ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

5 months ago - 2016.07.12

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市民のほしい未来づくりに、テクノロジーはどう寄り添えるのか。「CIVIC TECH FORUM 2016」より、金沢市におけるシビックテックを話し合ったセッションをレポート!

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こちらの記事は、greenz peopleのみなさんからいただいた寄付を原資に作成しました。

みなさんは自分の住んでいる地域について「ここがもっとこうだったらな…」と思ったことはありますか?

そんなとき「まあしょうがないか」と諦める人もいれば、周りの人に話してみる人、すぐさま行政に相談する! という人もいるかもしれません。

そうした地域の問題を、そこで暮らす市民が主体となって「テクノロジーの力で解決していこう!」と立ち上がる動きが「CIVIC TECH(シビックテック)」と呼ばれ、国内外でどんどん広がりをみせています。

たとえば、ややこしいと思いがちなゴミ出しのルールをわかりやすく管理できるスマートフォンアプリや、お母さん同士が子育てを気軽にお手伝いしあえるマッチングサービス。ほかにもドローンで宅配便を届けるようなシステムなど、これまでにない解決策が生み出されています。

そんな「シビックテック」を語りつくすカンファレンスとして、3月27日に東京の建築会館で開催されたのが「CIVIC TECH FORUM 2016」。

今年が2度目の開催となるカンファレンスのテーマは、「ローカル、ビジネス&テクノロジー」。パネルセッションのテーマも国内外の事例紹介にとどまらず、資金調達やシビックテックの根本的な哲学まで多岐にわたり、企業や行政に勤める人々から学生まで、300名以上の参加者がシビックテックの今と未来について話し合いました。
 
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そして会場ではパネルセッションに加えて、各地域の特産物を集めたマルシェや、子ども向けのプログラミング学習ツールの体験コーナーなども! たくさんの人でにぎわう会場のなかにいると、なんだか地域のお祭りに来たような気分に。
 
civictechforum2日本各地の特産品や温かいコーヒーが並ぶマルシェの様子。会場でのみ通貨として使える「CTFコイン」も配布されました。

civictechforum14子ども向けプログラミング学習ツールの体験ブースは大にぎわい。子どもだけではなく大人もついつい夢中になってしまいます。

そんな「CIVIC TECH FORUM 2016」から、今回は金沢市の事例をもとに地域におけるシビックテックを語りあったパネルセッション「まるごと金沢市 ローカルにおけるシビックテックの役割」の様子をレポートします。

コード・フォー・カナザワと地域がむすぶ多様なつながり

パネルセッションを率いたのは、地域課題をICTの力で解決しようとする市民参加型のシビックテックコミュニティ「コード・フォー・カナザワ」の代表理事をつとめる福島健一郎さん。

パネラーには、金沢市の市長公室情報政策課に勤める松田俊司さん、北陸初のNPOバンク「ピースバンクいしかわ」の代表理事である小浦むつみさん、金沢工業大学の中沢実教授や、輪島市内で子育てコミュニティの中心となって活動している山上幸美さんが登壇。それぞれの活動と「コード・フォー・カナザワ」との関わり、そこから生まれる金沢市のシビックテックコミュニティ」について意見を交わしました。
 
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「コード・フォー・カナザワ」は、地域行政にエンジニアやデザイナーを派遣するアメリカのNPO「Code for America」に刺激を受けた福島さんが、2013年に仲間とともに設立した団体。民間企業や自治体、学生などが協力しあって、自分たちの地域の問題を解決するアプリやサービスの開発を行なっています。

そんな「コード・フォー・カナザワ」の出発点となったのが、金沢市の複雑なゴミ出しをカンタンに管理できるアプリ「5374.jp(ゴミなしドットジェイピー)」。

このアプリのコードはネット上で公開されているので、誰でも自分の住んでいる地域に合わせた「5374.jp」を作成することが可能。これまでに85以上もの都市で「5374.jp」がつくられてきたのだといいます。
 
civictechforum5アプリのコードを公開しているので、それぞれの地域に住んでいる人がカスタマイズして利用できます!

福島さんはこんなふうに個人の動きが広がっていくことは、とても「シビックテック的」だといいます。

福島さん 大事なのはアプリをつくることではなくて、場をつくっていくことです。せっかくコミュニティをやっているのだから、市民が継続して課題に取り組んでいけるような場づくりをしていきたいと思っています。

civictechforum4一般社団法人コード・フォー・カナザワ代表理事の福島健一郎さん

福島さん率いる「コード・フォー・カナザワ」が中心となるシビックテックコミュニティは、行政や大学にも広がりをみせています。

コード・フォー・カナザワを始めた頃から一緒にシビックテックの取り組みを進めてきた金沢市役所の松田俊司さんは、行政と「コード・フォー・カナザワ」の関わりについて、次のように語ります。

松田さん 福島さんは「行政がコード・フォー・カナザワを支援してくれている」とおっしゃっていましたが、私たちは「支援している」とは思っていないんです。

金沢市としてもやりたいことをやっているし、「コード・フォー・カナザワ」も同じようにやりたいことをしてくれている。たまたま目的が同じだったというだけなんです。テクノロジーやデザインを使って何かしよう! と主体的に動くコミュニティが、スピード感をもってどんどん取り組みを進めてくれるのは、行政としてもとてもありがたいです。

civictechforum6金沢市市長公室情報政策課 ICT推進室室長の松田俊司さん

一方「コード・フォー・カナザワ」は行政だけではなく、学校とも一緒に取り組みを進めています。金沢工業大学の中沢実教授は、学生が「コード・フォー・カナザワ」に参加することで得られる経験について話してくれました。

中沢さん 学生が「コード・フォー・カナザワ」の活動に参加して実際にサービスをつくっていくと、「大学のなかで学んでいることが実際にどう役立つのか?」を学んできてくれるんです。

さらに、活動のなかで力不足を実感したり、課題を発見したりすることによって、勉強の仕方が変わっていきます。

civictechforum12金沢工業大学工学部情報工学科の中沢実教授

もちろん、シビックテックコミュニティをつくっているのは、松田さんのような行政のIT担当者や、理系科目を学ぶ大学生など、ITに詳しい人だけでは決してありません。

福島さんと一緒に地域の地図アプリ「のとノットアローン」を開発した山上幸美さんは、ITについてまったくの素人だったといいます。そんな山上さんが仲間と一緒につくったのは、能登地域で暮らす母親が必要としている情報をぎゅっと凝縮した地図アプリ「のとノットアローン」です。

山上さん 行政から提供される情報は「保険の関係」「子育ての関係」といったふうに分断されていることが多かったんです。だからこそお母さんが困ったときに使いやすい地図をつくろうと思ったんです。

ある日、「のとノットアローン」を一緒に進めているリーダーが、「このアプリは手渡してプレゼントしてあげられるようなものしたいね」と言ってくれたんです。これを聞いたときに、ITって人を介してプレゼントできるものなんだと強く感じました。ITについて何もわからない自分でもこれなら関われるぞ! と思いましたね。

civictechforum7みらい子育てネット石川県地域活動連絡協議会・輪島市理事の山上幸美さん

civictechforum8屋内で遊べるところ、屋外で遊べるところ、病院、保育所といったように、お母さんの知りたい情報がぎゅっとつまった「のとノットアローン」マップ

自分たちで、自分たちのためにつくる

意欲的にプロジェクトにかかわってきた山上さんですが、当初は自分たちではなく福島さんたち「コード・フォー・カナザワ」がアプリ開発をすべて担ってくれると思っていたのだそうです。

山上さん 福島さんとお話しすることになったとき、「地域課題のニーズ調査に来てくれるのかな?」なんて思っていたんです(笑) しばらく話してから、どうやら自分たちがやらないといけないと気づいて、「これは大変なことになるぞ…」と思いましたね。

福島さん 山上さんたちが次々に地域が抱えている課題を話してくれました。そのうちに「あれ? こっち(=コード・フォー・カナザワ)が全部やるつもりでいるのかな?」と思いまして。「あくまでみなさんがプロジェクトリーダーで、みなさんにやってもらうんですよ」と説明したんです。

でも、素晴らしいのはそこでめんどくさがらずにみんな本当に自らやってくれたことです。そして見事に「のとノットアローン」を完成させてくれました。

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こんなふうに課題を抱えた人たちが、自らのために自らでつくることこそ、シビックテックの強みなのかもしれません。NPOバンクを運営する小浦さんは、商売の面からもシビックテックに大きな可能性があるといいます。

小浦さん お金を生み出すのに最も大切なのは、何について困っているのか、何をつくればいいか、誰が使ってくれるのか、ということを理解していることです。これこそが商売の基本中の基本ですよね。

それをどうみせれば手にとってもらえるのか、そうしたニーズを汲み取る力をシビックテックコミュニティは絶対にもっています。コードを書きたいからではなくて、ニーズを捉えたい。どうしてみんなが寄ってくるのかを、わかっているのがシビックテック・コミュニティだと思っています。

civictechforum10NPOバンク「ピースバンクいしかわ」代表理事の小浦むつみさん

このように、地域に溢れる“自分たちの”課題を“自分たちの”力で解決してきた金沢のシビックテック・コミュニティ。最後に福島さんは、シビックテックコミュニティにとってもっとも大切な要素「多様性」について語ってくれました。

福島さん 今日もITに関係ない人、大学の先生、NPOバンクの人、行政の人などいろんな役割の人がいらっしゃっていますよね。そうやって多様性をもった仲間が集まってくると、当然ですが多様な課題をもっている人が集まってきます。

そういう方たちと一緒にアプリやサービスをつくっていくと、「自分たちがほしい!」と信じられるものをつくることになります。「生み出したサービスを絶対に喜んでくれる人がいる」という強いモチベーションに動かされると、エンジニアも協力するし、当事者も必死でやるようになるんです。

たとえば山上さんの「のとノットアローン」などは、奥能登の人たちがみんな注目している。ほしいからつくっている。だから広告なんかなくても広まる。そうするとうまくコミュニティとして回っていく。これこそがシビックテックなのだと思います。

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すべてのパネルセッションは絵や文字を使ってリアルタイムで記録されていました。

誰でも気軽に写真や動画や文章を通じて自分の想いを世界に発信できるようになったり、世界中の人とつながることができたり。ITやテクノロジーは、私たち個人ができることの範囲をぐいぐい広げてくれます。

ひとりひとりがそうしたリソースを最大限に利用して協力しあえば、きっとこれまでにない方法で、自分たちの住む社会をよりよいものにしていけるはず。シビックテックフォーラムは、そんな想いやエネルギーで満ち溢れていました。

地域の課題もどんどん複雑化している今日このごろ。これから大切になるのは、力技で問題をなんとかしようとする大きな施策だけはなく、小さなコミュニティが自分たちのために生み出した解決策の積み重ねなのかもしれません。

みなさんも、ぜひ自分の住む地域にもシビックテックコミュニティがないか探してみたり、イベントに足を運んでみたりしてみてはいかがでしょうか。

あなたの町の近くにあるCode for コミュニティーを探すには
こちらをチェック!

writer ライターリスト

Haruka Mukai

Haruka Mukai

greenz ジュニアライター 1993年石川県生まれ三重県育ち。greenzライターインターンを経て、ジュニアライターに。大学の専攻は文化史学。好きなものはインターネットと図書館と一人カラオケ。

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