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「TEDxKids@Chiyoda」のつくりかた ー 青木竜太さんインタビュー(前編)

このインタビューシリーズは、「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア」を実現して、よりよい未来を自らの手でつくりだしている方々へのインタビューをお届けします。

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こんにちは、greenz.jp発行人鈴木菜央です。

greenz.jpでは度々紹介してきた「TED」。”アイデアをシェアする場”として2006年にアメリカで始まり、今や世界中に広まっています。

昨年には「TEDxKids @Tokyo」という、未来を作る子ども達と子どもの環境を作る大人達に向けたカンファレンスが東京で開かれました。今年も、来る10月28日に第二回目となる「TEDxKids @Chiyoda」が開催されます。

今回はこのTEDxKidsを日本で初めて開催した青木竜太さんにお話を伺いました。もともとは普通のサラリーマンだったという青木さん。どんなきっかけがあってTEDの世界へ入っていったのでしょうか?3回にわたってインタビューをお届けいたします。

インタビュー中の動画は、青木さんに選んでいただいたおすすめのTED Talkです。キャプションも青木さんにご提供頂きました。

きっかけは二つの「死」

鈴木 それでは、よろしくお願い致します! TEDxにはいつから関わっているんですか?

青木 本格的に活動し始めたのは2010年2月からですけど、ボランティアに応募したのは2009年です。

鈴木 TEDxに応募しようと思った理由は?

青木 僕はもともとプログラマーをやっていて、終電や徹夜、休日出勤も当たり前という、ものすごくせわしい日々を過ごしていました。それが2009年の9月ごろから徐々に体に異変を感じ始め、病院に行って検査してみたら「ガンになっています」と言われたんです。

それで「もしかしたら全身転移している可能性もある」と言われて、もし全身に転移していたら余命数ヶ月かもしれません、という話になりました。そのとき仕事は忙しかったんですけど、次の検査結果が出るまで2週間ぐらい家で休ませていただくことになりました。

家にいる間、久しぶりに子どもたちと遊んでいたら、子どもが「パパといる時間が本当に幸せ」って言ってくれたんですね。そのときに、僕は「今まで子どもたちに、何を伝えて来れたんだろう」って思ったんです。もし全身転移してなくて手術して治ったら、子どもたちのためにもっといい環境をつくる活動を始めようと。結局、全身転移はしていなくて初期のガンだと分かりました。

同じころ、僕に色々なきっかけをくれた友達が、自殺をしました。本当にトンカチで頭を打たれたようなショックでした。彼はすごく才能があったのに、ビジネス的なプレッシャーを感じて鬱になってしまったようです。

自分の病気のこと、友人の自殺と重なって、「死」を強く意識した。「時間には、限りがあるな」と思いました。そして、友人みたいに才能があるのに活かせなかったのは、本当にもったいない。多くの人が、色々なことに挑戦できる場があればいいなと思ったんです。

TEDxKids @Tokyo

昨年開催されたTEDxKids @Tokyo

ちょうど2009年にTEDxの活動が始まったのを知っていてチェックしていたんですけど、自分の興味範囲とすごく近いこともあり、挑戦したいと思ったんです。それがきっかけで2009年の終わりごろにボランティアに申し込んで、TEDxTokyoの活動を始めました。

それからはTEDxに出る登壇者や主催者に会ったり、海外のTEDxに行ったり、自分なりに色々学びました。1年間そうしたインプットを続けて、「何でこの活動はじめたんだっけ?」と振り返ったときに、「子どものための、良い環境をつくりたい」ということと、「いろんな人たちと、この思いを共有したい」ということを再認識して、そろそろアウトプットする時期だろうと、「TEDxKids」と自分の会社「VOLOCITEE」を立ち上げようと考えました。

「面白かったね」で終わらせないために

鈴木 なるほど。今はどんなことをやっているんですか?

青木 今は10月28日に開催するTEDxKids@Chiyoda の準備に取り組んでいます。2回目の今年は「関係性の再構築」がテーマ。「関係性」って親と子だったり、人とテクノロジーだったり色々あると思うんですけど、そこの関係性に対して新たな視点を入れてくれるような登壇者を呼んで、みんなに先入観を壊してもらって、自分なりに新しい関係性を築いてもらいたいと思っています。

TEDxの活動を続けていて感じたことは、「面白かったね」で終わっちゃう人が多いということです。それはそれでいいと思うんですが、せっかくいいアイデアを広げているんだから、それをアクションに落としこむことが大切なんじゃないかと思っています。そこで、TEDxで刺激を受けた人たちを継続的にサポートするLABチームというのを立ち上げました。

鈴木 具体的にどんなチームなんですか?

青木 登壇者のアイデアやプロジェクトなどの話を受けて、実際に活動したり参加者を支援したりしています。今、具体的にやっているのは、子どもたちが遊びながら対話の方法論を学ぶことができるツール「フューチャーセンター・ポータブル」の開発です。これは去年、フューチャーセンターの野村さんのトークを聞いてすごく刺激を受けたことがきっかけです。

以前、フューチャーセンターの合宿に参加したのですが、そのときに対話のセッションをデザインするためのツールセットが配られたんです。付箋とかペンとか、トーキングオブジェクトとかがたくさん入っていたんですけど、その中にボードゲームみたいな対話のセッションをデザインするツールキットもあったんですよ。

それで、合宿を終えて家に帰ったときに、子どもたちに「このボードゲームみたいなの何?」って聞かれて、「これを子ども向けにカスタマイズすれば遊びながら対話の方法論を学べるな」と思ったんです。


青木竜太さんオススメのTED動画1:ロン・ガットマン「笑みの隠れた力」
青木さんコメント:「ロン・ガットマンが笑みに関する研究の数々を概説し、その驚くべき研究結果を明らかにします。このTED Talk を見て、なぜ子ども達と一緒に遊んでいると幸せな気分になれるのか分かりました。」

今の世の中は、専門家ががんばっても解けないような複雑な問題が山積していると思うんです。そういう問題には、関係者やその周辺の、いろんな価値観を持った人がいっぱい集まって、それぞれのアイデアを出したり意見を言いつつ、関係者みんなが変わって行かないと、なかなか解決できないと思うんですね。

そういった状況の中で、まだまだ多くの大人たちは、対話の方法を知らないと思います。多くの会社では、対話を通して、というよりは、コミュニケーションが断絶された状態でプロジェクトが進行し、成果が重視されます。そういう環境で生きている大人が多いと思うので、どうしても、家庭でもコミュニケーションをとらない人が多いみたいなんですね。そうすると会話の充実度がかなり低くなっていって、家庭内の教育もうまくいかない。

そこで、「フューチャーセンターポータブル」を通して、子どもと大人が一緒に対話しながら未来について考えられたら、と思ったんです。未来と言っても、旅行に行くとか、ちょっとしたことでいい。

そんなことをしながら、家族の中で対話を楽しんでもらいたいなと思っています。これはあくまで第一弾ですが、これからさまざまなアイデアが出てくると思うので、製品化したりサービス化していきたいですね。そのための土台作りをしています。

TEDxは理想の社会をつくる方法

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http://volocitee.com/

鈴木 興味深いですね。私も子どもがいるので、フューチャーセンターポータブル、欲しいです。もう一つ、竜太さんが立ち上げた会社「VOLOCITEE」についても、教えてください。読み方は「ヴォロシティ」でいいんですか?

青木 はい。ビジネスとしてやっていることは大きく2つあります。ひとつはコミュニティ・インキュベーターと言っているのですが、これは年齢や国籍、性別、役割を超えてそれぞれが思いを持って集まった人たちが、自分たちのやりたいことを継続的にやって共創できるコミュニティをつくる、ということ。

もう一つはまだ開発中ですが、クリエイティブなプロジェクトにボランティアとして参加するためのオンラインプラットフォームです。そこで見つけたプロジェクトに参加することで多様な人たちと会い、新しい挑戦をして、多様な価値観や新しいスキルを得ながら、信頼関係を培う、トレーニングになるんです。それを僕たちはOn the Volunteer Training、略して「OVT」と呼んでいます。

鈴木 OJT(On the Job Training)じゃなくて「OVT」。

青木 はい、「OVT」はOJTの次のステージなんじゃないかと思っています。OJTって既存の仕事の知識や技術を、既存の仕事を通して学ぶものだと思うんですけど、それは今の仕事を続けていくために必要なやり方だと思うんですね。

でも今は、そういう時代ではない。たとえば会社であれば、社員も外に出て、クリエイティブなボランティア活動を通じて新しい価値観とかスキルとかソーシャルキャピタルを得ながら、新しいビジネスの種を見つけることが必要なんじゃないかなと思っていて。それを新しい人材教育システムとして企業に提案していこうと考えています。

鈴木 オンラインとオフラインの2つでビジネスとして回していると。メインはどちらなんですか?

青木 具体的な収入はオフラインの方ですね。企業内とか企業の周辺でのコミュニティづくりをコンサルティングしています。企業によって目的はかなり異なるんですけど、 例えばコーポレートブランドをつくる目的で、各グループ会社から社員を集め、チームをつくってワークショップを開いたり。あとは技術継承のために、単純に技術興味とか共通の興味で集まったコミュニティをつくったり。

今後は、企業と市民と行政とともに、新しい社会づくりに関わりたいという思いがあって、そんなコミュニティも作りたいなとぼんやり考えています。

鈴木 TEDxでも、VOLOCITEEでもやっていることは、「コミュニティデザイン」なんですね。

青木 私からすると思いは同じですね。VOLOCITEEは収入を稼ぐ方法でもある。TEDxは理想の社会をつくる方法で、技術的な観点から言うと少し実験上でもあるというか。うまく行けば一石二鳥、三鳥的に、片方でアクションすれば必ずもう一方にフィードバックされる環境にしたいと思っています。

鈴木 なるほどね。どっちかだけだと詰まっちゃうから、両方あることはけっこう強みだよね。

青木 そうですね。器用な人は全くちがうものをパラレルにやれると思うんですけど、僕は器用じゃないから、同じようなことやっていないとうまくいかないと思っています。

※次回のインタビュー中編では、TEDxのコミュニティづくりで大切にしていることについて聞いていきます。

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青木 竜太(あおき・りゅうた)
TEDxer、TEDster、 TEDx スピーカー、TEDxKids@Chiyoda 創立者兼キュレーター、VOLOCITEE Inc. 創業者兼CEO

1979年7月7日、東京都目黒区生まれ。20歳の時に友人らとIT ベンチャーを起業し、その後プログラマーとしての道を歩む。しかし2009年にある出来事をきっかけに新しい人生を歩むことを決心する。その後TEDxTokyoへボランティアの申し込みをしたことをきっかけに、現在までに国内外20を越すTEDx カンファレンスに参画または関与するようになる。2011年10月には、日本で初めてTEDxKids (ライセンス名TEDxKids@Tokyo) を開催し、2012年にTEDxKids だけを開催する新たなTEDx (ライセンス名:TEDxKids@Chiyoda)を起ち上げた。2011年9月にクリエイティブ・コミュニティを作る集団VOLOCITEE Inc. を起業し、新しい事に挑戦する個人とクリエイティブ・コミュニティをマッチングさせるオンラインプラットフォーム「VOLOCITEE」の開発に注力している。