夢は、海の町・気仙沼を象徴する「気仙沼ブルー」を生み出すこと。藍染め工房「OCEAN BLUE」の挑戦

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みなさんは、藍色が「ジャパンブルー」と呼ばれていることを知っていますか? 藍染めは日本で古くから親しまれ、町民たちに日用品として身につけられてきました。明治初期に来日した欧米人は町のあちこちで目にする藍色に強い印象を抱き、「ジャパンブルー」と名づけたといいます。

宮城県気仙沼市で藍染め製品をつくる「藍工房OCEAN BLUE」で働く女性たちの夢は、海の町・気仙沼を象徴する藍色、「気仙沼ブルー」をつくること。そのために、長らく忘れられていた染料「ウォード(和名:大青)」の復活に乗り出しました。

若い女性ならではの感性を生かした藍染め工房

気仙沼は三陸海岸南部の交通・商業の拠点として栄えてきた港町です。2011年に発生した東日本大震災では大きな被害を受け、現在も町は復興の道半ば。そうした中、「藍工房OCEAN BLUE」は女性たちの働く場をつくるために誕生しました。

OCEAN BLUE代表の藤村さやかさん

OCEAN BLUE代表の藤村さやかさん

代表を務めるのは、2013年に東京から気仙沼へお嫁にやってきた藤村さやかさん。子連れで出勤することもよくあり、息子の零くんはたくさんの大人たちに可愛がられながら育っています。

製品は藤村さんをはじめとする女性たちが工房で手染めし、子育てを終えた世代のお母さんたちが中心になって縫製をしています。藍染めというと、ご年配の方が好むようなものが多い印象を抱いている方もいるかもしれません。けれども、藍工房がつくるTシャツやワンピース、ストールはとても爽やかでスタイリッシュで、10代から80代まで、幅広いファン層を抱えています。
 
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特にこの工房らしいのは、淡い水色に染めたロンパースやスタイ、そして看板商品のベビー甚平といったラインナップ。可愛らしく、出産祝いや誕生日の贈り物にぴったりです。実は私も子どものいる友人へのプレゼントとして重宝しています。

藍染めのシャツを着て、藍染めのベビーモスリンで遊ぶ赤ちゃん時代の零くん

藍染めのシャツを着て、藍染めのベビーモスリンで遊ぶ赤ちゃん時代の零くん

伝統的な藍染め技法を使い、若い女性たちの感性を活かしてつくる「藍工房OCEAN BLUE」の製品は、いままでにない藍染め製品として日本だけではなく海外でも好評を得ています。日頃から外国人のワークショップ希望者が多く、海外視察団の立ち寄り所にもなっているそうです。

工房内は藍色と白で彩られ、港町らしい爽やかな雰囲気を醸し出しています

工房内は藍色と白で彩られ、港町らしい爽やかな雰囲気を醸し出しています

藍染めの奥深さに魅入られて

未経験から藍染めの世界に入り修行を重ねてきた藤村さん。知れば知るほど、藍染めの奥深さにのめり込んでいったといいます。

藍草の葉を100日ほどかけて染められる状態に加工し、そこに灰汁やふすまなど天然の触媒を加え、何日間か練って染液を完成させる。その液の中で何度も重ね染めをする。

藍染め技法にはさまざまな工程があり、驚くほど時間も手間もかかります。染液は子育てと同じように毎日のお世話が欠かせず、藍の体調を五感で感じ取りながら染めを調整しているそう。

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「藍」とひとことで言っても、その色は一色ではありません。染め方や染めたときの状況によって、多様な藍色が現れるんです。

「藍四十八色」といって日本人はそれぞれに異なる名前をつけ、微妙な色合いの違いを楽しんできました。漆黒のような濃い藍がお好みのお客様もいらっしゃれば、空のような淡い藍を気に入って買っていかれるお客様もいらっしゃいます。

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現在は、日本の藍染めで一般的に使われるタデ藍を購入し使用していますが、藍染めについて学ぶうちに、藤村さんはいつしか「自分たちの手で藍を栽培し、気仙沼ならではの藍色を生み出したい」と夢見るようになりました。

今年の夏はタデ藍の種を入手し、試験栽培を実施。しかし、タデ藍は温暖な気候を好むため、期待した収穫量には及ばなかったそう。「寒冷な東北地方でも栽培できる藍はないだろうか」——そう考えているうちに辿り着いたのが、ウォード藍でした。

栽培したタデ藍。芽は出たものの、十分な収穫量ではありませんでした

栽培したタデ藍。芽は出たものの、十分な収穫量ではありませんでした

気仙沼で育てた藍で、気仙沼だけの色を生み出す

藍草の中でも寒冷地で育つウォード藍は日本でも北海道に自生していて、「大青(たいせい)」という和名で呼ばれていました。アイヌ族が藍染めをする際に用いられてきたと言われています。

ヨーロッパでも中世までは藍染め原料の中心として使われてきましたが、手間がかからずきれいな発色をするインド藍の出現によって栽培されなくなり、一時は世界的に手法が断絶されました。

しかし、フランス南西部にあるトゥールーズの農家が古い文献などを紐解き、栽培に挑戦。2015年に見事成功しました。このウォード藍からつくった染料はシャネルやディオールといった高級ブランドでも使用されるようになり、大きな話題を呼びました。

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今夏から、トゥールーズにもお仲間がいるインディゴアーティストのタツ・ミキさんのもとに通い、藍染めを含むインディゴ染め全般に関するアドバイスを受けています。

タツさんはタツさんで、「インディゴ植物の畑を世界中に広げ、天然染料の時代を切り開きたい」という気持ちをお持ちでした。そこでタツさんからウォード藍の種を譲り受け、気仙沼でも栽培に挑戦することにしました。栽培方法のほか、収穫した葉っぱを使った沈殿藍づくりの指導をしていただく予定です。

試験栽培を行う予定の農地を専門家に見てもらったところ、「藍の栽培に最適な土地」とお墨付きをもらったそう。しかし、工房を運営しながら毎日の畑作業を女性スタッフだけで行うには限界があるため、地元農家の協力を得ることにしました。地域全体を巻き込んだプロジェクトになっているのですね。

地元農家の指導のもと、工房スタッフは週2回、畑作業を行います

地元農家の指導のもと、工房スタッフは週2回、畑作業を行います

タツさんに教わってびっくりしたことがあります。その風土やつくり手、年代、ブドウの種類によってワインの味が変わるように、農作物である藍草は染色時の色にその特徴があらわれるそうです。

確かにワインの世界では、同じ品種のブドウでもその土地その土地で味と香りが異なり、そのことに対して付加価値が認められています。藍もまた、生産された土地によって抽出される「色」が、その土地特有の付加価値になるのではないかと考え始めました。

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活動開始から1年半が経ち、軌道に乗ってきた工房ではありますが、希少性のある原料を自家栽培することで他社と差別化し、グローバルブランドとのコラボなども視野に入れられるようになります。

「気仙沼ブルー」によって商品の付加価値を高め、世界レベルのクオリティを生み出せるようになりたい。そうやって利益率を上げることで、現在働いてくださっている女性の就労日数を増やしたり、より多くの女性を雇うことができます。将来的にはお子様が小学生に上がるタイミングでフルタイム雇用への転換を促したりと、女性のライフステージに合わせた就労体系をとっていければ。今はまだ小規模ですが、そんな未来を描いています。

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OCEAN BLUEでは現在、このプロジェクトに必要な費用を集めるため、「Ready for?」でクラウドファンディングを行っています。支援者には、名入りの藍染め前掛けなど、店頭でも買えない商品がリターンとして贈られるとのこと。藤村さんの想いに共感した方は、ぜひ応援してみてください!