毎年恒例となっている「カンヌ国際クリエイティビティ祭」のソーシャルグッドな受賞作紹介。2014年の受賞作も発表になったので、今回から長期連載でご紹介していきます。今回ご紹介するのは、アラブ首長国連邦の受賞作です。
政治の場やスポーツの世界で、活躍が目立つ女性たち。20世紀前から始まった女性たちの運動の成果として、法的な整備が進み女性たちの社会進出は、どんどん進んでいます。
しかし、身の回りの現実はどうでしょう。都議会や国会でのヤジの問題に見られるように、まだまだ差別的な意識は根強く、厳しい立場に置かれている女性たちも少なくないのではないでしょうか?
そんな状況を変えるため、国連はキャンペーンを実施しました。キャンペーンの中心に据えたのは、女性に対する意識を事実として見せること。
事実を見せるために、これまでは調査やインタビューなどが行われてきましたが、今はもっと違う道具があります。それはGoogleで、検索頻度の高いワードの組み合わせを候補として表示する「サジェスト機能」です。
そんなGoogle検索で“women should”(女性たちは〜すべきだ)と入力してみると、なんと“women shouldn’t vote”(女性たちは投票すべきではない)とか、”women should stay at home”(女性たちは家にいるべきだ)などといった言葉が候補として出てくるのです!
Googleのサジェスト機能に使われるのは、1日に10億回ともいわれる検索履歴を蓄積した膨大なデータ。もはやその検索データは、表に出ないひとつの現実を映しだす、世界の鏡だと言っても過言ではありません。そこに着目した国連は、この検索候補をキャンペーンの核とし、「女性たちはこの状況を受け入れない」というメッセージを打ち出しました。
そして同時に、過去一世紀近くにわたって女性の社会進出や権利がどのような変遷をたどってきたかを、エモーショナルに振り返る一分半の映像をYouTubeで公開。映像を観た人々に、ハッシュタグ「#womenshould」をつけてソーシャルメディアで拡散することを呼びかけました。
公開された一分半の映像
Google検索という、今や世界中の多くの人びとが日常的に利用するようになったツールが示す真実は衝撃をもって拡散され、たくさんのブロガーが記事にするのはもちろん、テレビやラジオといったマスコミでも議論の種となりました。
そして映像はなんと1億2000万人以上に視聴され、2013年に最も多くシェアされた広告映像に。隠された真実が表だって語られるべき問題となったことで、女性に対する差別に世界中の人が気づき、声を上げる機会をつくりだしたのです。
#womenshouldのハッシュタグがついたツイートは、英語だけでなく、世界中の様々な言葉で発信されました。
2014年が半分を過ぎた今も、Googleで「women should」と検索するとネガティブな言葉が現れます。この状況が一刻も早く改善されるよう、女性はもちろん、男性も声を上げつづけていかなければいけませんね。
ソーシャルグッドな「Cannes Lions 2014」受賞作の紹介は、まだまだ続きます。次回をお楽しみに!
(翻訳アシスタント:スズキコウタ/「greenz global」編集部)