女性を一瞬で笑顔にしてしまう、お化粧のチカラ。その魔法のようなパワーを借りて、世界中の女性の心を彩る「Coffret Project(コフレ・プロジェクト)」が始動してから、約3年が経とうとしています。これまでgreenz.jpでは、その活動の様子や、代表の向田麻衣さんのインタビューを、記事でご紹介してきました。
▶家で眠っているコスメで世界をつなぐ「コフレ・プロジェクト」(2010年2月)
▶「コフレ・プロジェクト」×「エコランド」の不用コスメ回収キャンペーン(2011年1月)
▶【レポート】Coffret Projectと宮城県石巻市に行ってきました。(2011年4月)
そして先日、Coffret Projectの新たな挑戦がクラウドファンディング「READYFOR?」に登場。現在、支援者募集の真っ最中です。資金調達の目的は、ネパールの女性たちがビューティシャンとして自立するための職業訓練を行うこと。イベントを通して女性の心を彩るだけではなく、彼女たちの未来をつくるというこのチャレンジは、プロジェクトとして、次なるステージへの第一歩でもあります。
そこにある想い、そしてこれからの取り組みについて、代表の向田さんにお話を聞きました。
「Coffret Project」のこれまで
まずは「Coffret Project」についてのおさらいから始めましょう。
「何でもしたいことしていいよ、って言われたら何がしたい?」
「お化粧がしたい!」
代表の向田麻衣さんが学生時代、低所得者層のトルコ人女性と交わしたこの会話が、全ての始まりとなりました。
食べ物よりも、住む場所よりも、「美」は、女性の心を豊かに彩る力を持っている。一方で、日本人女性の家には使い切れなかった化粧品が山のように眠っている…。そう気付いた向田さんは、それまで務めていた化粧品会社を退職。2009年7月、コスメで世界中の女性の心を彩るべく、「Coffret Project(コフレ・プロジェクト)」として、継続的な活動を開始しました。
これまで行ってきた活動は大きく分けて3つ。
ひとつは、途上国において「化粧ワークショップ」を実施し、精神面でのケアや自尊心を持つきっかけ作りを行うこと。現地のNGOと協同し、トルコ、インドネシア、フィリピン、ネパールなどでたくさんの女性を笑顔にしてきました。
2つ目は、日本における化粧品の回収。物流業者や商業施設と連携して回収キャンペーンを実施したり、古くて化粧に使用できないコスメを使って認知拡大のためのアートイベントを行ったり。様々な手法で日本人女性に気付きを与えてきました。
そして、東日本大震災の被災地での活動。震災後すぐ、避難所で必要とされていた基礎化粧品を中心としたコスメを、宮城県石巻市、福島県福島市などに届け、6月頃からは化粧ワークショップも行いました。
途上国で、日本で、被災地で。Coffret Projectは、場所を変え形を変え、世界中の女性の心を彩る活動を続けています。
「雇用をつくる」という新たなチャレンジ
そんなCoffret Projectの次なるチャレンジは、「雇用をつくる」こと。クラウドファンディング「READYFOR?」では、女性たちがビューティシャンとして自立するための職業訓練実施を目指し、支援を募っています。
今回、メイクアップの職業訓練の舞台となるのは、ネパールの「シェルター」と呼ばれる施設。インドの売春宿に売られ、エイズなどの病気に感染し、売春宿にすらいられなくなった10代〜20代の女の子たちが一時的に保護されている場所です。ここにいられる期間は約1年半。その間に手に職をつけることが、彼女たちが自分の足で生きていくための、唯一の方法なのです。
Coffret Projectでは、今回集まった資金を元手に、10〜11月にかけて全8回の「メイクアップの職業訓練」を実施。日本や海外から美容の専門講師を呼び、本格的な技術を身につけることができるオリジナルプログラムを提供する予定です。これをプロトタイプに、その後は年1〜2回の継続的な取り組みにしていく計画もあります。
イベントから一歩踏み出し、女性の生きる道をつくる取り組みへ。Coffret Projectは、「美」や「お化粧」の新たな可能性を、追い求めようとしています。今回「READYFOR?」で、一定額以上の支援者となった方の写真と名前、メッセージは、アルバムにまとめられてシェルターに飾られるとのこと。それ以外にも、ネパールからのお礼状ハガキや活動報告会への招待など、プロジェクトとのつながりを感じることができる様々なリターンが予定されています。
少しでも興味を持った方、共感できると感じた方は、一度「READYFOR?」内のページ『化粧の力で、ネパールの女性に【輝き】を。』を覗いてみてはいかがでしょうか?
ネパールでの活動、震災、そして今。
Coffret Project代表 向田麻衣さんインタビュー
今回のチャレンジは、プロジェクトとして、そして代表の向田さんにとって、1つの大きな節目と言えるものになりそうです。チャレンジに至るまでの経緯、そして現在の心境について、向田さんにお話を聞きました。
「間違っていない」という自信を糧に
この1年の活動で、化粧の、女性に対するエンパワーメントにすごく自信が持てました。
と向田さん。その「自信」を持つに至るまでには、被災地での活動が大きかったと言います。
これまで、ネパールやトルコなど、いろいろなところでワークショップをやってきたんですが、なんとなく手探りの状態でした。周りの人にも、「お化粧して、なんの意味があるの?」なんて言われたこともあるんです。
でも、石巻や福島で、これまでにないほどたくさんの人のお化粧をして、その場の空気が変わってみんなが笑顔になっていくのを見ていたら、「あ、やっぱりこれは間違っていない!」と自信が持てたんです。これ自体がひとつの幸せの形であることが実感できて、何と言うか、吹っ切れたんですよね。
復興支援活動を通して迷いが無くなったという向田さんは、半年ほど前からネパールでの職業訓練の計画を始めました。今年1月には、知人の紹介でシェルターに初めて訪れ、いつもと同じように化粧ワークショップを実施。しかし、彼女たちの反応は、これまでに体験したことの無いものでした。
そのときは一人ひとりメイクをしたのですが、彼女たちは身体を触られることにすごく抵抗があって、ちょっと私が触れただけで、「ビクッ」て反応をされました。だからゆっくり時間をかけて力が抜けるタイミングを待ってから、メイクを始めて……。これまでで一番緊張した経験だったかもしれません。
でも、そのときある一人の女性が発した言葉で、向田さんは職業訓練の取り組みへの確信を得ます。
ワークショップ中に、「あなたはこれが仕事なの?いいな、こういう仕事をやってみたい」と言われました。ネパールは途上国ですが、「きれいになりたい」という女性の情熱はすごくて、美容のためには高いお金も払うんです。サロンもたくさんあるので、メイクアップの職業訓練のニーズはすごくあると感じています。
訓練を受けたい気持ちはあっても、シェルターで暮らす彼女たちの前には、高い授業料という壁が立ちはだかります。Coffret Projectは、それを無償で提供することで、彼女たちの想いを叶え、自立を支援したいと考えているのです。
“コフレ・ブランド”を確立し、本当の意味の「自立」へ
今回の職業訓練では、日本や海外から、第一線で活躍するメイクアップ・アーティストのみなさんを講師に迎えるスペシャルなプログラムを予定しています。そこには、シェルターにいる女性の厳しい現実を見据え、本当の意味での自立をしてほしい、と願う向田さんの想いがあります。
彼女たちのほとんどがエイズに感染していて、一生薬を飲まなければやっていけません。普通の女性よりもお金がかかるので、多くの人がまた売春に戻ってしまうんです。
だから私たちは、普通よりも高収入が得られる仕事に就けるような訓練を行います。「Coffret Projectの訓練を受けた」ということがブランドになれば、彼女たちも自信を持って生きていけると思うのです。
また、メイクアップ・アーティストの持つ「魔法」の力を借りることも、彼らを呼ぶことの大きな意味です。
第一線で活躍するアーティストの力は、本当にすごくて、化粧をされた方が、魔法にかかったように変わるんです。今回はネパールの女性に、その魔法をかけてもらいたいな、と思っています。
アーティストのみなさんの美意識や人生観も伝えられたらいいですね。将来的に、ネパール人の女性で、パリコレのメイクをする人が出て来るかもしれません!
金銭面だけではなく、精神面も備わって、初めて本当の「自立」につながる。コフレ・ブランドがそれを後押し、世界に羽ばたく女性を輩出する日も、そう遠くないかもしれません。
「地域に根ざす」という覚悟を携えて
実は今回の職業訓練、プロジェクトとしての大きな目標のための「ファーストステップ」という位置づけです。向田さんは、今年の10月頃を目標に、ネパールに職業訓練も行う常設のサロンをオープンすることを目指して動き始めています。サロンでは、定期的なワークショップを行うとともに、年に1〜2度のペースで職業訓練を実施。さらに、常駐するスタッフを雇って地域に開き、女性たちが気軽に集まれるコミュニティ形成の場としても活用していく予定です。
サロンのオープンは、「地域に根ざしていく」という、プロジェクトとしての大きな覚悟です。これまでの不定期のイベントだけではなく、草の根的な活動を継続していくためには、やはり拠点が必要だと感じて決断しました。
それに、被災地支援を通してコミュニティの力を実感したことも大きかったです。「そこに行けばいつでも開いている」という安心感の元に、女性のみなさんが集い、困ったときに話をすることができる場所をつくっていきたいです。
まだまだ続く向田さんの夢。最後に改めて、今の想いを聞きました。
震災後、プロジェクトもそうですが、自分自身も大きく変わったと感じています。元々私は切実に生きているつもりでしたが、そうでもなかったな、って。本当に人は死んじゃうんだ、明日かもしれないんだ、と気付いて、「毎日チャレンジしよう」と思いました。
どこか安心したいし、「守りたい」という意識が働くこともありますが、できるならたくさんの人と一緒に、見たことも無いものを見たい。できるかも分からない大きなチャレンジであることは十分わかっていますが、人生はいつ終わるか分からないし、多分一度しかなさそうなので(笑)やってみよう、と思います。
大きな覚悟を携えて、向田さんのチャレンジはこれからも続いていきます。様々な経験を積み、活動の形を変えながらも、学生時代からの想いを貫き続ける。そんな向田さんの姿こそが、出会ったたくさんの女性に、勇気や自信を与えていくのだと、強く感じます。
向田さんの自分ごとから始まったマイプロジェクト「Coffret Project」。greenz.jpでは、これからも応援し続けていきたいと思います。
「READYFOR?」に参加してCoffret Projectを応援しよう!
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