greenz.jpでは紹介のみ行っています。お問い合わせ・ご連絡はイベント主催者さまへお願いします。
「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」
みなさんは、SDGs(エスディージーズ)という言葉を聞いたことがありますか?
SDGsとは「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」の頭文字をとったものです。2030年までに、先進国も新興国も途上国も、国も企業もNPOも個人も、あらゆる垣根を超えて協力し、より良い未来をつくろうと国連で決まった17の目標です。193の国と地域が賛成し、2015年9月に採択されました。
「持続可能な社会」を目指すことは21世紀の国際社会における最重要テーマのひとつでしたが、このテーマで世界が一致したのは、歴史上、初めてのことでした。それから2年が経ち、SDGsにどう貢献するか模索をはじめた企業や自治体も登場し、関連するニュースも多くなってきました。
学校の役割が変わる
一方、今年の3月に公示された中学校の新学習指導要領の前文に、次のような一文が掲載されました。
このように、これからは学校でも「持続可能な社会の創り手」を育てることが大切なテーマになっていきます。なんともすごいタイミングです。もちろん、これだけでなく、学校は「アクティブラーニング」「地域との対話」「教科横断的な学び」「思考力、判断力、表現力の育成」など、これからの未来を生きていくための創造的な力を身につける場所として大きな変革が迫られています。
とはいえ、教科書に反映されるのは数年後ですし、多くの先生は「持続可能な社会と言ったって、一体全体、どうやって教えたらいいんだろう?」と悩んでいるのが現状です。
私たちは、SDGsは子どもたちが地域や世界に視野を広げ、大人たちと対話をしながら、より良い未来をつくっていくための最高の教材になると考えています。
大切なテーマだからこそ、教材や情報がなくて困っている先生や生徒たちに何かサポートができないだろうか。そう考えて、SDGsを通じて未来のつくり方が学べる教材を作り、学校に届けることに決めました。
先生たちとの出会いが、すべての始まり
こんなことを考えたのには、いくつかの背景があります。
ひとつは、これまでにThink the Earthが行ってきたプロジェクトの経験です。もうひとつは、出会った先生たちの想い。
私たちは、2003年から、お金のこと、気候変動、水、食べものなど毎回テーマを変えた6冊のビジュアルブックを作り、全国のすべての小・中・高等学校(4万5,000校)に1冊ずつ届けてきました。
(書籍は市販もされており、合計発行部数は50万部を超えました。書籍の詳細はこちら)
また、2013年から4年間にわたり経済産業省と共に実施した、再生可能エネルギー教育普及プロジェクト「グリーンパワースクール」で日本全国の学校でがんばっている、素晴らしい先生たちと出会う機会に恵まれました。greenz.jpのこの記事で紹介されている谷本薫彦先生も、その一人です。
(『グリーンパワーブック 再生可能エネルギー入門』とグリーンパワースクールのウェブサイト。公募により希望校を募り、約300校に1クラス分=40冊ずつ寄贈しました)
SDGs for Schoolは、そうした先生の想いに応えるプロジェクトにしたいと思って、先生たちにもプロジェクトチームに入っていただき、一緒に進めています。一人の先生から、こんな言葉を聞きました。
「小学校高学年くらいから、子どもたちの笑顔が消えてしまう。僕はそれを何とかしたいんです」
今の子どもたちは「将来、何になりたいか?」ばかりを問われ、受験、就職といった短期目標をクリアすることに追われています。本来、学ぶことは楽しいことのはずなのに、日本の学校では学びの楽しさや感謝の気持ちを忘れてしまいがちです。また、そうした学校への違和感から、不登校になる子どもたちが全国に15万人もいるそうです。
この話を聞いてショックを受けるとともに、その想いに強く共感しました。
SDGsは、未来を変えようという強い想いをもった大人たちが力を合わせて作り上げた、世界共通の目標です。だからこそ、最高の教材になります。世界が抱える問題に対してユニークなアイデアとパッションで向かい合う大人たち(あるいは同世代の子どもたち)がいることを知り、同じ星に生まれた地球人として、未来を変えるグローバル・ムーブメントに自分たちも参加できるんだ! と思ってもらいたい。
いま子どもたちが感じている、漠然とした不安に満ちた将来は、学びを通じて視野が広がったり、視点が変わったりすることで、自分がそこで生き、さらに次の世代に引き継ぐ、手触りのある未来に変化します。
未来をつくるために、学ぶ。
そのワクワク感をつくり出し、子どもたちの笑顔を取り戻し、世界中に笑顔をひろげるために行動できる人を増やしたい。
それがこのプロジェクトに込めた願いです。
どんな本をつくるのか
書籍のタイトルは、まだ案の段階ですが仮に『未来を変える目標 〜SDGs アイデアブック〜』としています。およそ160ページで、A5サイズ、フルカラーの本になる予定です。市販版の定価は2,000円前後になるでしょう。
編集方針について、簡単ですが構想を記します。Think the Earthはこれまでビジュアルブックにこだわってきました。頭で理解することも大事ですが、それよりも感覚や感性を刺激し、好奇心に火を付け、学びの意欲をもってもらうことを大切にしています。今回も、インフォグラフィクスや写真、マンガなど様々な表現方法で、情報とメッセージを伝える本にしたいと考えています。また、ポリシーとして、読者を子ども扱いせず、大人も入門書として読める本をつくります。
こころを動かすことがゴール
この本は、SDGsの17のゴールを暗記させることが目的ではありません。体系化され、整理された知識を提示することで、わかった気になり、むしろ思考停止が生まれることがあります。それよりは読者の心が動き、次のアクションが生まれることをゴールとします。
SDGsの大切さを伝えるストーリー
この本の重要なパートとして、あるストーリーをつくろうと思っています。マンガになるのか、絵本になるのか、はたまたマンガ家による絵本になるのか、いままさに検討中なのですが、そのディレクションを、マンガについて語るウェブメディア「マンバ通信」の編集長でもある伊藤ガビンさんにお願いしました。
国内外の問題を解決するアイデアを
世界や国内の事例を紹介したいと思っていますが、単なる活動紹介ではなく、アイデアとして事例を観ることができれば、「そんな方法があるなら、こんな方法もあるかも!」と心が動くかもしれません。先端テクノロジーを使った事例もあるし、同世代の子どものアイデアが実現した例もあります。読んだ人が、自分ならどうするか、と考えられるような視点を持っていたいと思います。
自分が変わる本
そういう意味では、世界を変えるための本ではなく、自分が変わるための本かもしれません。この本を読むことで世界を観る目が変わる(パーセプション・チェンジが起こる)。新しい目を持つことで、世界や未来のイメージは変わるものです。
世界の矛盾も伝える
正しいことを伝えて、そのように行動を強制する、という本でもありません。そもそもSDGsは、人間が生きていくために必要な「開発」を持続可能にしよう、という話です。現実はきれい事だけでなく、矛盾に満ちています。一筋縄ではいかないゴールばかりです。そうした矛盾と向き合うことも本質的なことです。
専門家の視点もしっかり伝えます
ビジュアルがメインの書籍ですが、要所要所に専門家が執筆するコラムを入れていきます。環境問題の専門家、金融の専門家、テクノロジーの専門家、などなど。支援者の方には今後、寄稿予定の方からのメッセージも紹介していきたいと思っています。
2030年のその先へ
SDGsの達成目標年は2030年ですが、この2030年を通過点と考える視点を持っていたいと思います。なぜなら子どもたちは、その先を生きる存在だからです。また、17のゴールが全てを網羅しているわけではないという視点も持っていたい。2030年以降を、そして18番目のゴールを考えることこそ、次の世代が参加できることなのではないかと思います。
本はアクションの起点
最後に大切なことを。教材づくりは目的ではなく手段です。先生たち、生徒たちがこの先を考える問いとアクションを用意したいと思っています。具体的には授業カリキュラムの開発と共有、教員研修、ボルネオ島をはじめ問題の現場でのフィールド授業、子どもたちの交流機会などです。
初年度の活動として、本や映像、ウェブサイトをつくり、カリキュラムを開発、全国の学校に告知し、希望校に届ける、その全てを理想通りに実行すると2,000万円くらいの費用が必要です。助成金を申請したり、企業からの協賛を募ったりしながらなんとか必要な資金の調達を達成したいと思っています。
お金の使い方
このクラウドファンディングでは、その内、書籍の編集、執筆、リサーチ、デザインなど教材づくりにかかる費用である500万円を目標に設定しました。目標金額が集まれば、とにもかくにも教材の中身は完成します。目標金額を超える金額が集まれば、印刷費や学校への告知、学校に書籍を届けるための諸費用、カリキュラム開発費、教員研修やフィールド授業など、先生や生徒たちのアクションを充実させる費用に充当していきます。また映像制作に関しては後日、新たにクラウドファンディングを立ち上げることも検討しています。
みなさまからの支援は未来のバトン
この本は、持続可能な未来をつくるために、先生に託すバトンだと思っています。ぜひ支援者として、そのバトンを手渡す人になって欲しい、というのが私たちからのお願いです。
どの支援コースも、完成した本を支援者ご本人に届けると共に、学校にも本を届ける仕組みにしました(選択した支援コースによって届く書籍の数は異なります)。つまり、このプロジェクトを通じて、支援してくれたみなさん自身が子どもたちに本を届け、ともに未来づくりに参加することになるのです。
子どもたちの笑顔のために
これからの未来を生きるのは、まぎれもなく今の子どもたちです。
そして、SDGsの目標が2030年に達成できるかどうかは、大人たちの行動にかかっています。いきなり学校の仕組みを変えることは難しい。けれど、想いを持った先生に対して、外部からできることはあるはずです。大人と子どもが共に手を携えて未来を考えるきっかけをつくりましょう。そして子どもたちが笑顔でいられる未来を一緒につくりましょう。
本プロジェクトに共感・賛同いただけたら、ぜひ支援いただけるとうれしいです。どうぞよろしくお願いします。
上田壮一(SDGs for School実行委員/一般社団法人Think the Earth 理事)
target=”_blank”