイメージがあるけど、いろんな場面で活用するとなると、できることが増えそうだね。ニュージーランドでは、小学校の授業でTEDの動画を見せて、世界の環境問題や社会問題を、クリエイティビティで解決していけるか、という議論をしているそうです。世界の課題は専門家にまかせておけば解決する時代ではない。これからは、クリエイティビティで、一人ひとりが解決していく時代なのに、残念ながら日本では、そういった教育はまだまだほとんどやられていないようです。

青木 僕は将来的に、全国にTEDxKidsを広めたいと思っています。子どもたちと大人がいいアイデアを聞きながらディスカッションして、みんながそれを応援するコミュニティを、日本全国にたくさん作りたいですね。そのためには新しい教育って言うとおこがましいですけど、新しいラーニングシステム(学びの仕組み)ができるんじゃないかなと思っています。

鈴木 いいね、是非やってほしい。展開法方法は頭の中に妄想的にあるんですか?

青木 妄想的にはありますね(笑)。まずそれを始めるには、TEDxKidsをしっかり認知してもらわないといけない。今回、アイデアをアクションに落とし込むグループの他に、メディア・グループを設置したんですよ。それはオーガナイザーチームとはまた別で、オーガナイザーたちがつくったコンテンツを、メディアを通して世界に発信していくチーム。今greenz.jpフクヘンのおのっちが共同ディレクターとしてやっているんですが、そういう意味ではTEDxKidsの活動のみじゃなく、僕たちの考えるものをみんなに認知してもらえるかなと。

そして、それがある程度広まっていって、新しいアクションが起き始めていったら、TEDxとコラボレーションして、日本の子どもたちのアイデアを全世界に共有できるような取り組みができたらいいなと思っています。

TEDxってもともとローカルの思いを捉えて、世界に広げていくという大きな目的があるんですけど、それをもう少し押し進めたいです。TEDxTokyoはもうそのステージに来つつあると思うんですが、TEDxKidsはまだそのステージに立っていないので、そこまで行ったらいいなと思っています。そして、ごく一部の人が参加できるという排他的なグループではなく、開かれた形で広げていきたいなと思っています。

鈴木 竜太さんの活動は、かなりTEDxKidsにフォーカスしているんですね。

青木 はい、KIDSです! 最初のきっかけがそこにあったので。いろんな海外のTEDxオーガナイザーに会ったりすると「君の企画での対象年齢は、会うたびに下がっているね」と言われます(笑)。確かに最初はTEDxTokyo, そしてTEDxTokyo yzをやって、今はKIDSなんですけど。でも、僕が本来やりたいのはTEDxKids。それは最初にも話したんですけど、ようやく今年広げるための土台作りができる段階に来ていて、今はそれに注力しています。


インタビュー後編では、TEDxKidsのコミュニティデザインについてさらに深く聞いていきます。
(前編はこちら!)

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青木 竜太(あおき・りゅうた)
TEDxer、TEDster、 TEDx スピーカー、TEDxKids@Chiyoda 創立者兼キュレーター、VOLOCITEE Inc. 創業者兼CEO

1979年7月7日、東京都目黒区生まれ。20歳の時に友人らとIT ベンチャーを起業し、その後プログラマーとしての道を歩む。しかし2009年にある出来事をきっかけに新しい人生を歩むことを決心する。その後TEDxTokyo へボランティアの申し込みをしたことをきっかけに、現在までに国内外20を越すTEDx カンファレンスに参画または関与するようになる。2011年10月には、日本で初めてTEDxKids (ライセンス名TEDxKids@Tokyo) を開催し、2012年にTEDxKids だけを開催する新たなTEDx (ライセンス名:TEDxKids@Chiyoda)を起ち上げた。2011年9月にクリエイティブ・コミュニティを作る集団VOLOCITEE Inc. を起業し、新しい事に挑戦する個人とクリエイティブ・コミュニティをマッチングさせるオンラインプラットフォーム「VOLOCITEE」の開発に注力している。

TEDxKids@Chiyodaのサイトを見てみよう