ISSUE☆連載 ハローライフなひとびと

2 years ago - 2013.12.18

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誰かに贈りたくなるクッキーを。富ヶ谷の「SAC about cookies」に聞く、小さなお店のはじめかた

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SAC about cookies

代々木公園駅から歩くこと10分。渋谷区富ケ谷の静かな住宅街を抜けて、八百屋さんや花屋さんが並ぶ通りに、「SAC about cookies」はあります。

店内には、色とりどりのデコレーションがされたアイシングクッキーが、机いっぱいに並べられています。そのデザインはクマやネコ、またクリスマスやハロウィンなど季節に合わせたものなど、さまざま。

「たまたまクッキー屋さんになったんです」と言うオーナーの桜林直子さんに、お店を始めた経緯を聞きました。

自分にできること=お店を出すことだった

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お話を伺った桜林直子さん

もともと桜林さんは、チョコレートやケーキなどを扱う洋菓子屋さんに、販売や企画として11年勤めていました。働き方について考えるようになったのは、「出産がきっかけだった」と言います。

子どもが小さいときって、熱を出したり学校の用事があったりして。ずっとお店にいなければいけない販売員の仕事を続けるのは難しいかもと、そのとき思ったんです。

そこで「家に持って帰れる仕事を」と、事務職をすることに。商品やパッケージの企画から、お菓子の製造数の管理などを一人で行っていました。また、新店舗の出店に2回携わり、結果的にこの経験がお店を出すことの“練習”になっていたそうです。

自分のお店を持とうと思っていたのですか?と尋ねると、「考えたこともなかったです。むしろ、嫌だと思っていたくらい(笑)」とのこと。

みんなには大変だけど、自分は楽にできること。そういう「自分ならできること」をいつも選んできました。例えば仕事も、最初は販売員と製造の両方やってみて、接客の方が向いているかも、と販売員を選びました。

SACも、会社員としてではなく、個人なら何ができるか考えたときに、お店を開くことならできると思ったんです。事務職をしていたから利益率など数字で全体をイメージできるようになっていたし、運営面も不安はありませんでした。

そして、仕事の引き継ぎなどを考慮して、会社を「二年後に辞めます」と伝え、その間に勉強したり準備をすすめていきました。

トントン拍子で開店へ

準備の一つとして物件探しも行いました。「オンラインショップでもいいけど、お店を出すなら家の近くがいいな」と、軽い気持ちで不動産屋へ。

「このくらいの面積で、こういうことやりたいんです」と伝えたら、ここの大家さんを紹介してくれて。もともとご夫婦でとんかつ屋さんをやっていたみたいなんですけど、店仕舞いした後はおばあちゃんが二階に住んでいて、ずっと一階を貸してなかったんです。

夜遅くまで営業しないことと、騒がしくないこと、それから内装をあまり変えないという条件が合って、借りることになりました。ここじゃなかったら、やっていなかったかもしれないですね。

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季節ごとのデザインも。いまはクリスマスクッキーが並びます。

その後の開店準備もスムーズに進みました。

開店までにやることは分かっていたし、内装は工務店をしている小中学校の同級生にお願いして、予算内でできるように細かく調整することができました。機材も「このメーカーのこの品番を揃えてたいです」とお願いするだけで良かったので、特に苦労することはなかったですね。

内装はあまり変えない条件だったので、工事も二週間くらいで終わりました。床もそのままで、ちょっと古い感じがアンティークの家具と合うんです。

こうして2011年10月にオープン。会社を退職した一ヶ月半後のことでした。

誰かに贈りたくなるクッキーを

ところで、なぜ商品をクッキーに絞ったのでしょうか。
その理由は、「贈りもの」がカギのようです。

お菓子がすごく売れるときって、誕生日とかバレンタインとか、贈りものとして買うときが多いんです。「みんな、こんなに食べ物をあげるんだなぁ」と、ずっと贈りものそのものに興味を持っていました。

それで、「食べ物×贈りもの」というかけ算で考えたときに、クッキーがいいなと思ったんです。チョコレートはたくさん製造するには技術や機械が必要だけど、クッキーならの特別な機械もいらないし、季節でも合って、日持ちもするし、とても効率がいいんです。それに配送できるので全国どこにでも届けられる。そうやって色々考えた結果、クッキーになりました。

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ギフトボックスもさまざま。

実際に、SACでは贈りものとして買うお客さんが多いそうです。

例えばネコが描かれたクッキーなら「ネコ好きのあの人に」という風に、誰かあげたい人を思い浮かべてもらうことが本当に多くて、すごく嬉しいですね。

一番人気はNICOちゃんのクッキー。金物屋さんで型を作ったというSACオリジナルのデザインです。「箱を開けたらクッキーが笑ってる、っていいですよね」と桜林さんも笑います。

この顔の部分の穴が空いているとちょっと面倒ではあるのですが、この一手間がすごく大事なんです。

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こちらもおもわず笑顔になるNICOクッキー

柔軟な働き方を叶えてくれるクッキー

また、クッキーは柔軟な働き方にも合っていました。

クッキーは日持ちするので、その日中にやらなくても大丈夫な作業が多く、自分でいつ何をするか決めることができます。

ケーキの場合は一日しか持たないから、開店前の朝早くから作らなければいけないし、繁忙期は夜遅くまで残業するのは当たり前という世界なので、すごくハードな仕事なんです。途中で挫折してしまう人もとても多いし、そういう人たちをずっと見てきて、もったいないなぁと思っていました。

この辞めてしまった人たちの中から一人が手を挙げてくれて、現在は二人体制でお店を回しています。

はじめから二人でやるつもりで考えていました。もともと時間に縛られず柔軟に働きたいと思ってお店を始めたので、もう一人にお店を見てもらって、私がずっとお店にいなくてもできるようにしています。

販売員をしていたときに、ただお客さんを待つ辛さや、スタッフを持て余してしまうことをずっと経験してきたので、オンラインショップとかオリジナルクッキーの製作とか、外に向けて発信することは意識しています。

ハードなお菓子づくりの世界を経験し、自分もスタッフも働く環境をより良くしようと心がけている桜林さん。最後に、働く上で大事にしていることを聞いてみると、「機嫌よく働くことですね」と返ってきました。

仕事って、嫌なもので大変だというイメージがありますが、それをなくしたいんです。「明日、仕事なんだよね…」という人は多いし、私も会社員時代は楽しいといえるほどではありませんでした。

でもそうやって辛そうに働いていたら、たぶんお客さまに伝わると思うんです。逆に楽しそうにしていたら、楽しそうだなって思ってもらえる。特にSACは小さなお店だからこそ、伝わりやすいのかもしれません。

お話を伺っている間も、桜林さんが楽しそうに話しているのが印象的で、そのお人柄は温かいお店の雰囲気にも出ている気がしました。

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柔軟に時間を使うこととクッキーのお店を持つこと。一見すると接点がなさそうな二つのことも、桜林さんなかでは見事につながっています。自分の求めているものと、自分ならできることを組み合わせてみることで、本当に自分に合った働き方や暮らし方が見つかるのかもしれません。

お店を始めたいと思っているかたは、まずは自分なら簡単にできることが何か、考えてみてはいかがでしょう?


SAC about cookies

渋谷区富ヶ谷2‐17‐12 1F
営業時間:11:00~19:00
定休日:日曜日、第2・第3月曜日
http://sac-about-cookies.com

クリスマスの贈りものにいかが?
SAC about cookies

writer ライターリスト

Kimura Eri

greenz ライター ライター&エディター。 働き方や暮らし方にまつわる、一人ひとりの物語に興味があります。 http://kmreri.tumblr.com

partner パートナーリスト

ハローライフ

社会的課題解決に向けたクリエイトに挑戦し続けるNPO法人スマスタが運営する、新しいワークプレイスです。 カフェにライブラリー、イベントスペースを併設、ワークサポートまで受けられる、「仕事」の情報発信基地。 ハロー”ワーク”ではなくハロー”ライフ”とあるように、「しあわせを感じながら働く人がたくさん生まれるように」という想いが込められたこの場所。 切っても切り離せない「仕事と暮らし」の中から見えてくる、今の時代だからこその、そしてこれからの「新しい働き方と暮らし方」を、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。 NPO法人スマイルスタイル http://smilestyle.jp あなたの人生にいい予感を運ぶ、仕事ライブラリー「ハローライフ」 http://hellolife.jp/特集「ハローライフなひとびと」

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