読者のみなさんにとってもお馴染みの路線バス。もしそれがただの移動手段ではなく、ある問題を解決するために役立てられるとしたら…。今回ご紹介するのは、デトロイトではじまった新しい公共サービスのお話です。
そのサービスの名前は「WeRide」。仕組みはとてもシンプルで、誰かがバスのチケットを購入する度に、経済的、地理的などの理由でバスを利用できない人に座席を寄付することができるというもの。靴ブランド「TOMS」でも有名なOne for Oneの仕組みを取り入れた公共サービスなのです。
この素敵な取り組みの背景には、デトロイトの交通機関を取り巻く状況が関係していました。デトロイトでは、バスが遅れたり、来ないことも当たり前。さらに運転手の運転が雑なこともあり、安心して頼れるバス会社が少なかったそうです。
さらに困ったことに、財政難による運行ルートの削減も重なり、地理的、経済的などさまざまな理由でバスを利用できなくなる人も現れました。そんな中で考えだされたアイデアが、この「WeRide」だったのです。
「WeRide」を利用するには、メールでバス会社に応募します。そして、正式にプログラム利用者として認められると、無料でバスを利用することができるようになります。デトロイトに住むすべての人に時間通りの運行を提供することはもちろん、寄付の仕組みも取り入れたことで信頼できる公共サービス像を築いていこうとする会社の姿勢は素敵ですね。
バスに乗るという普段の暮らしのなかで、同じまちに住む誰かに貢献することができる。それは、寄付する側にとっても、される側にとっても、まちに誇りを感じる機会になるのかもしれません。
みなさんはどんな「One for One」があったらいいと思いますか。図書館、学校、カフェ、スーパー、居酒屋、お花屋…まちの中には実行できる場所がたくさんありそうですね。これからの公共サービスを考える上で、この取り組みは素敵なヒントになるのではないでしょうか。
(Text:佐藤慶一)
[via psfk]