妹が多発性硬化症(運動麻痺や反射障害などを症状とする神経系疾患。特定疾患に指定されている)で亡くなったその年、私も妹と同じ病気と診断されました。その頃、私は建築家としてキャリアを積んでいて、仕事は順調でした。
しかし、徐々に病気は私を蝕み、ついには、車椅子なしでは動けなくなりました。そして働けなくなり、絶望に暮れていたそのときに思いついたのです。時間はたっぷりあるのだから、何か私が生きた証を残そう。車椅子の人も楽しめる服を作ろうじゃないの。
これが、車椅子の人も楽しめる服を作るブランド「Xeni」のおこった由来です。
デザイナーであるアン・オリバーさんがこのように思いついたのが2010年。彼女はすぐさまセントラル・セント・マーチンスに入学し、オリジナルレーベルを創設する人のためのコースで服作りを学びました。現在は、ロンドンの信頼すべきテーラーで生産を行なっています。伝統のロンドンテーラリングというのがいいですね!
では、具体的にはどのようなデザインになっているのでしょうか?
車椅子に座った場合、人の目が多く向けられるのはバストから上であることに注目し、トップス部分のデザインを華やかに仕上げています。座り続けていると、どうしても胴回りに肉がつきがちになるため、シルエットはゆったりと仕上げ、肉感が出ないようにしてあります。
普段着だけでなくドレスもあります。
ボトムスに関しては、座り続けていると、ぐしゃぐしゃとお尻の部分にスカートの布が溜まってくるのを解消すべく、後ろ側は、お尻部分から下を大胆にカットアップ。
パンツの場合は、義足や医療用器具が目立たないよう、同じくシルエットをゆったりととりつつ、くるぶしより下までストンとまっすぐ落ちるようなラインにデザインし、器具が目立たないように配慮しています。
ほかにも、ボタンの代わりに磁石を使用することで車椅子の人が一人で着やすいようにと工夫が凝らしてあります。ちなみにマグネットをボタン代わりに使用すると、ペースメーカーを着用している方は着ることができないので、まだ改良の余地があるようです。
今後は、さらにトップスまわりを華やかに演出できるよう、ジュエリーの製作も行なっていくそう。また将来的には、車椅子に座ったとき、膝のうえに収まりやすく、携帯電話や鍵などが取り出しやすいバッグなど、アクセサリー類も手がけていきたいとのこと。
当事者でないかぎり、何がニーズか分かりません。これまでなかなか気づかれることのなかったニーズに応えていきたい
と話すアンさん。
障がいを持っている当事者自らが立ち上がり、手がけているブランドというのは、私の知る限りでも初めて聞きます。きっとこのブランドから、新しい課題の乗り越え方が見えてくるはずです。
「Xeni」のサイトをチェック!
日本では”かっこいい車いす用モビリティ”が登場!