たくさんの人が行き交う都会では、まわりに気を配る余裕をもつのは至難の業。街ですれ違った人の顔なんて覚えてない、という人も多いのではないでしょうか。
朝の通勤ラッシュなら、それはなおさらです。人ごみをかきわけ、必死にバスや電車に乗り込む時、「運転手さんてどんな人だっけ?」なんて考える余裕はなかなか持てません。
そこでイギリスのフリーカメラマン、Joel James Devlin(以下、ジョエルさん)はロンドンのバス会社「Go Ahead London」とタッグを組み、運転手さんの人柄が伝わるような写真を撮影するという新たなプロジェクトを立ち上げました。
撮影はロンドンを舞台に4日間にわたって行われました。写真には、笑顔で前を見つめ、背筋を伸ばし、しっかりとハンドルを握る運転手たちが一人ひとり登場します。バスの運転手さんってこんなに個性豊かなんだと、あらためて気づかされますね。
また、運転する姿に重なって、フロントガラスにはロンドンの街が映し出されています。バスのフロントガラスに映る景色は、運転手の街でもあり、みんなの街。ひとりの物語にフォーカスすることで、その集合体が街なんだということが浮かび上がってくるようです。
このプロジェクトの目的について、ジョエルさんはこういいます。
時に気づかれず、感謝されにくい人たちに光を当てること。
「写真のあの人が運転しているかも」という気持ちを持った瞬間、雑多な景色の中からひとりの人間がパッと浮かんでくる。次にバスに乗るときには運転手の顔をみて、目が合えばお互い微笑んでみたり…そこにはすでに、ゆるやかな繋がりが生まれそうですね。
街の生態系が見えてくることで、そこに人がいたんだと、ほっとするような気持ちになります。清掃員のおばちゃんや表に出てこないエンジニア、はたまた人でなくとも…と、撮ってみたいものは他にも色々浮かんできますね。
みなさんならどんなものにレンズを向けてみたいですか?
(Text:伊藤一馬)
[via Co.Design]