毎日の生活で出る食べ物の生ごみ。普通は当然のように捨ててしまいますが、それを地元の新鮮な野菜や果物と交換できるとしたら?
そんな画期的なサービス「Hello Compost」がニューヨークで始まり、都市型の新しい地産地消モデルとして注目を集めています。
この「Hello Compost」は、ニューヨークのデザイン学校に通う学生2人によって始められたプロジェクトです。
ニューヨークで埋め立てられる廃棄物の約35%を占めるのが、食べかすや食べ残しといった生ごみ。ただやみくもにごみの減量やリサイクルを訴えても、忙しいニューヨーカーの家庭を巻き込むことはなかなか難しいもの。
そこで彼らは、リサイクルのプロセス自体をデザインすることにしました。
こちらが、このプロジェクトに参加すると配布されるごみ袋。飾り気のない黒や透明のビニール袋ではなく、普通のバッグとしても使えそうなおしゃれな見た目ですが、注目すべきなのは外見だけではありません。
なんとこの袋は、中に入れた生ごみの臭いを抑えてくれるだけでなく、袋ごと冷凍することもできるのです。これなら、生ごみを捨てずにおいておくことへの抵抗は小さくなりますね。
家庭で集められた生ごみは、ニューヨークを拠点に都市部での農業を推進している非営利団体「Project EATS」が収集。袋を計量して、集められた生ごみをポイントに換算します。参加者は、それぞれ自分が獲得したポイントと、地元の農家が育てた新鮮な野菜や果物とを交換できるという仕組みになっているのです。
またポイントは、スマートフォンやタブレットのアプリでチェック可能。ゲームのように、互いに競い合おうとする人間の心理をかき立てることがねらいだとか。
アメリカのビジネス誌「fast Company」がデザインによる画期的なイノベーション事例を表彰する「Innovation By Design Awards」にノミネートされるなど、そのデザイン性が高く評価されています。
プロジェクトを立ち上げた学生の一人はこう語ります。
生ごみを臭くて汚いものとばかり考えていてはいけません。住民が地域の環境をより良いものにして、新鮮な食材がもっと食卓に上るようにするための魅力的な資源として捉えなおす必要があるのです。
「Hello Compost」が提案しているのは、都会の“食”をめぐる環境を改善する、新しい地産地消のカタチと言えるかもしれません。皆さんも、「生ゴミ」の扱い方から、都会における「食」のありかたを見つめ直してみませんか?
(Text: 松本優真)