映画『The Age of Stupid』の上映とゲストを招いてのトークライブが行われたFoE Japanのイベント、そのレポートの後編トークイベント編です。
映画の余韻も覚めやらぬ中、国立環境研究所温暖化リスク評価研究室長の江守正多さん、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さん、ナマケモノクラブ共同代表の藤岡亜美さんが登壇しました(進行はFoE Japanの瀬口亮子さん)。
まず、映画を見た感想として、江守さんは「科学者の観点からは(映画の中で言われていた)「温度上昇が2度を超えると温暖化が加速する」という説が正しいとは必ずしもいいきれません。むしろ、それが確かなら、対応策を練るのは容易になるはずで、そうなるかもしれないし、ならないかもしれないという状況の中でどうすればいいのかというところがいま最も難しいところなんです」と。そしてさらに、日本で温暖化に対して危機感がないという状況については「温暖化はゆっくり起きるので、年の単位では波があるので実感しにくいということがあるのではないでしょうか。都市化もあるし、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアの石油石炭業界のキャンペーンやロビー活動の効果もあるのではないでしょうか」ということでした。
これに対して藤岡さんは「生活の中で感じることもあるのに、専門家しかわからないというようになっているのはなぜでしょうか?」と質問。これに対して江守さんは「邪魔している人がいるのは確かですね。人類が滅亡しないほうがいいと思っているはずですが、救う価値があると本当に思っているのかというところが難しい。だから、人類を救うためにそのために「これをしなければならない」と言われると躊躇してしまう」と。
これはかなり深い疑問で、この映画はその「人類に救う価値があるのか」ということを考えさせてくれる作品だと思うのです。江守さんはこのトークの最後にも「映画はすごくよくて面白かったです。『不都合な真実』に似ていると思いました。もっと多くの人が見てもいい。人々が温暖化に立ち向かえるかどうかは、「人類という視点がもてるかどうか」にかかっている。そういうことを考えたことのない人が、こういう映画を見ていろいろ考えることが重要なのにそうなっていないのが残念です」と話していました。
この意見にはすごく共感できました。このイベントは素晴らしいイベントでしたが、参加している人のほとんどがすでに「人類という視点」をもっている人たちだという印象もありました。そうではない人がこの映画を見て考えることができる環境というものをどう作ればいいのか、それが大きな課題になると感じました。
話は戻って、飯田さんの映画の感想は「やはり風力の話が印象的、自分たちの本当に身近なこととて寝るぎーシフトという世界規模の大きなことの間でどうバランスを取るのかが大きな課題になっている」というものでした。そして自然エネルギーについて「世界で原子力や水力が指数関数的に増加する一方で、原子力老朽化して発電量が落ちている」とも。そんな中注目すべき動きとして祝島について「祝島が自然エネルギー100%の島計画を開始しました。デンマークのサムソ島ではすでに実現していて、ヨーロッパの人たちは2050年までにすべての電力を、自然エネルギーによるものにすると表明しています。これは小さなところからはじまったものが大きな流れになった例、このようにミクロのものがマクロを変えていくという流れがないと変革はうまく行かない」と話しました。
これは確かにそうで、greenzでも応援しているR水素もそのような流れの中で変革を起こそうとしています。その舞台はツバル、水面上昇で消滅の危機にあるツバルをR水素で救おうという活動が産経新聞でも紹介されました。サムソ島と同じデンマークのロラン島ではR水素コミュニティがすでに成立しており、ミクロの活動が着実に進んでいるわけです。
このミクロとマクロにも関連する話を最後に藤岡さんがしてくれました。それはナマケモノ倶楽部の「ハチドリキャンペーン」のもとにもなっているアマゾンに伝わる金のハチドリの神話です。ある場所で大きな山火事が起きたとき、動物たちがみな逃げ出す中で、金のハチドリだけはほんの少しずつ水を運んで火に注いでいたというのです。他の動物たちは「そんなことは無駄だ」といったのですが金のハチドリは「私は私にできることをしているだけ」と言ったのだそうです。金のハチドリがやっていることだけではもちろん、山火事は消えません。でもハチドリが自分にできるミクロなことをすることによってマクロが変わるかもしれない。そんな可能性をこの神話は見せてくれるように思えます。
ミクロからマクロへ。それが人類を救うキーワードなのかもしれません。まずは映画を見て、「どんなミクロの変化を生み出せばいいのか」を考えて見ませんか?
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