もぎ放題の梅で作る日本の味
5月、6月には梅の木に実がなっているのを見かけます。青くていかにも硬そうですが、地面に落ちているのは黄色になっています。道を通りながらもったいないな、この梅どうなるのかしらなどと思うことはありませんか。
じつは6月上旬、神奈川県二ノ宮町のYさんのお宅から、梅の実を採りにきてくださいとの連絡が入りました。まさにこの「どうするのかしら」の梅です。採ってよいとなればすぐにも行きますと、友人ふたりと二ノ宮まで車をとばしました。
Y宅は大磯の海を眼下に大きな木に囲まれた素敵なお家でした。70を過ぎたY婦人はお嬢様とふたり暮らし。実った梅が毎日ポタポタと木から落ちるのが気になって仕方ありません、とおっしゃって私達の到着を喜んで下さいました。
軍手、ビニール袋、段ボール、園芸用の三脚を用意しさっそく梅もぎを始めました。木のそばに近寄ってみると、緑の葉のなかにたくさんの実がなっているのが分かりました。ゴルフボールほどの大きな梅の実は袋のなかをどんどん埋めていきます。始めは手の届くところから採りましたが、慣れてくると枝の奥のほうまで手を伸ばしたくなります。そうなると木に登らなければなりません。
- 梅収穫。まだまだたくさんなっています
- 木に登って奥の実も残さず採っていきます
若い友人はいよいよ木の奥へ入って行き、細い枝についている実を採り始めました。私も始めはちょっと遠慮していましたが、昔とったきねづかで得意の木登りを始めました。靴を脱ぎ靴下の足は思ったより上手に枝をつかまえ、まるでお猿さんですねと笑いながら、やはり細い枝先の実まで採り始めますと、もう面白くて木登りは止まりません。「あらっ、これは梅干用ね、これは梅酒用かしら」、「陽射し一杯のところに育っていいわねぇ」などと言いながら……。
実を採る人、下で受け取る人と、楽しいチームワークのなかで作業は日没までにはすっかり終わりました。1本の梅の木から採れた実は段ボールに10ケース程。想像していたよりはるかに多い収穫でした。実が葉の色に近いので、下から見ていたのではどれがどの葉のなかに隠れているか分からなかったからです。
- こんなにたくさん採れました
- 傷あり・なし、色づきの程度によって分けていきます
さて、持ち帰ってからが大変です。まず梅を洗いきれいに布で拭き、梅酢・梅酒・梅漬け・梅シロップ・梅ジャムのそれぞれに適した実を選別しました。塩・砂糖・焼酎・みりんなどの調味料はすべてオーガニックのものを用意し、瓶に詰めていきました。梅ジャムのようにすぐ食べることができるものもありますが、時間をかけて醗酵して味ができていくものばかりです。
日本にはこのような生活の智恵に満ちた食文化がありますが、じつに手間が掛かり、忙しい現代人の食文化にはなかなか根づきません。しかしどうか、忙しいからといわずに手を掛けることを楽しんでいただきたいと思います。暑くて食欲がない、お腹の調子が悪い、というようなとき、梅が強力なサポートをしてくれます。試してみて下さい。
今年は数人の友人と梅に挑戦しましたが、来年はぜひみなさまと、梅狩り、梅酒づくりなどをご一緒したいと思っています。