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太陽でほくほく料理、とろり湯わかし。煙で床暖房。実践者と挑戦者に聞く、がんばらないで暮らしを楽しくするエネルギーの選びかた

食べたもので、体調がかわるという人がいます。それでは家はどうでしょう?家電をうごかす電気や、食べものや部屋をあたためる熱。私たちの家はこうしたいろんなエネルギーをとりこんではたらいています。

家のエネルギー源がかわると、住み心地も変わってくるのでしょうか。今回は「エネルギー源をかえたら、暮らしが楽しくなった!」という方たちをご紹介します。

2017年2月27日、グリーンエネルギーのイベント「green power drinks 福岡」をgreenz.jpが開催しました。テーマは「街でも田舎でもできる!楽しいエネルギーの作りかた」。

前半はエネルギーを作る暮らしの実践者たちによるトーク。後半はグリーンエネルギーと暮らしの話題を肴に、ゲストも交えたにぎやかな飲み会に

それでは、エネルギー源を意識して楽しむ登壇者たちの暮らし方を一緒に見ていきましょう!

畠山千春さん(はたけやま・ちはる|写真中央左)
1986年生まれ。法政大学人間環境学部卒業。カナダ留学後NGO/NPO支援・映画配給会社に就職、3.11をきっかけに「自分の暮らしを作る」活動を開始。2011年から動物の解体を学び、2013年狩猟免許取得。食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る「いとしまシェアハウス」を運営。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。http://chiharuh.jp
記事: 食べ物から、自分の暮らしを見つめなおす。福岡・糸島で狩猟に挑戦する畠山千春さんインタビュー
谷口竜平さん(たにぐち・りょうへい|写真中央右)
1980年生まれ。福岡県宗像市出身。福岡テンジン大学にてコーディネーターの育成を行い、文部科学省GP事業、博多伝統工芸の商品開発プロジェクト、セルフリノベーション複合施設のプロデュースなどに携わる。
現在、地元宗像にて7,200坪の里山をシェアする「むなかたシェアハウス」、自然に囲まれたワーキングスペースと呑みニケーション施設「むなかたシェアラボ」、ツリーハウスのある里山を遊びと学びのある場にする「フォレストガーデンプロジェクト」を展開。これから里山でのエネルギー作りを構想中。
http://taniguchiryohei.tumblr.com
佐藤千佳さん(さとう・ちか|写真右)
1983年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。東日本大震災をきっかけに、2014年9月より神奈川県横浜市でオフグリッドで暮らしている。電気は太陽光発電で完全自給し、ガスは太陽熱で給湯やお料理をまかない、庭では野菜を育てて、都会でもエネルギーや食の自立を目指した生活を実現。現在、光文社『女性自身』web版で、「サトウさん家のオフグリッドで暮らす知恵」をコラム連載中。
記事:「電力会社の電気はいりません!」独立型の自家発電で、晴耕雨読の日々をおくる佐藤隆哉さん・千佳さんに聞く、これからの電力自給のありかた

未来や地域のありかたをエネルギーで選ぶ

まずはgreenz.jpプロデューサーの小野裕之が、日本のグリーンエネルギー事情について話しました。

小野 2012年から固定価格買取制度というのがはじまって、市場価格よりも高めの価格で再生可能エネルギーを買い取ることが電力会社に義務づけられました。そのためもあって日本の再生可能エネルギー率は上がっています。

そして新しい再生可能エネルギー技術も生まれてきているので、だんだんと石油発電に依存しなくてもいい社会になってきています。日本は石油を海外から輸入していますが、石油の市場価格を下げて流通させるためにわたしたちの税金がたくさん使われているんです。

一方で、再生可能エネルギーの普及のためにも私たちのお金は使われています。税金が使われているだけでなく、再生可能エネルギー発電促進賦課金というかたちで電気料金の一部としても負担しています。

これまでは石油発電にも再生可能エネルギー発電にもこうしたお金を払って、とにかく電気を買っている状況でした。ですが今は、その状況も変化しています。

小野 昨年4月からはじまった電力の小売全面自由化によって、家庭でも電力会社を選べるようになりました。電力を自分で選べるようになった今、どんな電力を買いたいかを意識してみませんか?

たとえば再生可能エネルギーを選んだり、地域の電力発電会社を選ぶこともできます。これから選択肢はもっと増えてくるはず。電力会社を選ぶということで、自分がほしい未来や地域のありかたをつくっていけると思うんです。

とはいっても、電力を選ぶということはイメージが難しいかもしれませんね。ここからは実際に理想の暮らしづくりのために電力を選んでいる、実践者や挑戦者の話を聞いてみましょう。

電気も熱も手づくりする田舎ぐらし

まずは「いとしまシェアハウス」の千春さんが、シェアハウスでの暮らしを紹介。

千春さん いとしまシェアハウスのテーマは、食べもの、エネルギー、仕事の3つを自分たちでつくることです。お米や野菜は自分たちでつくって、田んぼや畑を守るためにイノシシの狩猟も。基本は菜食ですが、捕れたイノシシは自分でさばいて食べるのでお肉の自給率も100%です。皮もバッグに加工したりして、大切に使いきります。

エネルギーはちょっとずつ作っています。電気は太陽光発電で。太陽光パネルをつくるワークショップを企画している、藤野電力さんに講師にきていただいて、みんなで太陽光パネルをつくったりもしました。パネル1枚でどれくらい発電できるのか、自分がどれくらい電気を使っているのかを体感できてとてもよかったです。

千春さんは、自身の結婚式「結婚キャンプ」でも太陽光発電で自給をしたのだそう。

サステナブルな暮らしを提案する企画に協賛をした「自然電力株式会社」から太陽光パネルを借りて、太陽光エネルギー100%の結婚式を実現

そして電気だけでなく、シェアハウスをあたためる熱も自分たちでつくっているといいます。

千春さん うちは古民家なので冬はすごく寒いんです。だから韓国から先生を呼んで、オンドルという伝統的な床暖房をみんなでつくりました。おかげで今年もリビングにストーブを出していません。

オンドルというのは、床下で薪を燃やした煙の熱で床をあたためるしくみ。床下に煙の道をつくって石をのせてから、土をかぶせて煙がもれないようにします。すると煙がゆっくりと石をあたためて、床があたたかくなるのだとか。

千春さん オンドルはすごく熱効率がよくて、薪を5、6本たくだけで翌朝まであたたかいんです。それでも寒い時は大部屋のリビングを建具で仕切って、みんなで集まって鍋を食べています。

あとはロケットストーブをつくって調理もしています。小枝を燃やすと500〜600度の高温調理ができるんですよ。それから火鉢にやかんを置いてお湯をわかしたり。調理のときのエネルギーの種類によって、食材の味が変わると私は感じています。たとえばお湯も火鉢でわかすとトロッとして、なめらかですごくおいしくなるんですよ。

祖父から受け継いだ山のエネルギーで、楽しく遊んで学びたい

続いてプロジェクトを紹介するのは「むなかたシェアハウス」の谷口さん。まだかたちにはなっていないのだけど、と前置きしながらも、里山で挑戦しているエネルギーづくりについて語ってくれました。

谷口さん 僕が祖父から受け継いだ里山で、自然エネルギーをつかってどんなことがこれからできるかな、ということをお話ししたいと思います。

みなさんの中にも将来、山を相続するという方はいらっしゃるんじゃないかと思います。僕の場合は自分が育った家と倉庫も一緒に相続したのですが、更地にして売ったりはしませんでした。それよりも、リノベーションをして山とあわせてワクワクするような場所にしようと思いました。

谷口さんは、固くなりがちなエネルギーの話もワイワイと楽しくしたいといいます。そして里山をそのための場所にしていきたいのだそう。

谷口さん 遊びながらエネルギーをつくったり、学べたりできる場所を里山につくれたらと思っています。小水力発電もやりたいし、土で窯をつくるアースオーブンもやりたい。山でキャンプしながら、そんなことを学べたらおもしろいと思うんです。

山の中で、自然の力もテクノロジーも使って、実験しながら理想の暮らしをつくっていく。そんな取り組みを「フォレストガーデンプロジェクト」という名前でスタートしています。

電気をつかうのも、調理も楽しいオフグリッド生活

最後は、太陽光と太陽熱をつかってオフグリッドな暮らしを夫婦で実践する千佳さん。楽しいし美味しいという、エネルギーのつくりかたとつかいかたを話してくれました。

千佳さん オフグリッドな暮らしというのは、電力会社さんの送電網につながっていない暮らしのことです。うちには電線がひかれていなくて、太陽光パネル8枚を屋根に置いて自給しています。売電は目的にしていません。

オフグリッドという言葉には、知らず知らずのうちにつながってしまった大きなシステムに依存しないで、自立するという意味も含んでいます。だれかにあやつられていたような糸に気づいて、それを自分で切って自由になるというイメージなんです。

電力自給は「4種の神器」を揃えればはじめられるのだそう。それが太陽光発電パネル、過充電を防ぐための充電コントローラー、電気をためるバッテリー、つくった直流電気を家庭用の交流電気に変換するためのインバーターです。千佳さん夫婦はバッテリーは中古で手に入れました。

千佳さん オフグリッドでも普段の暮らしはみなさんと変わりません。冷蔵庫も洗濯機もエアコンもありますよ。節電のためにやっていることは、熱をつくるためになるべく電気を使わないこと。私たちの電力消費量は1日3kW、一般家庭の1/3です。

原発事故以降、電気をつかうことに罪悪感を感じて苦しかったという千佳さん。しかし電力を自給してみると、電気自体は全然悪くないと気づいたのだそう。それからは電気をつかうことが楽しくなりました。

千佳さん 家庭菜園でトマトを育てて、収穫して食べたらおいしいですよね。その感覚と同じです。電気もお日様と一緒に協力してつくって、収穫した電気を暮らしにつかうと気持ちがいいんです。

オフグリッド生活になるとお日様リズムになりました。天気がいいとたくさん発電するので私も気持ちよくエネルギーをつかいます。掃除機もたくさんかけて、炊飯器をだしてきて煮豆をつくって。

電気が余る電気富豪の日には、ご近所さんに電気をお配りしたい気持ちになります。お日様で電気をつくる、自然と調和した暮らしに変わっていくと、うばい合う社会から分けあう社会になるんじゃないかな。

そんなオフグリッド生活で太陽光発電よりももっと楽しいのは、太陽熱をつかうことなのだとか。太陽はとてもあたため上手で、ガス代が下がるだけでなく、食材はおいしく、お風呂は気持ちよくなるといいます。

千佳さん 最初は電力自給だけだったのですが、お料理しているガスも化石燃料だと思ったら何とかしたいと思うようになって、ソーラークッカーも導入しました。電気もガスもゼロで、とてもおいしいしい料理ができるんです。ジャガイモはほくほくになりますよ。

太陽は万物に命を吹き込むエネルギー。そのエネルギーでつくる料理は味もおいしいと感じます。

千佳さん愛用のソーラークッカー。2重のガラスの真空管の中に食材を詰め、ふたをして日当たりのいい場所に30-40分置いて調理する

千佳さん それからお風呂も太陽熱でわかしたいと思うようになって、太陽熱温水器を導入しました。このお湯も感動的で、温泉とは違うのですが体のあたたまり方がガスと違うなと思いました。

何かをあたためる時には、太陽のエネルギーをつかう時代になっていくといいなと思います。太陽はすごくあたため上手。太陽光発電も楽しいですけど、オフグリッド生活をしてよかったなと感じるのは、個人的には太陽熱を使った調理とかのほう。すごく楽しいです。

「どう思いました?」後半はトークゲストも参加者も一緒に、エネルギーについて話しました

いかがでしたか? 会場のみなさんがエネルギーの選び方について楽しそうに思いを伝えあう様子を見ていると、なんだかエネルギーにも手ざわりを感じました。

エネルギー源で食材の味に違いを感じたり、先祖の山が蓄える自然エネルギーで遊びたくなったり、エネルギーを自分で“収穫”すると分け合いたい気持ちになったり。エネルギーの存在を感じて、自分で選んだエネルギーを使うことを楽しんでいる暮らしが印象的でした。

エネルギーを電気代やガス代のようにただ生活コストとして捉えると、使うことが楽しくはないですよね。しかしエネルギーは暮らしで日々使うもの。もし楽しく使えるなら、日々楽しく暮らせそうです。

みなさんの家や暮らしは、どんなエネルギーをとりこむともっとワクワクするでしょうか?自分がほしい暮らしを、エネルギーから考えてみませんか?

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。