ISSUE ものづくり

2 years ago - 2014.11.06

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思いやりがなければ、ファッションじゃない!あなたとペットをハッピーにする、ポートランド発のおしゃれな眼鏡屋さん「Fetch Eyewear」

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© Fetch Eyewear

眼鏡を買うとき、あなたが選ぶポイントは何ですか? 

飽きのこないベーシックなものから、ちょっと変わった流行のデザインまで、店頭に並ぶ数多くのフレームからお気に入りの一本を決めるのは、なかなか時間がかかりますよね。

そんな中で、もし「この眼鏡の購入代金の一部は、捨てられたペットのために使われます」という眼鏡があったら、ちょっと気になりませんか?

今回は、スタイリッシュな眼鏡を提供しながらも、利益を全てアニマルシェルターに寄付しているアメリカのオレゴン州ポートランド発のユニークな眼鏡屋さん「Fetch Eyewear」(以下、「Fetch」)をご紹介します。

小さな眼鏡屋さんの、大きなビジョン

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© Fetch Eyewear

創業者のAnn Sacksさん(以下、アンさん)が、「Fetch」の前身となる「Amy Sacks Eyewear」を起業したのは、2004年。きっかけはアンさんが老眼鏡に対して抱いていた、ある不満からでした。

老眼鏡を買おうと思った時の選択肢が、ドラッグストアなどで販売されている安価な使い捨て製品か、非常に高価なデザイナーブランド製のどちらかしかない、という現状に疑問を覚えていました。

自分にピッタリの一本を探そうと、値段の高さをグッとこらえてデザイナーズブランドの老眼鏡に大金をはたいてはみたものの、数日後にはどこかに置き忘れてしまい、二度と手元に戻ってこなかったこともありました。

こうした状況を改善するために、デザイナーズブランド品と同等、もしくはそれ以上の品質の老眼鏡を、その何分の一かの価格で提供したい、と思ったのです。

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「Fetch」の創業者アンさん  © Fetch Eyewear

タイル業界に長年携わり、現在もタイルや石、木材を扱う「Design and Direct Source」の社長という顔を持つアンさん。経験を生かしながら、デザイナーズブランドの眼鏡がなぜ高価なのか、その原因を探り始めます。

すると、フレームには素材費用代だけではなく、大手企業のライセンス費などが課されているために価格が跳ね上がっている、という仕組みに気付きます。

そこで仕入業者や製造業者などのサポートを受けながら、自社ラインを構築して生産コストを抑えた眼鏡づくりに成功。デパートやブティックなどを通して販売開始すると、洗練された老眼鏡コレクションが話題となります。

2006年にはオンラインショップをスタート。2010年には度付き眼鏡も商品ラインナップに加わり、客層も幅広くなりました。
 
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アートや写真、建築などに精通するデザイナーたちが、各々のインスピレーションを大切にしながら協同作業でフレームを設計しています。 © Fetch Eyewear

素材には植物性のセルロースアセテートを用い、べっ甲や水牛の角などの動物性原料は一切使用しない”ヴィーガン製”です。

価格帯も85~135ドル(約9,163~14,553円)程度に設定。およそ200~400ドル(約21,560~43,120円)位するデザイナーズブランド眼鏡に比べると、かなり手の届きやすい値段であることがわかります。

試着は自宅でゆっくりと!じっくり悩めるフレームの出前サービス

「Fetch」が人気を集めている理由は、これだけではありません。「Try at home」という、自宅でフレームが一週間試着できるサービスがあるのです。
 
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選択した6つのフレームが自宅に届きます。(現在はアメリカ国内のみでのサービス)  © Fetch Eyewear

申込方法は簡単です。オンライン上から気に入ったフレームを6つ選び、クレジットカード情報を登録するだけ。自分の顔の形や髪色などを選択してチェックボックスをクリックすると、おすすめのフレームが表示されるのも参考になります。

自宅にフレームが届いたら、じっくり試着。家族に感想を聞いたり、職場や学校に持参して友人にアドバイスを求めたりしながら、ゆっくり悩めるのがうれしいですね。

どのフレームにするか決まったら注文し、同封された返送ラベルを貼って期限内にそのまま返送すると、申込時にホールドされていた125ドル(約13,475円)が解除されます。

フレームには生涯保証がついているので、うっかり踏んづけてしまったり、万が一ペットに噛まれてしまったりしても修理交換してくれます。

また、「Fetch」のフレームなら、レンズ代の負担のみで度付き眼鏡からサングラス、老眼鏡に交換してくれるサービスも。長く安心して眼鏡が使用できるので、顧客からの信頼度が高まっています。

あなたの買う眼鏡一本が、一匹の動物を苦しみから救う

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© Fetch Eyewear

「Fetch」が眼鏡屋さんとしてのユニークさを最も際立たせているのが、全ての利益をポートランドのNPO「The Pixie Project」に寄付している点です。

「The Pixie Project」は、アンさんの娘であるAmy Sacksさん(以下、エイミーさん)が代表を務める、民間のアニマルシェルター。

収容頭数を上回る行政が運営するシェルターなどと協同して、飼い主のいない犬や猫を保護し、健康管理や去勢避妊手術、里親探し、コミュニティへの啓発活動などを行っています。

また、ホームレス状態や低所得などで治療代を捻出するのが難しい人々が飼うペットに、去勢避妊手術や獣医ケアを無償もしくは割安で提供もしています。

2013年には、200匹以上の犬や猫に去勢避妊手術や病気予防ケアを実施し、250匹以上に新しい飼い主を見つけることに成功しました。動物たちが一生飼い主を見つけられず、病気や天敵の恐怖に日々さらされるといった必要のない苦しみを味わうことのないよう、熱心な活動を続けています。
 
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「The Pixie Project」のスタッフと保護されている動物たち。前列右から二番目がエイミーさん。 © The Pixie Project

「Fetch」で販売している眼鏡一本分の代金は、「The Pixie Project」で犬や猫一匹分の去勢避妊手術と病気予防治療代に相当するのだとか。動物福祉の向上に大きく貢献している「Fetch」ですが、アンさんが動物に深く関わったきっかけは何でしょうか?

ミシガン州での大学時代に現在の主人と、猫への去勢避妊手術や里親探しなどの活動を行っていました。それまでは猫を飼ったこともなかったのですが、卒業してオレゴン州に引越してきた後には、猫3匹と犬一匹と共に暮らすほどの動物好きになっていたから不思議なものですね。

犬の散歩をしていると、他の飼い主さんと立ち話をする機会があるのですが、そこでペットにまつわる様々な問題を耳にしました。

救助活動への早急な必要性を感じ、私や主人が働けなくなる前に、動物救助のための継続的な収入源を生み出しておかなければ、と思ったことが起業したもうひとつの理由です。

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「The Pixie Project」で里親を探していた、猫のジョージ。誰にでもとてもフレンドリーなので、現在は「Fetch」でお客さんをお出迎えする“看板猫”として活躍中です。  © Fetch Eyewear

2012年8月、アンさんは会社のミッションをより明確にするため、現在の「Fetch Eyewear」に社名を変更します。

「Fetch」は、動物とファッションの両方に関係のある言葉です。犬にボールなどを投げて取って来させるときに「Fetch!」と言うことと、服装が似合っていて魅力的なときに「You look fetching!」と褒めることから決めたのだとか。

こうした再ブランドも功を奏し、現在では、ニューヨーク、カリフォルニア、ハワイなどのアメリカ国内22州とカナダを含めた、100以上もの販売店で取り扱いされるなど、「Fetch」への共感の輪はますます広がりを見せています。
 
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© Fetch Eyewear

二度と使わない商品を買うのは、もう卒業

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© Fetch Eyewear

アンさんが、ビジネスを続けるにあたっての思いについて教えてくれました。

「Fetch」の真のミッションは、動物福祉の向上です。全ての動物は健康で幸せな暮らしを送る資格がある、という強い信念を持っています。

これからの慈善活動は、買っても二度と使わないような商品を購入することはないと思うのです。あなたにとって本当に必要で、実際の生活で使用されるものにお金を払うことで、お金が社会にきちんと還元され、あなたが助けたいと思っていることをサポートすることにつながるべきです。

「Fetch」の眼鏡を着用することで、「Looking Good and Feeling Good」(見た目も良く、気分も良くなる)というビジョンを共有し、ファッションは思いやりの心がなければ存在しえない、という思いを支持してくれるお客様に心から感謝しています。

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© Fetch Eyewear

一匹でも多くの動物を幸せにしたい、という大きなビジョンを持った、小さな眼鏡ショップ「Fetch」。眼鏡という日々の暮らしの中で身に着ける製品を通じて、動物との絆を感じられるだけでなく、使う人の心も豊かにしてくれます。

動物を助けたいという一心で購入する人も、おしゃれな眼鏡が欲しい人も、忙しいから家で試着できるのがうれしいという人にも・・・。様々な方向性から人を惹き付ける起点があることで、更なる可能性を感じさせますね。

「Fetch」が追求する会社理念とスタイルは、これからのチャリティ活動のあり方を考えさせられるだけでなく、社会を良くするためのビジネスを模索している企業にも、参考になる部分があるのではないでしょうか。
 
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© Fetch Eyewear


「Fetch Eyewear」の紹介ムービー。(約3分、英語) © Fetch Eyewear

「Fetch Eyewear」のファンになろう!
「Fetch Eyewear」facebookページ(英語)

writer ライターリスト

デラベキア 牧枝

デラベキア 牧枝

greenz ライター Makie DellaVecchia 宮城県仙台市の国際交流協会、中間支援NPOなどで勤務後、2012年に米国に移住。オレゴン州ポートランド、コロラド州デンバーと引越し、現在はミシガン州アナーバーで夫と猫と暮らす。 動物保護、環境、貧困、食(ベジタリアン、ヴィーガン)にまつわるソーシャルビジネスに関心があります。

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