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カンヌ国際クリエイティブ祭2011受賞の社会派広告(2)Direct Lions

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今日は、消費者と関係性を築きながら何らかの行動を促すことを意図した広告を評価するダイレクト部門の受賞作からご紹介します。

【GOLD】

●BURMA / HUMAN RIGHTS WATCH

2010年、ビルマで総選挙がありました。でもビルマでは2100人あまりもの僧侶や芸術家、ジャーナリストやアクティビストが政治犯として刑務所に入れられたままで、その選挙は公正だと言えるものではありませんでした。そこでヒューマンライツウォッチは政治犯を解放するために、国連にアピールするアクションを実施しました。

ニューヨークのグランドセントラル駅に、縦2.1メートル、横5.5メートルもの立体物を設置。そこには政治犯として捕らえられたたくさんのビルマの人びとをイメージさせる画像があり、その人びとを囲う檻のようなものがあります。その檻は、実はペンになっています。駅を通る人がそのペンを取り署名をすることで、政治犯として捕らえられた人を解放する疑似体験ができるようになっているのでです。

ビルマの総選挙はアメリカはもちろん世界の国々でもそれほど注目されていなかったのですが、このアクションは大きな話題になり多くのメディアに取り上げられました。その結果、世界中から何万もの署名が集まり、国連のリーダーたちに陳情書を送る動きにつながっただけでなく、プラハやブリュッセルでもこの展示が行なわれることになりました。そして、何よりの成果は、この後アウンサン・スーチーさんを含む150人以上の政治犯とされた人たちが解放されたということです。

【SILVER】

●SPARK HOPE MATCHBOOK / ROCK 4 AIDS

南アフリカで毎年開かれる「ROCK 4 AIDS」は、学校でエイズの防止を啓蒙することが目的で行われるライブイベントです。資金が乏しいなかイベントを成功させるために、昨年も主催者側は国内外の有名なアーティストに出演をお願いするダイレクトメールを送りました。前回はギターピックでしたが、今回はドラムスティックです。それも、ただのドラムスティックではありません。

大きなマッチ箱に、ドラムスティックがマッチのように入っているのです。そこには、「エイズは炎のように広まるが、希望のメッセージも簡単に広げることができる」というメッセージが込められていました。この志もサイズも大きなダイレクトメールは功を奏し、送ったミュージシャン4組のうち3組がライブに出演することになりました。

【BRONZE】

●THE VOICE / REPORTERS WITHOUT BORDERS

これは国境なき記者団がベルギーで実施した広告です。ベルギーでは多くの人が報道の自由は当たり前のことのように思っていました。でも世界にはジャーナリストが命の危険にさらされることが少なくありません。そこでジャーナリズムが真実を伝える必要性と、その自由を呼びかけるために使ったのがAR技術を使った新聞広告です。

ページの隅にあるQRコードをiPhoneでスキャンして、カダフィ大佐やプーチン大統領、アフマディネジャド大統領の口の上にのせると、現地のジャーナリストの声でその国の真実が語られるようになっています。そしてリンクを張ってあるWEBサイトから「報道の自由のための1000の写真」という本を買うことで、国境なき記者団への寄付ができるような仕組みになっていました。

●PHOTOSHOOTING / WWF

こちらも、以前greenzで紹介したAR広告です。密猟により、シベリアタイガーは絶滅の危機に瀕しています。ロシアで20年ほど前は3000頭いたシベリアタイガーは、いまでは500頭に。そこでロシアのWWFは、密猟への関心を高めるために、アパレルショップの店頭やWEBでTシャツを使ったAR広告を実施しました。QRコードがついたオリジナルのTシャツを着て店頭のディスプレイやカメラがついたパソコンの前に立つと、まるで自分が銃弾に撃たれるような映像が現れるのです。

密猟される痛み、苦しみ、無念さを疑似体験させるようにしたんですね。ブロガーや限られた店頭で実施されたアクションでしたが、ソーシャルメディアを通して全国的に知られるようになり、後に行われたサミットでシベリアタイガーの保護はロシアが国を挙げて取り組むべき最重要事項のリストに加えられることになりました。

●DOGGELGANGER / DOGGELGANGER

ペットフードブランドのぺディグリーは、ここ数年にわたって捨て犬の問題に取り組んできました。その活動の3年目にあたり、これまで以上の数の捨て犬を救うべく、最新のIT技術を使ったキャンペーンをニュージーランドで実施しました。パソコンのカメラを使って自分の顔をウェブサイトに取り込むと、プログラムがその顔を解析。そして、自分の顔に似ている犬が表示され、その犬がいる施設までの案内が表示されるようになっています。

自分に似た犬、とても気になりますよね。この広告のインサイトは「見つめられたら、会わずにいられない」というもの。人の感情をくすぐるインサイトの発見と、「もっとも幸福な犬と飼い主のペアは、特徴、性格、体型さえ似ている」という研究、そして最新のテクノロジーが実現した、とてもハッピーな広告だと思います。

●REPAY FOR GOOD / UNICEF

新しい寄付のかたちは、greenzでもたびたび取り上げられるテーマです。ドイツのユニセフがつくった寄付アプリは、善意だけでなく人間のダメなところに注目したユニークなものでした。私たちは日ごろ、よく小銭を友だちに貸しますよね。「いつでもいいよ」なんて言いながら。そうして貸した小銭は、返ってこないことがよくあります。借りたほうが忘れていても、貸した方はちゃんと覚えてるもんなんですよね。ユニセフはこうした行動に着目しました。

アプリを立ち上げてお金を貸した人の名前をアドレスから選び、貸した金額を入力。すると、こんなメッセージがつくられ、送られるようになっています。「やあ、○○。君に貸してた○○ユーロだけど、私に返さなくてもいいよ。その代わり、君にはユニセフの『Pepay for good』に参加してほしいんだ。つまり、貸してた金額をユニセフの○○プロジェクトに寄付してほしいってことなんだけど、下にあるリンクをクリックしてみて。よろしくね。」こんなメールが送られてきたら、思わず苦笑して、ついつい寄付しちゃうかも知れませんね。

●OPERATION CHRISTMAS / MINISTERIO DE DEFENSA NACIONAL

コロンビアのジャングルには、まだたくさんのゲリラ兵がいるといわれています。イギリス国防省はゲリラ兵を解隊させたいと考えていましたが、彼らはジャングルの奥深くに隠れているので、かんたんにはメッセージを届けられませんでした。そこでイギリス国防省が着目したのがクリスマス。クリスマスは家族や愛する人と離れて行軍しているゲリラ兵の心を揺さぶるチャンスだと考えたのです。そして高い木を選び、そこに電飾を取り付けました。クリスマスを前にした夜に電気がつくと、このようなコピーが書かれた布が目に入るようになっています。

「もしこのジャングルにクリスマスが訪れたら、あなたたちは帰ることができます。ゲリラをやめてください。クリスマスに不可能はない。」このエモーショナルなアクションはゲリラ兵の心に訴え、前の年よりも3割ゲリラをやめる兵士が増えたそうです。

●SHARE YOUR PARENTS / STUDIO BRUSSELS

ベルギーのラジオ局Studi Brusselsは、赤十字とのチャリティイベント「Music for Life」を実施しました。これは両親をエイズで失くした孤児たちを支えるイベントなのですが、チャリティの方法が実にユニークでした。まず、ターゲットを子どもを持つ親に絞ったのです。子育てをしている人なら、自分と同じ年頃の子どもを助けたいと思う気持ちがひとしおですからね。親にアプローチするメディアとしてStudio Brusselsが使ったのが「連絡帳」。子どもたちが日常親に見せてサインをもらう連絡帳に、チャリティイベントのステッカーを貼ってもらったんです。

そのステッカーに書かれた内容がスゴい。子どもたちに自分の親をエイズ孤児とシェアすることをお願いし、親には孤児の親となることと寄付をお願いするメッセージが書かれていたのです。このステッカーは14万枚も配布され、約1,200人の子どもが自分の両親をオンラインで「シェア・ペアレンツ」として推薦しました。たくさんの推薦のなかから一組の両親が選ばれ、スワジランドで子どもたちと楽しい一日を過ごしました。後にライブイベントも実施され、シェア・ペアレンツの体験を多くの人が共有し、たくさんの寄付を集めることにつながったそうです。

次回はPR部門の受賞作からご紹介します。

※これまでに紹介した以下の部門での受賞作は省いています。
Promo & Activation Lions
☆翻訳協力: @t_saori