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「残念なくらい簡単でした!」42,800円ではじめる電気自給プロジェクト「藤野電力」 [イベントレポート]

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

3.11以降、自然エネルギーを利用した電気を使って生活していきたいと、改めて考えた人は多いのではないでしょうか。けれども実際には、お金はかかるし仕組みもよくわからない…という人がほとんどでは?

神奈川県の山間部に位置する旧藤野町(相模原市緑区)では、同じような思いをもった住民たちによって「藤野電力」なる活動が始まりました。1月28日に開催されたワークショップの様子を、藤野在住ライターまんぼうが地産地消でご紹介します!

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藤野電力では“自然の力を借りることで、エネルギーは自分たちの手で作ることができる!”ということを実感してもらおうと、簡単に作れて実用的なミニ太陽光発電システムの組み立てワークショップを毎月開催しています。

「藤野電力」って?

藤野電力は、原発事故のあと、トランジション藤野のワーキンググループとして誕生しました。今まで当たり前に電力会社に頼っていた電気だけれど、本当は自分たちでやれることがあるのではないかと話し合いの場をもったことがきっかけでした。自分たちが使うエネルギーの在り方を考えたり、里山の資源を見直したり、自然エネルギーの楽しさや可能性を知ることから始めたり。

藤野電力の活動は、自立分散型の自然エネルギーに地域で取り組み、それによって楽しく豊かな地域の未来を育むことを目指しています。

たとえば2011年8月に100%自家発電で開催された地元の廃校アートフェス「ひかり祭り」では、自然エネルギーの電源調達や配線のレイアウトをすべて担当しました。その後も東北のイベント支援や地元のお祭りなどで大小さまざまな電力供給をおこなっています。自分たちで作った電気を使ってイベントを盛りたてるなんて、こんなに楽しくてワクワクすることってありませんよね。いきなり生活のすべてを自然エネルギーに変えることは無理でも、できることはある。そのことを、彼ら自身も日々身をもって体感しています。

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2003年3月末に閉校した旧牧郷小学校を再生した空間「牧郷ラボ」(まきさとラボ)で開催された1月28日のワークショップの参加者は7組。うち1組は復習として参加した地元のリピーター。そのほかの参加者はインターネットや新聞で情報を知り、東京、千葉、埼玉など関東各地からやってきていました。

組立基本キットは

・50Wソーラーパネル
・チャージコントローラー(ソーラーパネルから電池に効率良くチャージしたり、過充電を防ぐ装置)
・インバーター(家庭用電気製品を使えるようにする装置)
・シガーソケット(クルマ用のiPhone充電コードなどを使えるようにする装置)
・バッテリー

で、価格はワークショップ代込みの42,800円。自分の機器を持ち込んで組み立てる場合は2800円、見学のみは1000円で参加することができます。基本セットでだいたいノートパソコンが4~6時間、蛍光灯形電球が10~15時間利用可能です。

組み立て作業ガイドが配られて、簡単な説明のあと、藤野電力のメンバー何人かが会場を回り、一緒に作業をしてくれます。電線をカットし、端子を繋ぎ、各機器を順番に繋げていく。作業としてはじつはたったこれだけ。覚えてしまえば、家でも簡単に作れます。とはいっても繋ぐ順番やパーツを間違えたら電気は生まれませんし、ショートしたりといった事故の原因にもなります。みなさん周囲の人たちと相談しながら、慎重に作業を進めていました。

午後になるといよいよ各機器が繋がります。電圧をテスターで確認し、問題がなければDC(直流)12VのLED電球を繋いでみます。繋いだ瞬間、パッとライトがつくと「おおー!」と思わず感嘆の声が。その後は携帯電話の充電をしてみたり、会場にあった業務用扇風機を回してみたりとみなさん思い思いに自然エネルギーを楽しんでいました。

ワークショップ参加者の感想

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せっかくなので、参加者からも感想をお聞きしました。

神奈川県平塚市の吉野さんは、新聞の記事でワークショップのことを知りました。もともと車庫の照明用に小さなソーラーライトを利用していましたが、もっと大きなものを自分たちで作ってみたいと思い、息子さんふたりを誘って参加しました。

もっと難しいのかなと思っていたけれど簡単でした。ちょっと残念だったぐらい(笑)。思いのほかパワーがあるとわかったので、何に使うかはこれから考えたいです。

千葉県市川市から参加した草間さんは、同じ旧藤野町内にあるパーマカルチャーセンタージャパンの元受講生。

自給自足を目指してきたけれど、電力に関しては盲点で何も知らないで生きてきたような気がします。震災があってよけいにそう思うようになりました。キットさえちゃんと用意すれば簡単にできるんだなとわかりました。

唯一の女性参加者、埼玉県志木市の宮原さんは、菜園&自然エネルギー付賃貸住宅を提供する不動産会社や農業支援の会社に関わっています。できることはなるべく自分たちでやろうと提案していきたいと考え、自然エネルギーの勉強や太陽光発電の情報収集のために参加しました。

理論はわかりきっていないと思うんですけど、思ったより簡単だった印象です。電気がついたら、やっぱりすごく嬉しかったですね。

とにっこり。

みなさんが共通して言っていたのが「意外と簡単だった」ということ。エネルギーってとっても巨大で複雑なものと思いがちですが、仕組みがわかれば自分たちの手で作ることもそれほど難しいことではありません。そうなると、今まで遠い存在だったエネルギーが身近に感じられるようになるから不思議です。

藤野電力の今後の展開は?

最後に、藤野電力のコアメンバー小田嶋哲也さんに今後の展開についてお聞きしました。

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具体的な取り組みとしては大きく4つを考えています。

ひとつはイベント自体を自然エネルギーでやろうという試みです。これは自然エネルギーでこんなことができるというデモンストレーションの場にもなると思っています。ただ、もう少し装備を強化しないと大きなイベントはできないのでそれがこれからの課題ですね。

ふたつめは今日のようなワークショップの取り組みです。自然エネルギーでこんなことができるよと知ってもらったあとに、それは自分たちでもできるんだよと呼びかける場所がワークショップだと思っています。今日でワークショップは5回目だったんですけど、参加者が持って帰った発電キットのパネルの出力を足し上げるとすでに5kwぐらいになるんです。すごいですよね。小さなものでも積み上げていくとそのぐらいの電力量になるんだって僕も驚いているんです。

3つめは個人のお宅に直接、発電キットを施工すること。これはすでに工事中のものもあります。ワークショップのキットとしかけはまったく同じで、100Wぐらいのパネルを屋根にのっけて、電力会社のコンセントとソーラーからきてるコンセントを隣合わせで設置します。普段はソーラーからきてるコンセントを使ってもらい、バッテリーが切れてテレビが映らなくなったら電力会社のコンセントに差し替えてもらう(笑)。何百万円もかけて大掛かりにやるのではなくて、みんなが身の丈で実現可能なことを提案していきたいと思っています。

4つめは『市民発電所を作りたい』っていう、取り組みというより夢ですね。太陽光に限らず、自然の中にはいろいろなエネルギーが満ちあふれています。それをどう自然と調和しながら取り出すことができるか。自然から取り出したエネルギーを使わせてもらって、それをまた自然に帰せるような循環を感じられる発電所を作りたいです。

小さな動きがやがては大きな動きへ。市民の手によるエネルギーの地産地消に向けて、藤野電力は自分たちにできることを、日々コツコツと積み上げているのです。

藤野電力の次回ワークショップは?

さて。藤野電力の次回ワークショップは2月25日(土)。その後も月に1回、第4土曜日に定期的に開催予定です。私が参加した1月28日は、2階のカフェスペースで旧藤野町の地域通貨「よろづや」の交流会が同時開催されていました。地元の料理自慢が腕をふるうおいしいランチが用意されていて、お昼休憩では参加者もこちらのカフェスペースで地元の方々との交流を楽しみました。2月以降もワンディシェフ形式の「エネルギーカフェ」がオープン。地元の野菜を使った簡単な軽食のほか、太陽光のエネルギーを使って入れたオーガニックコーヒーなどが用意されます。

ワークショップでエネルギーについて学ぶと同時に、同じ関心をもつ人々との交流を深めることができる嬉しい心配りです。エネルギーを身近に感じたい方、自然エネルギーを生活に取り入れていきたい方はぜひご参加を!

藤野電力についてもっと知ろう!