greenz.jpが注目する活動のひとつファブラボ(FabLab)。かのアメリカ合衆国オバマ大統領も「20世紀の図書館のように、21世紀はひとつの街にひとつのファブラボを作っていきたい」と熱烈ラブコールを送る注目のプロジェクトです。
今進行中のグリーンズの”これからのものづくり”を考えるための問いを集める新企画「greenz TOY」でもご登場いただきましたが、こちらでもFabLab Japan発起人である慶應義塾大学准教授の田中浩也さんにお話を伺いつつ、ファブラボ筑波と並び、日本における第一号となるファブラボ鎌倉にもお邪魔させていただきました!
蔵を改装したFabLab Kamakura
15年に一度の時代の変化
FabLabとは、「3次元プリンタやカッティングマシンなどの工作機械を備えたオープンな市民工房と、その世界的なネットワーク」であり、「大量生産やマーケットの論理に制約されていた「ものづくり」を解放し、市民ひとりひとりが自ら欲しいものをつくりだせるようになる社会」の実現を目標に掲げています。現在、既に30か国以上70か所以上の街にFabLabが存在しているのです。
FabLab Japan 発起人の田中浩也さん
FabLab Japan発起人である田中さんは、FabLabの活動について「パーソナルファブリケーション」という興味深いキーワードを使って説明を始めて下さいました。
世の中には不思議な周期があるもので、15年に1度、技術と社会が出会うときが来るんです。技術が専門家のみの間でもてはやされていた状態から、市民のために解放されて世の中に浸透していくという「転換」がおこる。
僕が生まれてから、第一の波は1980年のパーソナルコンピューター、第2の波は1995年のインターネットでした。そして2010年代には普通の人があらゆるプロダクトを作れるようになると感じています。それを僕たちは『パーソナルファブリケーション』と呼んでいます。
なんでも、デジタルデータから3次元のプロダクトを作れる3次元プリンタは、現在、一番安いもので5万円で購入できるとのこと! これが一家に一台あれば、壊れてしまった洗濯機のパイプの部品なんかもその場で作れてしまうのです!
かつて、家にテレビやミシンがやってきたときのワクワクする感じと似ていますよね。3次元プリンタが人々の生活に入り込むことで、毎日はどんな風に変わるのか。そんなことにも思いを馳せながらこの活動を推進しています。
3次元プリンタ、レーザーカッター、電子編み機などの工作機械がズラリ
産業廃棄物にも旬がある
ファブラボ鎌倉には、3次元プリンタ、レーザーカッター、電子編み機などの工作機械のほかに、ハンドクラフト用の電子工作工具類や木工工具、各種文房具がそろえられていて、ほとんどのプロダクトを作ることができます。また、木工版や布などの材料に加え、ナカダイマテリアルという産業廃棄物回収を専門にする会社から廃棄物を譲り受け、リミックスして新しいものを作り出すというユニークな試みも実行中。
地デジ化のときはブラウン管のテレビが多く出たり、社会の流れに応じて産業廃棄物にも『旬』があるんですよ。例えば今では無線LANが広がり必要がなくなったLANケーブルからハンモックを作っています。(ファブラボ鎌倉:渡辺ゆうか)
ニットも作れちゃう!
DIYからDIWOへ!
田中さんにファブラボ鎌倉の展望を伺うと、「街角のカフェ×工作室のようなイメージ」と語ってくださいました。
街の中にとけ込んでいて、気軽に見学が出来て、一緒にもの作りも楽しめる。そういう意味では公民館のようなニュアンスがくっつく部分もあるかな。最近は、子どもから大人まで鎌倉に住む人が興味を持ってふらりと訪れてくれたり、地元の職人さんも遊びに訪れてくれるようになったんですよ。
鎌倉の持つ伝統素材とFabLabの先端技術がうまく合わさって、さらに地元の人たちが作り手として加わってくれて、ゆくゆくは鎌倉の街で使う街灯や市バスのバス停などもFabLabで作られるようになれば面白いなと思います。
集まってつくる。それはもはや、DIY(Do It Yourself)の延長の「パーソナル・ファブリケーション」ではなくて、DIWO(Do It With Others)の延長の「ソーシャル・ファブリケーション」だと実感しているんです。
「自分でつくる」だけでなく「誰かと一緒につくる」
ファブラボ鎌倉がハブとなって生まれる、新しいものづくりの形。様々な人が集まり、それぞれが持つ知識や情報を交換しながら、自らの手でものを創り出し、それが街や人々の暮らしに還元されていくのでしょう。
ついにものづくりも誰でもできる時代へ。今回のファブラボ鎌倉見学を通して、そんな、ものづくりを取りまく新しい時代のうごめきを感じることができました。あなたならここで何をつくってみたいますか?ぜひ、教えてください!
(Text: 清水麻代)
田中浩也さんが考えたい”これからのものづくり”の問いかけをみてみよう