greenz記事「ヨコがだめならタテがあるさ! ビル型農場にみる発想の転換」で紹介したビル型農場(Vertical Farm)の構想が世界各地で次々と立ち上がっている。農作物の栽培や家畜の飼育を高層ビルで行おうというこの試みは、食糧不足という深刻な課題への解決策となりうるだけでなく、持続可能な都市づくりにも大きなインパクトを持つもの。では早速、世界の最新情報をチェックしていこう。
2009年7月、英ロンドンでは、ロンドンブリッジ(London Bridge)800周年を記念し、建築デザインに関するコンペ「LONDON BRIDGE 800: DESIGN AN INHABITED BRIDGE」が開催された。優勝したのは「Chetwood Architects」が提案したビル型農場のアイデア。冒頭の画像のとおり、ロンドンブリッジの真ん中にビル型農場を建て、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで農作物を栽培するとともに、商業施設を併設させ、収穫した野菜・果物をそこで販売する仕組みになっている。建築の観点から優れたデザインであるのみならず、その領域にとどまらない斬新さが、審査員から高い評価を受けた。
一方、フランスでは「eco-tower」というプロジェクトが進行中だ。以下のデモ動画でわかるとおり、オフィス・住居用スペースとビル型農場が共生する設計となっている。ビルの中で仕事をしながら、緑豊かな環境で過ごすことができるのは、なんとも魅力的だ。
スウェーデンの「PLANTAGON」は、環境に優しく効率的な農作物の栽培方法を検討しているプロジェクト。そこで生まれたのが「Plantagon® greenhouse」だ。垂直型が多いビル型農場の形をあえて球体にすることで、スペースを効率的に活用しようと考えている。まだいくつかクリアすべき技術的な課題はあるものの、実用化されれば、ビル型農場の有効なバリエーションのひとつになるだろう。
Greenhouse of Pentagon: Copyright(C)2009 Pentagon, All rights reserved.
また、米「Vertical Farm Project」では、こんなピラミッド型農場も発表されている。その土地柄ならではのデザインに設計することで、ビル型農場がその場所のランドマークの役割も果たすことも期待できるわけだ。
Vertical Farm: Copyright(C)2009 The Vertical Farm Project, All rights reserved. (The Vertical Farm Projectホームページより抜粋)
このほか、ベルギーの建築家Vincent Callebautがデザインした132階建ての「Dragonfly」、UAEの都市・ドバイ(Dubai)の海水を活用したビル型農場「Seawater」、加トロントUniversity of Waterlooの学生Gordon Graffが設計した「Skyfarm」など、いずれも、土地の狭さや気候などの制約をできるだけ受けず、天災や疫病・害虫から農作物を守り、安全な農作物を安定的に収穫・供給するための手段として、ビル型農場が提案されている。
国際連合(United Nations) によると、人口増に伴い、今後30年間で現在の1.6倍以上の食糧が必要と推計されている。また、2060年までに30億人の人々が食糧不足に直面するという見方もあり、「世界中の人々の食をいかに確保するか?」はますます緊急かつ重要な課題だ。ビル型農場は、この課題を解決し、持続可能な未来を創るための有力な一法として大いに期待できるだろう。実現化には多少の時間を要するかもしれないが、ぜひこのコンセプトが私たちの未来に役立ってほしい。今後もビル型農場の動向に目が離せない。
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