12/19開催!「WEBメディアと編集、その先にある仕事。」

greenz people ロゴ

原油流出はナイジェリアでも!しかもメキシコ湾を上回る規模

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Jenn Farr

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Jenn Farr

一向に終息の見通しが立たないメキシコ湾の重油流出問題。アメリカが直接にその被害を受けたこと、海洋汚染という目に見えやすい被害が出たことで世界の注目を集めています。しかし、そのメキシコ湾よりもひどいといわれる重油流出問題がすでに起きていたのです! その現場はナイジェリア、何故ナイジェリアで?とお思いでしょうが、本当に深刻な問題が起きているのです。

ナイジェリアと石油と言われてもなかなかピンとこないのではないかと思います。しかしナイジェリアは原油の埋蔵量で世界10位、産出量で9位、輸出量で6位(いずれも2005年のデータ)というアフリカ最大の石油産出国なのです。ナイジェリアが産油国となったのは1956年、1970年代半ばにはOPECに加入したものの、長らく軍事政権下にあり国民にその恩恵が及ぶことはありませんでした。それどころか、ナイジェリアの原油を輸入するオイルメジャーは何十年もの間、沼や川へと流出する原油を放置してきたのでした。

英ガーディアン誌の環境部門の編集者ジョン・ヴィダル氏がその原油流出について、詳細なレポートを掲載していますので、それをご紹介しましょう。全文の日本語訳はこちらで読むことができます。

ヴィダル氏は数年前ニジェールデルタの原油流出現場である沼地を訪れました。

キャッサバの農園を延々と歩き、ついに私たちはナイジェリアの村Otuegweの近くにある原油流出現場の端に到着した。そこには沼地が広がっていた。

今では森も農園もすべてが虹色の油で覆われている。井戸は汚染され住民は途方に暮れるばかりだ。どのくらいの量が漏れ出したのかもわからない。

そして、今年の5月1日に事件は起こりました。

今年の5月1日、アクワ・イボム州でエクソンモバイルのパイプラインが破裂し、デルタ地帯に100万ガロン以上の原油を7日以上も流出させた。地元住民が会社に対し抗議活動を行ったところ、警備員たちから攻撃を受けたという。

しかし、このような事件はナイジェリアでは日常茶飯事なのです。流出事故の起こったIbeno市ではここ2年で10回もの原油流出があったといいます。継続的に流出し続ける原油の影響で清潔な水を得ることも難しくなり、平均寿命は40歳を少し超える程度だといいます。

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Sosialistisk Ungdom - SU

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Sosialistisk Ungdom - SU

どれほどの原油がこれまで流出したかは明らかになっていませんが、記事によれば、

イギリスの世界自然保護基金、国際自然保護連合、ナイジェリア連邦政府代表団とナイジェリア保護基金が2006年にまとめた報告では、150万トンの原油―それはアラスカでの原油タンカー、エクソンバルディーズ号の座礁事故の50倍の公害にあたる―が過去50年の間に流出したと概算した。昨年はアムネスティが、原油流出量は最低でも900万バレルという数字をはじき出し、重大な人権侵害だとして石油会社各社を非難している。

ということです。900万バレルは重さでいうと120万~140万トン(原油の比重によって変化する)、いずれにしろ100万トン以上の原油が流出しているということになります。メキシコ湾の事故による原油の総流出量は50万~85万キロリットル(300万~550万バレル)と推計されているそうなので、それを上回る量が流失していることになります。

これに対するシェル石油の主張も、ヴィダル氏は掲載しています。

シェル社は、デルタ地帯ではナイジェリア政府に協力しており原油流出の98%が武装集団による破壊、窃盗、妨害行為などによるもので、設備の老朽化が原因なのはほんのわずかである主張する。

「平均は175件ですが昨年の原油流出は132件でした。安全弁が壊され、あるパイプなど300もの違法のタップが取り付けられていました。別のものには爆発物が仕掛けられていました。地域住民は私たちが公害を除去しようとしても許可をくれないことがあります。損害賠償を受け取るほうが金になるからでしょう」とスポークスマンは語る。

これを見て私は、エクアドルにおける石油による環境汚染を描いたドキュメンタリー映画『Crude』を思い出しました。この映画ではテキサコ(現在はシェブロン)がエクアドルから撤退する際に汚染を放置したままにしておいた問題を扱っています。ここでテキサコは言い逃れを繰り返し、訴訟を引き伸ばし、責任を逃れようとするのです。

このエクアドルの問題もナイジェリアの問題と同様に日本ではほとんど知られていません。しかも、エクアドルもナイジェリアも日本にとっては債権国でもあります。

この問題はさまざまな問題を包含しています。マスコミの偏向、エネルギーシフトの必要性、公害問題、南北問題… このような事件/事故によって世界の人々が苦しまないためには何をすればいいのか、悲惨な公害も経験し、しかし大量の石油を消費している日本人である私たちができることは、きっとあるはずです。