約10年東京でコレクティブハウスの企画・運営を手がけてきたコレクティブハウジング社(以降「CHC」)によって開催された「コレクティブハウジング全国大会」。レポート第二弾では、2日目3日目のカンファレンスの様子をお伝えします!
まずはCHCの初代代表であり、日本のコレクティブハウジング研究の第一人者でもある小谷部育子先生による基調講演。昨年ストックホルムで開催されたコレクティブハウジング国際会議のご報告から始まり、コレクティブハウジングの現代的な定義や日本のコミュニティの在り方についてお話いただきました。コレクティブハウジングについて調べてみたいという方は先生の著書『コレクティブハウジングで暮らそう―成熟社会のライフスタイルと住まいの選択』がおすすめです。
続いて、実際にコレクティブハウスに住む居住者のみなさまによるパネルディスカッション(レポート第一弾をご参照ください)。
わたしにとってここでの暮らし方は”分け合う”というよりも”持ち寄る”という感覚が強いです。
個人の快適さや利便性を追求した結果、わたしたちがどうなっているかがわかったのが311だったと思う。みなさんは何を選択していきたいですか?
といった言葉が印象的でした。
次に、長年CHCでコーディネーターを務められてきた宮前眞理子氏と狩野三枝氏よるパネルディスカッション。居住(希望)者と事業主とを、第三者的な立場から繋ぎながら事業を進めていくコーディネーター。異なる立場の人々同士の関係を築いていく上で重視されていくことについてお話していただけました。
ひとはひとりとしてカウントされる。コレクティブハウスのコミュニティは、ひとりひとり全く違う価値観の人々の集まりです。家族単位で意見がまとまっているということもありません。その差異を認識した上で、どうするか。それをいつも考えさせられます。
物事を進めるときは、多数決はとらずにとことん話し合います。話し合いながら、色々試行錯誤していくことで、深い信頼関係が生まれます。わたしたちがハウスの準備段階からワークショップを多用するのは、そのためです。
あらゆる問題は、コミュニケーションの不全からくるのだと思います。伝えることと聞くことを丁寧に行うようにしています。
こういった姿勢は、どんな場においても重要になってくると感じました。
2日目の基調講演では、SHIEN(支援)研究会の舘岡康雄先生による「SHIEN(支援)マネジメント」のお話。
従来社会を動かしてきたのは、過去を規範とする「リザルトパラダイム」により、管理する側される側という関係性で物事が動いていたが、21世紀の社会を動かしてゆくのは、相互に支援し合うという関係性を深める「プロセスパラダイム」になる
支援はするよりも、されることの方が難しい。「支援してもらえる能力」つまり、自分を開示する能力、相手の話をよく聞く能力が求められている
「そして、そういった関係性を築くことが、まさにコレクティブハウスの実践」なのだということです。
「コミュニティをつむぐ開かれた場の力」パネルディスカッションでは、芝の家プロジェクトファシリテータ である坂倉杏介さんと、経堂さばの湯の店主である須田泰成さんより、それぞれの実践の中で人はどのように繋がっていくのかという点についてお話を伺いました。
おふたりとも、地域に開かれた場を通じて人々が繋がっていくことは、本来自然な風景であるという感覚をお持ちのようでした。日本家屋の縁側にみられるように、日常的に様々な人が交流する場は、昔から伝わる日本的な知恵なのだと思いました。
続いて、「人を中心においたマネジメント」というテーマでパネルディスカッション。登壇してくださったのは指揮者のいない室内オーケストラ・東京アカデミーオーケストラの室住淳一さんとしぜんの国保育園園長である齊藤紘良さん。
指揮者がいない中での演奏の練習や組織運営、しぜんの国でのユニークな教育機会や職員のみなさまとの関係作りについてうかがう中でも、指揮する人間がいなくても組織が良い方向に動いていく過程についてのお話は、大変興味深かったです。
そしてパクチーハウス東京および東京発コワーキングスペース PAX Coworkingのチーフカタリストである佐谷恭さんからは、コワーキングという働き方の紹介がありました。
その後、シェアする暮らしフェアでは、ぱれっとの家「いこっと」、たぬき村、里山長屋暮らし、タウンキッチン、コレクティブハウス居住希望者の会、CHC社各プロジェクト(左近山 / 道志村 / 東北支援 PJ)のみなさまに、それぞれの活動紹介をしていただきました。
それぞれの具体的な活動内容についてはCHC社が運営するシェアする暮らしのポータルサイトでも知ることができます。
そして最終日には、2日間にわたって行われたワーキンググループによるディスカッション内容の発表。参加者全員が、以下のテーマのグループに分かれ、熱く議論を交わしました。それぞれが当事者としてこれからの暮らし方や人と人との関係性の在り方について真剣に考えました。
CHC社としてははじめて社会に開かれた形で開催した今回の全国大会。コレクティブハウスという選択肢のみを推奨するのではなく、今の社会に必要な人々の暮らし方について、参加者全員で学び、対話を通じて考える貴重な機会となりました。
今回の全国大会で築かれた参加者同士の世代や地域を越えた繋がりは、今後のそれぞれの活動を通じて、多くの人々の暮らしがよりよくなっていくでしょう。
急速な少子高齢化、家族形態とライフスタイルの多様化が進む中、あらゆる人が生き生きと自分らしい生活をすることを目的としたコレクティブハウジング。震災を経験し、人との繋がりの大切さが再認識される様になった今、こうした古くて新しい暮らし方はますます求められてくるでしょう。今後コレクティブハウスが国内に増えていくのを期待すると同時に、コレクティブハウジングという暮らしのあり方から、わたしたちも自身の生活を見つめ直してみたいですね。
「コレクティブハウジング全国大会」レポート第一弾はコチラ
「コレクティブな」暮らしについてもっと知りたいという方は。