みなさん、こんにちは! 元greenz.jpライターインターンの大間千奈美です。インターン卒業後、私はアメリカ・インディアナ州にある「Earlham Collage」という小さな大学で交換留学をし、現在はシアトルにあるローカル新聞社でインターンとして記事を書いています。(現役時代の大間さんが書いた記事は、こちら!)
突然ですが、私は毎朝欠かさずコーヒーを飲むんですが、みなさんはお好きですか?
ほっと一息癒してくれる、一杯のコーヒー。でも、そのコーヒーに使われた豆が、どうやって私たちのもとに届いたのかと、思いを馳せたことは少ないかもしれません。
今回の記事の舞台、コスタリカはアラビカ豆の生産地として知られ、日本は毎月約10万キログラムものコーヒー豆を現地から輸入しています。もしかしたら今日みなさんが飲んだコーヒーも、コスタリカからはるばるやってきた豆からつくられているかもしれませんね。(出典元)
そんな私たちにとっても身近なコスタリカのコーヒー豆、実は多くの女性農家たちが生産を支えているのですが、自由に出荷価格を設定する権利が保障されていないために、一杯のコーヒーから得る収益は、たったの17パーセント。
その収益は、同じくコーヒー豆を生産する男性の農家と比較すると、21パーセントも少ない金額であり、彼女たちの不安定な経済基盤と社会的地位は一つの社会課題になっています。
そんなコスタリカの女性コーヒー農家たちの現状を目にした、私と同じ「Earlham Collage」に通うコーヒー好きの学生5人が、彼女たちが経済的にも家庭内の役割の上でも自立できるように、「Bean Voyage」というプロジェクトを立ち上げました! そして私は今、彼らのプロジェクトを手助けしたいという思いで「READY FOR?」でクラウドファンディングに挑戦しています。
コーヒー農家が住むPerez Zeledon州での景色
コーヒー豆の生産者を想像する手助けをしたかった。
Nowhere is the world closer(世界が最も近い場所)
というキャッチフレーズのごとく、世界47か国以上から集まった、さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが通う「Earlham Collage」では、授業や寮での生活、海外でのフィールドワークを通して多くの学生がグローバルな視点で学んでいます。
そこで学んだ経験をもとに、5人の学生が始めたソーシャルビジネスに取り組むチームが「Bean Voyage」。彼らのミッションは、消費者に良質なコーヒー豆を届けるとともに、その生産に従事する女性農家がどのように、そしてどんな想いでコーヒー豆を育てているか伝えること。
彼らが販売するコーヒー豆のパックには、スキャンすると、どのくらいの金額がどんなコーヒー農家に届いているかわかるバーコード付き。さらに、コーヒーを育てる過程や思いをつづった農家からのメッセージカードが届けられ、消費者と生産者のつながりを“見える”化しています。
プラットフォームをつくる様子
専攻も国籍も異なる学生5人のチーム「Bean Voyage」
「Earlham Collage」でビジネスを専攻する、韓国出身のSungHee Tark(以下、スンヒさん)、そして政治学専攻でネパール出身のAbhinav Khanal (以下、アビノフさん)のふたりは2014年夏、フィールドワークでコスタリカを訪れました。そのとき目にしたのが、地元の農家が重労働にも関わらず、生活するのに十分な収益を得ていない現実だったそう。
ふたりはフィールドワークを経て、農家自身に価格決定の主導権がないこと、農家コミュニティの中でも、特に女性農家の存在が十分に評価・認識されていないことを知ります。
コミュニティ内にある暗黙の「女性の役割は家事、男性は仕事」という価値観。それが女性農家たちの社会進出はもちろん、ビジネスにおける決定権をも阻み、農園が得た収入をどのように家族で割り振るかなど、家庭内での発言権さえも奪われていたといいます。
コーヒーを育てる過程も含め、日々の仕事の多くは女性が行っているのに、夫婦の関係の中でも、入った収入を家族でどのように使うか、その発言権が女性にないのはおかしい!
スンヒさんとアビノフさんは、そんな思いを抱いたと言うのです。
コスタリカのフィールドワークの様子
それから1年後、スペイン・グラナダの短期留学先でアビノフさんは、非営利経営を勉強するドイツ出身のSohrab Amiri(以下、ソラッブさん)と出会います。
ふたりは「社会課題への取り組みをビジネスにしたい」という思いで意気投合。試行錯誤し、時にコーヒーショップで話す日々の中、「自分たちが毎日飲んでいるコーヒーを動機に加えてみたらどうだろう?」というアイデアにたどり着きました。
こうして、「毎日飲むコーヒーの先に、苦しんでいる人がいる現状を変えたい!」という共通の思いをもったメンバー5人が集結。
メンバーはソラッブさんと、コスタリカのフィールドワークに参加したアビノフさんとスンヒさん。他にも、SNSやWebサイトなどの技術面に優れ、学校のサッカーチーム代表でもあるVictor Zunigaさん、心理学とフォトグラフィー専攻し、広報やパッケージのデザインを担当するBryan Tiptonさんです。
「Bean Voyage」のメンバー
アビノフさんとスンヒさんは、この夏にもう一度コスタリカに訪れ、生産者と事業場の調整を行う予定。他の3人は、アメリカで経営上の法的手続きとオフィスや装備の調達を進行中です。
そしてさらなる調査と地元の農家との具体的な契約・交渉を行い、2016年暮れまでには農家と提携し、事業をスタートすることを目指しているのだそう。
「Bean Voyage」が踏み出した小さな一歩、それが生み出す大きな変化
そんななか、私が通っていた「Earlham Collage」のキャンパスでは、「Bean Voyage」が立ち上がってから、これまで話題にもあがらなかった“コスタリカ” “女性” “農家” といった言葉をよく聞くようになりました。
「あの5人なにをやっているんだ?」
「何をあんなに一生懸命に伝えているんだろう?」
そんな疑問から「Bean Voyage」のメンバーに注目が集まり、普段何気ない会話しかしなかった友だちとも、先進国・途上国の格差の問題、男女格差についてディスカッションをするようになったのです。
「Bean Voyage」の活動に接した私は、彼らの掲げるビジョンと、学校のみんながほしいと思っている未来にはすごく近いものがあると確信。そして、頑張っている彼らをサポートして、校外にも共感の輪を広げたい! そう思うようになり、私も立ち上がることにしました。
挑戦するのは、READY FOR?でのクラウドファンディング。「Bean Voyage」が1年目に仕入れる約800kgのコーヒー豆の資金、日本円で計45万円を集めることが目標です。
キャンペーンは5月30日まで。クラウドファンディングが成功すれば、この資金をつかって「Bean Voyage」は、コスタリカの女性農家たちの育てた豆をフェアトレード最低基準より25%以上高い値段で仕入れることができるようになります。
みなさんも、彼らのキャンペーンをサポートすることで、コスタリカの女性農家が貧困から抜け出す一歩をサポートしていただけるとうれしいです!
READY FORでのクラウドファンディング
日本から1万キロも離れたところにあるコスタリカ。インディアナ州からも飛行機で7時間以上かかる現地に住む女性のコーヒー農家が、日々どんなふうにコーヒーを栽培しつつ、どんな思いで生活しているのか。コーヒーだけではなく、きれいなパッケージに包装された商品の先に、いつもの生産者とストーリーがあることを想像するのはなかなか難しいかもしれません。
「Bean Voyage」のメンバーは、女性農家たちのストーリーを描き、消費者にたどり着くまでの過程を伝えることで、買った消費者がコーヒーを楽しむことはもちろん、私たちが支払ったお金が持つ影響力について気づいてほしいと考えています。
みなさんも今回のクラウドファンディングに参加して、改めて私たちが商品を選び、買うことについて考えなおしてみませんか? 日々の商品の選択で、サポートできることがある。それに気づき行動していくことが、他人ごとに感じてしまいがちな社会課題の解決の第一歩になるはずです。
Bean Voyageからのメッセージ
(Text: 大間千奈美)