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<勝手に日曜美術館レポート>日本の神さま仏さまに会いに行こう!

前日までの晴天と暑さはどこへやら、大雨が降る肌寒い一日となった去る9月23日(木・祝)、<勝手に日曜美術館>第二弾、「日本の神さま仏さまに会いに行こう!」を開催しました。

そんな悪条件の中、朝10時、目白駅に集いしは、@senri217@kamfam@wonderowen1010@kuro_noriさんの4名です。@kuro_noriさんは友人枠(?)での参加ですが、残るお三方はツイッターで参加表明してくださいました。

目白駅でバスに乗り込み、車窓から雨模様を眺めること5分ほど、「椿山荘前」のバス停で下車して、今日の一つ目の目的地、永青文庫へと歩みを進めます(「神と仏 日本の祈りのかたち」展)。

目白台、永青文庫へと向かう道

目白台、永青文庫へと向かう道

永青文庫のある目白台は、明治時代に山県有朋が邸宅「椿山荘」を構え、かの田中角栄が「目白御殿」を築いた高級住宅地。通りの表情が、いかにもな雰囲気を感じさせてくれます。ちなみに、「椿山荘」は東京の空襲で壊滅的な打撃を受けましたが、その後復興を果たし、いまでは庭園レストラン「椿山荘」と「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」として運営されています。

永青文庫入口

永青文庫入口

永青文庫に到着。ここは、江戸時代、細川家の屋敷の一角でした。そう思って見ると、佇まいにもどことなく威厳を感じます。

永青文庫建物入口

永青文庫建物入口

ここが建物の入り口です。この建物は、明治に入ってから細川侯爵家の家政所(事務所)として使われていたものです。

早速、中を拝見。

展示品は、京都・北野神社の由来を描いた「北野天神縁起絵巻」、祇園祭の様子を描いた「祇園祭礼図絵巻」、賀茂真淵や本居宣長、平田篤胤といった歴史の教科書にも登場する人々の直筆の本、ユーモラスな画風が可愛げな白隠と仙厓の禅画など、見応えのあるものばかり。中でも印象的だったのは、近世細川家の祖・細川幽斎直筆の「出雲国風土記」と「豊後国風土記」です。これは、マンガ『へうげもの』(作・山田芳裕、刊・講談社)にも登場する細川幽斎が、400年以上も前に書いた本。それが目の前にあることに、何とも言えぬ不思議な気持ちになりました。

企画展の展示品以外にも、細川家所蔵の能面や茶器、書画が陳列され、また、細川家の書棚を再現した一角も設けられていました。その一つ一つが大名家の威風を感じさせ、実に見どころ満載です。撮影不可で展示品をお見せ出来ないのが、残念でなりません。

永青文庫サロンルーム

永青文庫サロンルーム

展示を楽しんだ後は、別館のサロンルームで一服。落ち着いた佇まいが何とも上品で優雅です。

新江戸川公園(細川家庭園)

新江戸川公園(細川家庭園)

永青文庫を満喫した後はお隣の新江戸川公園へ。ここは、細川家の庭園をそのまま残した公園です。庭園の雄大さが往時の屋敷の広大さを偲ばせます。

左:水神社、右:胸突坂(水神社の横から見上げた様子)

左:水神社、右:胸突坂(水神社の横から見上げた様子)

新江戸川公園を抜け、神田川沿いを江戸川橋方面へ歩くと、神社を発見。その名も「水神社」。神田上水の水神を祀っていると言われています。
ちなみに、この付近は目白台の外れにあたり、崖地から地下水が滲み出て湧水になっているところが多いようです。水神社がこの地に祀られているのも、そんなことと関係があるのかもしれません。

水神社の横にあるのが「胸突坂」です。「胸を突くほど急な坂」ということで、江戸時代からこの名があるようです。坂の上は永青文庫です。
なお、この一帯は崖地ならでは、他にも多くの坂がありますが、「胸突坂」は坂道大好きタモリさんもお気に入りの坂の一つです。
『タモリのTOKYO坂道美学入門』(著・タモリ、刊・講談社)によると、この坂周辺は、なんでも「予算も日程もない『タモリ倶楽部』の収録で軽井沢ロケを装った場所」(同書94ページ)だそうで、このことからも、この付近の閑静な佇まいぶりが窺えます。

左:『タモリのTOKYO坂道美学入門』(著・タモリ、刊・講談社)、右:芭蕉庵

左:『タモリのTOKYO坂道美学入門』(著・タモリ、刊・講談社)、右:芭蕉庵

胸突坂を挟んで水神社の向かいには、松尾芭蕉と縁のある「関口芭蕉庵」があります。芭蕉は、『おくのほそ道』で有名な俳人ですが、伊賀上野(現在の三重県伊賀市)の下級武士として神田上水の土木工事に関わっていたことがあり、そのときこの地に滞在していたと言われています。「古池や蛙飛び込む水の音」の句をこの地で詠んだという説もありますが、どうも俗説の域を出ないようです。

左:椿山荘前の神田川沿いの小径、右:「やなぎ」のお寿司

左:椿山荘前の神田川沿いの小径、右:「やなぎ」のお寿司

関口芭蕉庵を後にして、神田川沿いを進みます。椿山荘と接する道は、風情たっぷりです。

すっかり道草を食ってしまいましたが、その分お腹はペコペコです。江戸川橋駅近くのお寿司屋さん「やなぎ」でランチセットをいただきました。1人前900円。これだけ並ぶと壮観です。お寿司をおいしくいただいたのはもちろんのこと、板前さんもユニークで、楽しいランチタイムを過ごせました。

お腹も膨れたところで、地下鉄に乗って、今日の二つ目の目的地・大倉集古館へと向かいます(「欣求浄土~ピュアランドを求めて」展)。

六本木一丁目の駅では、greenzライターのecogrooveさんがご家族で合流。何でも息子さんのあゆむ(歩)君が小学校1年生にして仏教マニアなんだとか。楽しみでもあり恐ろしくもあり……。

道源寺坂

道源寺坂

六本木一丁目駅、アークヒルズ側の出口のすぐ近くにあるのが、この「道源寺坂」です。坂の上に「道源寺」があることからこの名が付いています。江戸時代から続く由緒ある坂で、やっぱりタモリさんのお気に入りです(前掲書32ページ)。写真に映るのが、ecogrooveさんとその息子さんのあゆむ君です。
ちなみに、大倉集古館とホテルオークラは、「霊南坂」、「汐見坂」、「江戸見坂」という3つの坂に囲まれています。中でも「霊南坂」は由緒ある坂で、こちらもタモリさんのお気に入りです(同書20ページ)。
東京は実に坂の多い町。そして歴史と情緒が詰まった坂も多いのです。

大倉集古館

大倉集古館

一段と雨が激しくなってきたので道中の写真もほどほどに大倉集古館へ移動します。大倉集古館は、晴れているとこんな雰囲気のところです。雨を逃れるようにいそいそと中へ入ります。

館内には、フライヤーにも使われていたポップな雰囲気漂う「山越阿弥陀図」はじめ、曼荼羅や阿弥陀如来の来迎図など、心を「浄土~the Pure Land~」へと誘ってくれるさまざまな絵図や仏像、経典が展示されていました。
そして、国宝の「普賢菩薩騎象像」(平安時代・12世紀)はこの日もご健在。その柔らかい表情からは、深い慈愛の念が放たれているように感じます。

さてもさても、ありがたい仏さまの功徳もさることながら、館内で驚いたのはあゆむ君の行動でした。ecogrooveさんご夫婦が、解説を読んであゆむ君に丁寧に説明していましたが、「そんなことは知っている」と自分の興味・関心にまっしぐら。何とも将来が楽しみな(?)小学生でした。

大倉集古館のお仁王様

大倉集古館のお仁王様

浄土の魅惑とあゆむ君ショックが覚めやらぬまま館の外へ出てくると、屋外展示のお仁王さんの瞳が随分とつぶらなことを発見し、嬉しくなってパシャリ。これだけキュートだと、悪霊を追い払うどころか、むしろ寄せ付けてしまうのではないかと、全くもって余計な気を揉んでしまいました。

惜しみつつ、かりそめの浄土と別れを告げます。green drinks Tokyoの会場でもある「アークヒルズカフェ」へと移動し、お茶をしながら、歓談と相成りました。

話題の中心はここでももっぱらあゆむ君。水戸黄門と空海から始まって、最近はお城や戦国武将、坂本龍馬にご執心という和文化遍歴を聞いては、こちらが大人気なく張り合うという、何とも珍妙なトークを繰り広げました。

ecogrooveさんご夫妻のお話を伺うと、お二人が和文化好きだったわけでもなく、周囲にそういう友達がいたわけでもなく、あゆむ君は言うなれば「突然変異」。何とも「天才」の香りを感じさせるエピソードです。
とにもかくにも、人と違うことに興味を持てることは、間違いなくそれだけで大きな才能です。あゆむ君の才能が、将来大きく花開くことを神さま仏さまに祈りつつ、この日はお開きを迎えた次第です。

さて、<勝手に日曜美術館>の第二弾レポート、いかがでしたか?
「日本美術なんて古臭くてどうも……」と思う人もいるでしょうが、そういう人にこそ、たまの気晴らしにこういう世界に触れてみてほしいと思っています。きっと、何がしかの新鮮な発見があるはずです。

古きを温ねて(たずねて)新しきを知る

変化の激しい時代だからこそ、「来し方」に虚心に触れ、「行く末」を案ずる視座を得ることがますます必要となってくる。そんなことを改めて感じたこの日のツアーでございました。

次回予告

次回は10月16日(土)開催予定です。
今回の永青文庫でもお目にかかった仙厓の禅画を「出光美術館」でたっぷりと、そして、坂本龍馬が裏書した薩長同盟の覚書が目玉の「公室の文庫(ふみくら)」展@皇居東御苑内「三の丸尚蔵館」を訪ねる予定です。
時間があれば、丸の内古地図ツアーも行いたいと思います。
詳しくは、追ってご案内致しますので、次回も乞うご期待、です。