少しずつ世界に広まりつつある「MOTTAINAI / もったいない」は、ノーベル平和賞を受賞したケニア出身の環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが“発見”した、日本人ならではの美意識である。今回紹介する読売広告社の「もったいない」カレンダーは、その名のとおり「まだ使えるのに、捨てるなんてもったいない」と、様々な「暮らしの知恵」を教えてくれるカレンダーだ。
毎月のビジュアルは、みかんの皮やたまごの殻など、普段は捨ててしまいそうな「ゴミ」。それらを大胆に敷き詰めて、むしろシンプルだけどインパクトのある絶妙なデザインに仕上がっている。既にジャケ買いしそうな勢いだが、それだけではない。その「ゴミ」たちをもう一度活用するための方法が、いろいろと紹介されているのだ。
みかんの皮は何に使える? 新聞紙は?
例えば1月は「みかんの皮が入浴剤に」。天日でよく消毒して袋に入れれば、そのまま天然の入浴剤になる。皮に含まれるリモネンという成分が、保温作用となってカラダが芯まで暖まるとか!箱買いしてるあなたはぜひ試してみては?
皮つながりで「かぼすの皮で蚊取り線香」なんてのも。蚊が嫌いな成分が入っているらしく、乾燥して火をつければそのまま蚊取り線香になるようだ。
- 絵入りで生活の知恵が解説されている
続いて「余ったビールでお肉を柔らかく」。ビールの炭酸や有機酸がお肉のタンパク質をほぐしてくれるので、みずみずしくジューシーな下ごしらえをすることができる。何かとお酒の機会も増えるシーズン、もし余ったらチャレンジしてみたい。
また、米ぬかの油分を使った「お米のとぎ汁は天然のワックス」、新聞紙を濡らして拭けば艶が引き出るという「新聞紙で窓がキレイに」なんかは、ぜひ編集部でも大掃除に試してみたいですね。
- ペンたてまでついて使いやすい
使った後もメモ帳になる!
それだけではない。さらに気の利いた仕掛けが施されている。よくみると裏面に横罫線が印刷されていて、正方形の切り取り線も入っている。それを律儀に破いていくと、日替わりのメモ帳として使えるのだ!
日付がすでに印刷されているし、ビジュアルでいつの月のことかわかるので何かと便利だ。そして極め付きは表紙だ。ここも切り取って組み立てると、なんとしかもペンたてつきのメモスタンドになるという徹底ぶり!
ただ知恵を伝えるだけでなく、日々めくっていくこと自体が楽しくなりそうなカレンダー。手で丁寧に紙を破ったりすることで、「ただカレンダーを捨てるのは、確かにもったいないよね」と実感できる、すぐれた経験デザインと言えるだろう。
世界のデザインアワードを受賞
このウィットに富んだイノベーティブなカレンダーは、既に多くのデザインアワードを受賞している。世界的な広告賞であるCLIO アワード “BRONZE”、One Show “Merit”のほか、世界的に最も権威のあるデザイン賞であるiF、世界最大のデザイン・コンテストred dotなどなど、日本よりも先に世界でいち早く評価されているのだ。何よりこのようなデザインアワードを通じて、世界のクリエイティブな連中に、「MOTTAINAI」というオルタナティブな視点が浸透しているというのも意義深い。
広告会社の「小さくても、大きな第一歩」
リリースにはこうある。
『「モノを大切にする精神」を広告会社のデザインがテーマとすることは、実は最大のタブーでした。なぜなら、広告会社の仕事は「モノを売る」ことだからです。しかしそこに “人の目線で価値観を共有したい” という私たちの願いを込めました。
また、一般的に「生活者の立場で」を標榜することの多い広告会社ですが、実際には、今まで生活者にクリエイティブ作品を直接提供しことはなかったのではないでしょうか。(もちろん、広告関係の出版物は多数ありますが、いわゆる誰にでも関係のあるものです。)
多くの方々からの要望を受けるカタチで一般頒布に至った今回のデザイン作品がもたらす意義は 「小さくても、大きな一歩」だと、当社は考えております。』
サステナブルな社会に向けて、確かに僕たちは今、今まで通りの生活を考え直さなければならない時期にある。消費の最前線に関わる広告会社は、特に強く意識しはじめているのだろう。ビジョンを生活に浸透させるこのカレンダーは、広告会社ならではのクリエイティビティが詰まっている。この小さくても大きなマインドシフトを楽しみにしたい。
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