みなさんはニューヨークというと、どんな街をイメージしますか? ファッション・音楽・演劇などのアーティストが集まる街、もしくはウォール街で働く金融の街というイメージを抱く方が多いかもしれませんね。
そんな華やかなイメージの一方、ニューヨーク市の調査によると、昨今、ホームレスの数が1930年代の世界大恐慌の時と同水準まで増加し、なんと約6万人がシェルターでの生活を余儀なくされているそう。(参照元)
とはいえ、ホームレスの人を見かけて「何かしてあげたい」と思っても、なかなか行動に出るのは難しいもの。では、その「何かしてあげられたら……」という気持ちを、どうしたら支援につなげることができるのでしょうか。
そんなモヤモヤを抱えていた、ニューヨーク在住のIlya Lyashevsky(以下、イリヤさん)が思いついたのは、アプリを開発することでした。
イリヤさんが開発したのは、ホームレスの人を見たときにボタンをタップするだけで寄付につながるアプリ、「WeShelter」。
使い方はとてもシンプル。道端でホームレスの人を見かけたときに、真ん中の緑のボタンをタップするだけ! すると自分のお金ではなく、企業スポンサーを通じて、ニューヨーク市の「Common Ground」、「Goddard Riverside Community Center」、「Urban Pathways」という3つのホームレス支援団体のいずれかに寄付されるのです。
寄付は5セントからでき、タップする分だけ寄付される仕組み。いつも持ち歩いているスマートフォンで使えるアプリだからこそ、シンプルに削ぎ落とされた機能で、とっさに誰でも使いやすいですね。
真ん中の緑のボタンをタップするだけ!タップすると「You’re awesome」という表示に
このアプリの持つ機能は、寄付だけではありません。イリヤさんは、ニューヨーク市のホームレス支援担当者につながる、専用ダイアル(311)への電話を簡単に行える機能もつけたのです。
この機能があれば、万一ホームレスの人の緊急事態が起こっても、即座に通行人が行政へ連絡することができます。またアプリの機能を生かし、スマートフォンの位置情報から、ホームレスの人の現在位置を把握し、支援サービスやアウトリーチの活動場所の選定に生かすこともできるのだとか!
寄付の頻度や回数に応じたコメントが表示されます
ちなみに、アプリを通じて寄付されたお金は、主に住宅のサポートに使われます。なぜなら、ニューヨーク市によると、人々がホームレスになる原因の多くは、立ち退きや高騰する住宅費によって住宅を手放してしまったこと。そのため、彼らの生活環境を向上させるために、優先度が一番高い住宅のサポートを中心に支援しているのだといいます。
「WeShelter」のクリエーターであるイリヤさんは、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学んだ後、これまで数々のモバイルアプリを企業やNPO向けに開発してきました。
「テクノロジーで真に社会に意義のあることをしたい」ということから、このプロジェクトはプロボノとして取り組んでいるそうです。
「WeShelter」は、物資や資金の寄付の新しい形ではありません。問題の解決するために、行政、企業や支援団体だけではなく、より多くの人を巻き込み、街の人々とホームレスの人の心を通わせたいと思っています。
と話す、イリヤさん。
共同創設者のイリヤさん
ホームレスの自立や社会復帰を目指すためには、周囲の人、つまり私たちが持つ些細な「何とかしてあげたい」という気持ちを育てていくことが必要なのかもしれません。
この機会に改めて、みなさんも自分の住む街のホームレスの現状について、目を向けてみませんか?
[via Fast Company, Huffington Post]
(Text: 笹澤つかさ)