病気や怪我が原因で失った手足を補うための義肢は、従来、職人によるオーダーメードがほとんどでしたが、最近では、「one size fits all(ワンサイズですべてがフィット)」という大量生産が主流。しかし、ユーザによって、体型はもとより、好みや性格、ライフスタイルまで、様々に異なり、大量生産型の義肢は、細かなニーズに応えられていないのが難でした。そこで、先端技術を駆使し、ユーザ一人ひとりに合った義肢づくりに取り組んでいる会社があります。
米サンフランシスコの「Bespoke Innovations」は、工業デザイナーのScott Summit氏と整形外科医のKenneth Trauner博士によって設立された、義肢の設計・製造を手がけるベンチャー企業。伝統的な職人によるオーダーメイドと、生産技術を駆使した大量生産の”イイとこどり”によって、各ユーザのニーズに合った安価な義肢づくりを目指しています。
具体的には、3Dプリンティングなど、先端技術を活用し、各ユーザの体型、感覚に合った義肢を、短期間で仕上げることに成功。その分、デザイン過程では、ユーザとデザイナーとのコミュニケーションにじっくりと時間をかけ、サッカーをするのが好きな人、バイクを自由に乗りたい人など、ユーザのライフスタイルや好みに応じて、様々なバリエーションを提案し、製品にしていきます。中には、ミッドゼンチュリー風の義肢や、タトゥー入りの義肢などもあるそうですよ。
この会社では、義肢は単なる“道具”ではなく、ユーザの個性を表すものと考えているそう。ユーザ基調のデザインを徹底し、ファッションやクルマの好みさえも、できるだけデザインに反映させるようにしています。一方、先端技術を積極的に取り入れることで、職人によるオーダーメイドに比べ、価格を10分の1にまで抑えられていることも、大きな特徴です。
最近、「Bespoke Innovations」では、さらなる事業拡大のため、160万米ドル(約1.34億円)の資金調達を開始したとか。義肢というニッチな市場に目を向け、既存の大量生産型のプロダクトでは満たしきれないユーザの細かなニーズを的確に捉え、これを新しいビジネスへと展開させている点は、ソーシャルベンチャーの”お手本”ともいえそうですね。
[via FAST COMPANY]
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