greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

ゴミ問題を解決するのはパンダのふん!?イグノーベル賞から目が離せない!!

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by The Brit_2

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by The Brit_2

ゴミ問題は都市を中心として長い間、大きな環境問題であり続けている。ゴミ問題解決のために重要なのはなんと言ってもゴミの減量だが、それを実現できるかもしれない研究が今年のイグノーベル賞を受賞した。しかもその研究をしたのは日本人、そしてキーワードはパンダ。一体どんな…?

まずはイグノーベル賞についてよく知らない人に一応説明しておく。イグノーベル賞はもちろんノーベル賞をもじって作られた賞で1991年からつづいている。そしてその賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して贈られる。これまでもドクター中松バウリンガルが受賞しているので、知っている人も多いだろう。

このイグノーベル賞の今年の受賞者の一人に田口文章北里大学名誉教授の「パンダのふんから採取したバクテリアで生ゴミを減量する研究」が選ばれた。田口教授はパンダが分解の難しい笹を主食にしていることに着目し、上野動物園からパンダのふんを譲り受けて研究し、その中から分解能力の高い菌を発見した。それを採取して家庭の生ゴミで実験したところ、95%以上を水と二酸化炭素に分解することができたというのだ。

このバクテリアを使えば、家庭で生ゴミの大部分を分解することが可能になり、ゴミの量が大幅に減少することが期待できる。いたって真面目な研究だが、やはり“ふん”というところにイグノーベル賞的要素を見出されてしまったのだろうか。

ふんといえば、日本人は2007年にもふんでこの賞を受賞している。その研究とは国立国際医療センター研究所の山本麻由研究員らによる「牛の糞からバニラの香りと味のする物質(バニリン)を抽出する」というもの。こちらもふんの有効利用に関する研究だ。

こんなに“ふん”のことばかり書いていると、イグノーベル賞はふざけた賞だと思われそうだが、実はサステナビリティについて考える際には、大きな可能性を秘めた賞であるのかもしれない。

たとえば今年の受賞者の中に、イギリス・ニューカッスル大学キャサリン・ダグラス教授らによる「名前をつけられた牛は、名無しの牛よりもたくさんの牛乳を出すことを示した」研究というのがある。これは考えてみれば、すべてを効率化/オートメーション化しようとする大規模酪農業へのアンチテーゼであり、持続可能な酪農のあり方を示すものなのかもしれない。

あるいは、エレナ・N・ボドナーさんなどの「一対のガスマスクに素早く変形させることのできるブラジャー」の研究。これこそ本当にふざけた研究のように思えるが、これはテロの危険と常に隣あわせである現代社会への痛烈な風刺であると同時に、ある意味ではライフハックであり、一つではなく一対というところで他者への思いやりの精神までも見出せるものなのではないだろうか?

また、イグノーベル賞は風刺や皮肉の精神も大事にしていて、それによって社会にメッセージを発信している。たとえば、1996年には「ヒロシマの50周年を記念し、太平洋上で核実験を行った」ジャック・シラク・フランス大統領に対し平和賞が贈られた。

ノーベル賞をとるような研究はもちろんすごい。でも、イグノーベル賞の授賞式や受賞結果を見ていると、本当に人類を救うのはこんな親しみやすさとユーモアを兼ね備えた、言い意味でばかばかしい研究なんじゃないかと思えてくる。