ISSUE ものづくり

3 years ago - 2013.03.12

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住まいの固定観念をリセットし、新しい常識で家を作ろう! 暮らす人が主役になれる“家”の展覧会「House Vision」

House Vision Gate

春、新生活を始める人も多いのでは?
新しい町、新しい生活、そして新しい住まい。

ちょっと広めのリビングっていいかも。天井までの本棚があると素敵だな。ウォークインクローゼットって使い勝手が良さそう。なんて、いろいろな妄想を抱きながら、いざ不動産屋に。様々な図面を見ながら、間取りと予算と設備を吟味するけれど、どれもなんだかしっくりこない。こんな経験ってありませんか?

ライフスタイルが多様化し、家族のカタチも変化を遂げています。xDKという規格の家ではなく、もっと自由に、もっと楽しく、生活者のニーズにぴったりの住まいのカタチがあってもいいのでは? 

そんな思いを具現化したのが、東京・お台場で開催中の「House Vision 2013 Tokyo Exhibition」という家の展覧会です。

「住宅リテラシー」を向上させたい!

現在、日本には良質な中古物件が溢れており、中古物件市場は今後も膨らんでいくと予測されています。これからは新築物件を手に入れるのではなく、中古物件を再利用し、リノベーションしていくという合理的な方法が主流になっていくそう。

そのためには、自分のニーズを把握し、そのニーズを上手に専門家に伝えたり、自分の手で作り出すスキルが必要になっていきます。展覧会ディレクターを務めたデザイナーの原研哉さんは、こういった住まいを編集していく能力を「住宅リテラシー」と呼んでいます。

House Visionでは生活者のニーズを具体的なカタチで可視化し、住宅リテラシーの向上を図っています。「新たな常識で家を作ろう」というコンセプトのもと、会場には6つの家と1つのシェアリング・コミュニティが建てられました。

白いテントに秘められた可能性

会場はゆりかもめ線・青海駅の目の前にあるまっさらな地。展示されている“家”の外観は、スチールの骨格に白い帆を張ったテントでできていて、それぞれが、角材でできた観覧ブリッジで繋がっています。住宅展示場でもないモデルハウスでもない、新たなカタチの家の展示会です。

White Tent

リノベーション時代に突入する今、生活者の焦点は家という箱そのものではなく、中身(インフィル)に変わりつつあります。白いテントは住まいに関する固定観念をリセットし、外観に囚われない自由で新しい空間を提案してくれます。

さて、白いテントの中にはどんな空間が隠されているのでしょうか?

LIXIL x 伊東豊雄 『住みの先へ』

屋外でも屋内でもない、風通しの良い空間を最大限に利用した家。縁側、土間、蔵といった、昔ながらの暮らしを見直すとともに、新たな使い方を提案する、懐かしさが漂う未来の家のカタチです。蔵の使い方に是非ご注目下さい。

土間には、開放感のあるお風呂やバーベキューテーブルが設えてあります。

土間には、開放感のあるお風呂やバーベキューテーブルが設えてあります。

蔵への扉。扉の先には、いったい何があるのでしょうか?

蔵への扉。扉の先には、いったい何があるのでしょうか?

Honda x 藤本壮介 『移動とエネルギーの家』

Hondaのエネルギーシステムを融合させた合理的でエコな家。エネルギーを無駄なく創電・蓄電・循環させながら、生活設備にスマートに供給します。歩行アシストや電動車、新しい移動体「UNI-CUB」といったパーソナルな移動体が行き来できるシームレスな空間が提案されています。

両手が自由に使える新しい移動体「UNI-CUB」

両手が自由に使える新しい移動体「UNI-CUB」

未来生活研究会 x 山本理顕・末光弘和・仲俊治 『地域社会圏』

地域社会圏とは、家だけでなく、エネルギーやゴミ処理などのインフラから、病院、託児所といった共有施設を総合的にデザインした新たなシェア・コミュニティ構想です。専用スペースを最小限に抑え、共用スペースを充実させることで、コミュニティの育成を図ります。

コミュニティ・ガーデンやシェア・キッチンといった共用施設が充実。

コミュニティ・ガーデンやシェア・キッチンといった共用施設が充実。

多世代が一緒に暮らし、高齢化、少子化といった社会の課題の解決に取り組んでいます。

多世代が一緒に暮らし、高齢化、少子化といった社会の課題の解決に取り組んでいます。

住友林業 x 杉本博司 『数寄の家』

現代美術家の杉本博司さんが提案するのは、長年日本で培われた茶室の意匠を反映した空間です。その随所には古墳や城などに使われていた古材が利用されています。伝統を守り続けるのではなく、古い技法や素材に新たな価値を見出す提案はまさに温故知新の精神です。

五輪塔スツールという名前のイス。重ねるとどんな形になるか分かりますか?

五輪塔スツールという名前のイス。重ねるとどんな形になるか分かりますか?

無印良品x坂茂 『家具の家』

柱や壁という構造体を無くし家具そのものが空間を仕切るという、無駄のない合理的なスペースです。無印良品のアイテムは全ての基準寸法がそろっているため、物が多くても煩雑になることはなく、秩序のある空間が保たれています。

40~50代の夫婦が住んでいるという設定の空間。

40~50代の夫婦が住んでいるという設定の空間。

無印良品のアイテムは、小物から収納家具まで、モジュール(基準寸法)に合わせて設計されています。

無印良品のアイテムは、小物から収納家具まで、モジュール(基準寸法)に合わせて設計されています。

TOTO・YKK AP x 成瀬友梨・猪熊純 『極上の間』

プライベート空間であるトイレの新たな提案。壁面緑化を利用し、これまで見たことのないトイレを実現しています。計算された場所に窓が配置されており、光や風、景色などが楽しめる空間になっています。

壁に取り付けられたトイレなら、床掃除も楽チン。

壁に取り付けられたトイレなら、床掃除も楽チン。

東京R不動産 x 蔦谷書店 『編集の家』

ユーザーが主体的に住まいを編集することをコンセプトにした家。80㎡の空間を、「R不動産toolbox」というウェブサイトにて販売されている建材やパーツを使ってリノベーションしました。展示されているアイテムは全て購入可能です。生活者のこだわりが反映された楽しい家です。

料理をするだけでなく、仕事や宿題もできる。家族が集まる多目的テーブル。

料理をするだけでなく、仕事や宿題もできる。家族が集まる多目的テーブル。

移動式のパーソナル空間。ちょっと静かに仕事や読書をしたい時に。

移動式のパーソナル空間。ちょっと静かに仕事や読書をしたい時に。

“家”という産業

展示会の目的は住宅リテラシーの向上だけではありません。
会場構成を担当した建築家の隈研吾さんは、車や電気製品という製造業が衰退する今、日本の次なる産業は何かと考えた時、“家”が浮かび上がったと言っています。

茶室の時代から、日本人は住まいの周辺に関することに対して繊細な能力を持っていた。素材や光に対する感覚、特に、柔らかさや温かさといった身体に接する感覚が高い。こういった住空間の分野なら、世界に負けないのではと思っている。

風流、わびさび、花鳥風月という日本語からも分かるように、日本人は自然と調和しながら暮らす術を持っていました。また、限られた空間の中でより美しく丁寧に暮らす生活美学は、日本が世界に誇れる文化なのかもしれません。

急速に成長を遂げるアジア圏では、外を遮断し環境から身を守ることを目的とした規格の大きい西洋の家ではなく、適正サイズで機能性が高く自然と調和した日本的な生活が、先進モデルとして求められているといいます。

House Vision は現在進行形

House Visionでは2年間という歳月をかけながら、研究会やシンポジウムを通じて新しい“家”の在りかたを模索してきました。会期中も引き続き、建築家やデザイナー、企業の代表や学問の専門家を招き、トークセッションが開かれています。多彩な専門家との対話を重ね、ニーズを汲み取りながら、 “家”という新しい産業を開拓するという壮大なプロジェクトのはじまりです。


これからの“家”は金融商品や財産ではなく、生活者の幸せを築くためのツールになっていくことでしょう。“家”という産業の担い手は、建築家でもハウスメーカーでもない、私たち生活者です。私たちが主体的に住まい作りに関わっていくことで、“家”は驚くほど多様で個性がある面白い空間になっていくはずです。

生活者が自分達の手で住まいを編集できる時代がやってきた!

生活者が自分達の手で住まいを編集できる時代がやってきた!

住まいのこれからを可視化するHouse Vision 2013 Tokyo Exhibiton。
住宅の固定観念をリセットした先に、どんなビジョンが見えますか?

未来の”家”を見に行こう!
2013年3月2日~24日 House Vision 2013 Tokyo Exhibition

writer ライターリスト

ファイアン めぐみ

フリーランスライター。 インテリアデザイナーを経た後、ウェブ製作会社へ転職。出産を機にライターへと転身し、現在は書籍、ムック、雑誌など様々な媒体で執筆中。 好きなこと:映画、インテリア、写真、クラフト、お菓子作り。アメリカ人の夫と4歳の娘と一緒に世田谷区に在住。 妻として、母として、女性として、自分らしい働き方を模索中。

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