みなさんは、ふだん電車やバスに乗って移動するとき、何をして過ごすことが多いですか?
スマートフォンやタブレット端末が普及したことで、SNSやゲームをしたり、電子書籍を読むなど、以前に比べて電車での過ごし方は多様になりました。今までは紙の本や新聞を読んでいたけれど、最近はあまり手にしなくなったという方は多いのではないでしょうか?
そんな現代の本離れを止めるべく、本を読むと公共交通機関に無料で乗れる「Travel by book」というキャンペーンがルーマニアで行われました。
このキャンペーンは、ルーマニアのクルジュナポカにて、Victor Miron(以下、ビクターさん)によって発案されました。4日間のキャンペーン期間が設けられ、フィクションやノンフィクション、ハードカバー、ペーパーバックに限らず、市のバスの中で紙の本を読んだ人は運賃無料で乗れるというもの。
ビクターさんは、このキャンペーンを思いついた背景について、こう話します。
実はクルジュナポカでは、すでに学生と年配者向けに公共交通機関を無料で利用できるサービスがあるんです。
私はそれにヒントをもらい、公共交通機関に乗っている人々が本を読んでいる人を見かけたら、彼らも本を読みたくなるのではないかと考えました。そこで、本を読んでいる人々にも、無料で利用できるサービスを提供することにしたんです。
実は、ビクターさんは「もっと本を読む人を増やしたい」という思いから、過去にもFacebookを使ったキャンペーンを実施したことがあるそう。その経験もいかしながら、今回の公共交通機関とのキャンペーンに向けて、いくつかアイデアの候補を考えたのだとか。
このアイデアは「バスの中で本を読もう」という呼びかけの中の3つ目のアイデアでした。
初めのアイデアは、すべてのバスに本を置く案でした。しかしたくさんの本を取りそろえること、そのための本棚を設けなければいけないことを考えた結果、2つ目のアイデアを思いつきました。それは本を読むように奨励するメッセージをバスに載せることでした。
そして最終的に、人々が本を読んでいる様子を見て、「本を読もう」という良い刺激を受けられ、また本を読んでいる人自身は無料で公共交通機関に乗れるというこのアイデアを思いつき、実現されることになったのです。
市長に提案してから実行に移るまで約1年をかけたこのキャンペーンは、実施が決まるとたちまち地域住民の人からたくさんの反応が返ってきて、Facebookのイベントページには予約が殺到したそう。
またビクターさんによると、「期間中すべてのバスで、最低一人は本を読んでいる人がいた」とのことで、このプロジェクトが成功した様子が伺えます。この成功を受けてビクターさんは、このイベントを定例化し、地元のブックフェアと連携したり、もっと開催する都市を増やしたいと考えているのだとか。
便利な道具が増え、公共交通機関での移動にあえて分厚い本や、かさばる新聞を持ち歩く必要はなくなったのかもしれません。しかし紙の本や新聞には、周りの人と読んでいるものを共有し話の種を生むなど、スマートフォンやタブレットにはない魅力があるはず。
いつもなんとなく過ごしてしまっている移動時間の過ごし方を、いま一度、考え直してみるのもいいかもしれませんね。
[via:GOOD, boredpanda, Facebook]
(Text: 岩崎史香)