鹿児島のテンダーです。
私は鹿児島市のすぐそばの年間家賃1万円の家で、電気・ガス・水道契約をせず(=フルオフグリッド)に暮らしています。電気は自作のソーラーシステム、熱源は薪と太陽光、水は山水を引いて濾過して飲んでいます。
これだけ聞くと、とてもストイックな暮らしをしているように思えるかもしれませんが、一般的な家電はひと通り使えています。暖房は薪ストーブだし、冬でも蛇口をひねれば、太陽熱温水器を通った温かいお湯が出てきます。
こんな生活ですから、家やインフラの維持に大きな固定費がかかりません。家賃や公共料金がかからないので、その費用を得るための労働もいりません。
妻と子供と家族4人で暮らし、特に不自由がないどころか、むしろストレスの少ない上質な暮らしをしているようにも思っています。
この暮らしを始めたのは3年前、西暦2010年代の日本で環境をなるべく汚染しない生活モデルを実現するためでした。
その暮らし自体が私にとって魅力的だった(汚れやエネルギーを外部委託しない=お金が全然かからない)のと、「人間は生きてるだけで害悪なんだ!」と、まことしやかに言う人が多かったので、やればできるし簡単だということを、立証しないことにはどうしようもないなぁ、と思ったのです。
この暮らしを始めて3年。個人として低負荷な暮らしはやっぱり簡単でした!そして、そろそろ個人を超える大きさの、次なるプロジェクトに取り掛かろうと思います!それがこちら!
こんなクラウドファンディングに挑戦し、ありがたいことに、期限の2/27を待たずして仮の目標額250万円をクリア。ただいまは真の目標額の500万円に向けて、リターン品を増やしたり、日々発信をしたり、という毎日です。
このプロジェクト、ダイナミックラボについての詳細は、「7500いいね」を獲得した上記campfireページをぜひご覧いただきたいのですが(とっても多岐にわたるプロジェクトなので、ここで紹介すると日が暮れちゃう!)、
簡単に説明すると、
「廃校を太陽光発電 & 雨水利用 & 薪の熱源 & 自作の下水で運用することで環境負荷を減らし、さらに廃材や見捨てられたものから商品を作り、地域に雇用を生む」というプロジェクトです。
電気ガス水道契約なしの私の暮らしを拡大したもののイメージなのですが、さらにここに「介護予防ジム」と「ありとあらゆる技術伝承」という2つの事業が入ってダイナミックラボは完結します。
というわけで今日は、クラウドファンドページでは語られなかった、介護予防ジムについてをここで語らせてちょうだいな!
はじめに。テンダーの住む大坂地区について
ダイナミックラボの舞台となる金峰町・大坂(だいざか)地区は人口400人前後、高齢化率48.7%、平均年齢60.2歳。移住者もほとんどおらず、地域の小学校も3年前に廃校となりました。
そして、大坂地区の中の私の住む小さな集落は世帯数12のうち、90歳前後の方が2名いらっしゃって、その2名ともまだ元気に歩き、車を運転し、お一人はスマホを扱うのです。
この集落には週一回「おしゃべり会」という集まりがあり、そこで高齢者が自発的に運動をする&遊ぶことで健康を維持できるんだろうなぁ、とぼんやり私は思ってたんですね。
そんな折、鹿児島に住む森田洋之医師が、TEDxにて財政破綻した夕張の医療の話を講演していて、その内容に私はもうびっくり仰天。
医療崩壊した結果、三大死因の死亡率が下がった夕張市
ログミーにて、この講演の書き起こし原稿は「16万いいね」を獲得
なんと森田医師によると、「高齢化率日本一の夕張市が医療崩壊したにもかかわらず、市民の予防・運動の意識が向上したためか、心疾患・肺炎などの死亡率が下がり、老衰の死亡率が急増した」驚くべきデータが出ている、とのこと。
その後、私は森田医師とご縁があり、彼から医療の問題を教えてもらうことになりました。
(さらに今回のラボの事業主体である「一般社団法人その辺のもので生きる」の理事にもなってもらいました!)
例えば、80歳を超えて転んだりして股関節を骨折してしまうと、寝たきりになってしまうケースが日本には非常に多い。だけどそれは、決して人間や高齢ゆえの限界なわけではなく、運動をすればまた歩けるようになることも多いそうです。
しかし、日本ではリハビリでトラブルが起きるリスクを恐れたり、診療報酬点数の問題で「寝かせきり」にしてしまうことも多く、動かない体は弱るがゆえに、そのまま病院で「胃ろう」まで処置が進み、最終的には免疫が落ちて日和見感染の肺炎で亡くなる方も少なくないらしい。
私は医療の門外漢だし、たくさんの事例を見たわけでもなく、「だから近代医療が間違ってる」と声高に叫ぶつもりもありません。ただこの話が「自分にとってのちょうどいい医療ってなんだろう?」と考えるきっかけになったわけです。
「介護予防ジム」という存在
ある日、森田医師が「介護予防の現場を見ないか?」と誘ってくれたので、一緒に鹿児島県のいちき串木野市にある「至誠舎」というデイサービスに見学に行ったのです。
そこで会ったお婆さんは、それこそ80歳を過ぎて股関節を骨折したらしいのだけど、至誠舎のスタッフが「お婆さんは、何をしたいですか?」と聞いたら、「旦那さんにお味噌汁を作ってあげたい」と答えたそうな。
それからお婆さんは毎日至誠舎に通って、簡単な運動をして、つとつととゆっくり歩けるようになった。
そして、今では毎日、お味噌汁の材料を買い物に行って、旦那さんに味噌汁を作ってあげている。
至誠舎を後に、帰路の車の中で森田医師は苦々しく呟いた。
あのお婆さんと、寝たきりで胃ろうまで行ってしまう人と、違いなんて大してないんだ。ただ、担当した医者が何を言うかだけで、その後の生活がまるっきり変わってしまうんだ
改めて大坂地区を観察すると
大坂地区の皆さん(周りの人がみんな60代以上だから、私にとってはこういう呼称がしっくりくる)は、70歳でもボルダリングウォールを登ったりするし、杖をつく人も少ないし、極めて体の強い地域だと思う。
そして、地区には病院がない。
だからこそ、ここで夕張モデル———健康と命を自分たちで考え、整え、向き合うモデル———に挑戦するのは、とても意味があることなんじゃなかろうか、と思うようになった。
幸い、身体を動かす文化がここにはあるし、私の集落の成功例(90歳になっても元気でいられる)もみんな知っているし、ここで介護予防ジムをやるのは、うまくいく要因が多いように思う。
森田医師の、介護予防ジム見学後のコメント
そして至誠舎代表の方いわく
100万円するようなトレーニングマシンも散々使ったけど、結局はホームセンターで買ってきたロープで作るトレーニング道具や、数千円で買える重めのボール、そんなものが一番効果がありましたね
とのこと。
つまり、、、お金のないうちの事業にもピッタリ!
ファブラボと介護予防ジムが合わさると
さらに、至誠舎では、必要なトレーニング道具はスタッフが自分たちで作っていた。そこにファブラボが合わされば、もっとたくさんのこと、楽しいことができるに違いない。
おそらく介護予防の現場で大事なことは、トレーニングの負荷の計算や、統計データだけではなくて、仲間がいることや、誰かの役に立てること、なんじゃないだろうか。
みんなが揃って取り組むラジオ体操の音源は、誰かが漕ぐ自転車の発電によって再生されたり、2人以上が協力しないと達成できないトレーニング機器を作ったり、遊び心も含めていろんな形が考えられる。
さらに、大坂地区のおっちゃん、おばちゃんたちは多くの人が多様な技術を持っているので、例えば若者がファブラボに溶接しにきたところへ、ジムのおっちゃんが教えに行き、若者はお礼にトレーニング道具を作ってプレゼントしたり、などなど。
全く違うジャンルの施設を複合することで、世代間交流が生まれる気がしている。
ファブラボ、介護予防事業、技術伝承。この3つは一見関係ないようだけど、実は「自分の人生を自分で設計して実践する」という一点で貫かれているのでした。
そんな文化が、やがてこの大坂に確立したら嬉しいなぁと。
そんなわけで志は大きく、進み方は手堅く、介護予防ジムは次年度以降の事業になりそう(ファブラボだけでも、今のところ手が回らない)。
テンダーの新事業、ダイナミックラボをお楽しみに!
テンダー
ヨホホ研究所主宰。火起こしから電子回路まで、先人の技術を引き継ぐ1万年目のこども。環境問題や争いを解決する手段として、先住民技術と対話を重んじる。職業はヒッピー。 電気・水道・ガス契約ナシの年間家賃1万円の家、てー庵に暮らし中。
– INFORMATION –
鹿児島の廃校に、ソーラーによる電力自給+雨水利用+下水の自作+薪暮らしのフルオフグリッド環境を作ります。さらにそこで「製材や溶接を含む、社会問題を解決するためのモノづくりラボ」+「医療費を軽減する高齢者向け介護予防ジム」+「本質的な場所で本質を学ぶ、あらゆる技術の研修事業」をスタートします!
https://camp-fire.jp/projects/view/17356