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「緑が好き!」で集った地域コミュニティが企業から植栽管理を受託!「シモキタ園藝部」に学ぶ、生業でも趣味でもない活動が楽しく走り続けるための秘訣

本記事は積水ハウスグループの従業員と会社の共同寄付制度「積水ハウス マッチングプログラム」によって制作しています。

「こんなことができたらいいな、あったらいいな」という楽しさやわくわくから始まるさまざまな活動。当初の熱量を失うことなく長く続くものもあれば、時間とともにさまざまな要因で継続が難しくなり、残念ながら収束していくものもあります。

そんななか、東京都の東北沢駅から世田谷代田駅区間を走る小田急線の線路跡地の植栽管理を担いながら、コンポストやカフェの運営、養蜂など活動の幅をどんどん広げている「シモキタ園藝部」という地域コミュニティがあるという話を聞き、足を運びました。

2021年に法人化して4年ほど経つ現在も、「こんなことをやってみたい」という部員の方たちのアイデアは止まることを知らず、部員による自発的なプロジェクトや新しい仲間も増え続けているといいます。

今回お話を聞いた代表理事の一人、関橋知己(せきはし・ともみ)さんとコンポスト事業担当の斉藤吉司(さいとう・よしじ)さんの植物や生きものへの愛や、垣間見える楽しげな活動の雰囲気がとても印象的でしたが、おふたりを含め、シモキタ園藝部が楽しく走り続けられる秘訣は、一体どこにあるのでしょうか?

これからの未来に向けた活動の課題や挑戦も含めて話を聞きながら、自走するコミュニティの秘訣をじっくり探りました。

左が関橋知己さん。右が、斉藤吉司さん。背景に映るのは、シモキタ園藝部の活動フィールドの一部。自然の光と木々に囲まれた空間は、緑を感じて深呼吸したくなる心地よさ

一市民が、まちの緑に関わっていく仕組みを

シモキタ園藝部は、世田谷区の北沢・代沢・代田地域を主なフィールドに、まちの植物を守り育てていくことを目的とする一般社団法人。2021年に発足しました。その活動は多岐にわたりますが、なかでも特に大きな取り組みのひとつが、東北沢~下北沢~世田谷代田間の植栽管理です。小田急線線路地下化に伴う土地の再開発により生まれた、約1.7kmにおよぶ「下北線路街」の植栽の手入れを、シモキタ園藝部が全面的に担っています。

シモキタ園藝部が手入れをしている、下北沢駅から歩いてすぐの「のはら」と呼ばれるエリア。保育園の子どもたちが散歩に来たりと、道行く人たちが自由に出入りできる。無闇に伐るのではなく、植物のありのままの姿を大切にしているという緑の空間は、都会の中にあることを思わず忘れてしまう景色が広がる

自宅の庭でもない限り、一般的には、植物の特性を把握したり周囲の環境との調和などを考慮しながら行う植栽管理は、専門業者が行うことがほとんど。それにもかかわらず、一地域コミュニティが公共の場で、しかも約1.7kmにおよぶ広範囲にわたる管理を担っているというから驚きです。

植栽管理は下北線路街を運営する小田急電鉄株式会社から委託を受けているため、中心となって継続的に働いている人たちは有償だそうですが、シモキタ園藝部のほかの取り組みと同様、250名ほど(2025年1月現在)の“部員”と呼ばれるボランティアにも大きく支えられているのだとか。

なぜ生業や事業とはまた別のかたちで、地域コミュニティが公共の場における植栽管理を担う仕組みができあがったのでしょうか?

シモキタ園藝部が管理する一帯には、虫や鳥などさまざまな生きものも生息している。写真はムクドリ

シモキタ園藝部の発足は、世田谷区が2016年から開いている「北沢PR戦略会議(現シモキタリングまちづくり会議)」がきっかけでした。もともと市民の参加と協働に力を入れている世田谷区。東北沢~下北沢~世田谷代田間の小田急線を地下化する際、市民が主体となって該当エリアの施設等をどのように活用していくか検討・実践する場として開かれたのが、北沢PR戦略会議でした。

当時、会議のなかでも多く上がっていたのが「線路跡地に緑を増やしたい」という市民の声。そこで2016年、シモキタ園藝部の前身である「シモキタ緑部会」が結成されました。その後、下北線路街のデザインを担当するランドスケープデザイン会社も交えながら、市民がまちの緑に関わっていく仕組みとして一般社団法人シモキタ園藝部が立ち上がったのです。

園藝部の「藝」の字は、旧字体。「藝」は、人が木を植える姿から生まれたとされていることから、採用された

始まりはまちづくりの一環として、「緑が好き」という共通点で出会った偶発的な市民の集まりでしたが、関わる企業にも徐々にその熱量が伝わり、まちの緑に市民自身が関わり育てていく活動が始まったのです。

目指しているのは、地域に根ざした緑の循環と共有

エリアごとに異なるテーマに沿ってさまざまな木々や草花がのびのびと育つシモキタ園藝部のフィールド。まちなかでありながら、原っぱや林と呼びたくなるような気持ちいい空間が広がる土台には、立ち上げ当初から大切にされているシモキタ園藝部としての想いがあるといいます。

関橋さん いわゆる“園芸”のように、季節ごとにお花を植え替えていくガーデニングではなく、“人とともに生きている仲間”として植物を見ていきたいという想いがあります。そもそも植物がいないと人も他の生態系も生きられないので、植物は私たちの大元の一番偉い存在ですよね。

なので、私たちが植物に何かしてあげるというよりも、植物がちゃんとこのまちのなかでも健康でいられるようにお手伝いをする感覚です。人が関わることによって植物もより豊かになれるし、もちろん人の心も豊かになれると感じています。

小田急線地上線路跡地の緑化に、10年以上携わってきた関橋さん。シモキタ園藝部の発起人の一人でもあり、世田谷代田から東北沢までの植栽の手入れや、団体の運営業務全般に関わっている

シモキタ園藝部では、「人間よりも寿命の長い植物たちとずっと付き合い続けていくため、継続できるコミュニティをつくる」ことを掲げています。もともとシモキタ園藝部としての活動が始まる以前から、集まった人たちの間では”循環”がキーワードだったとのことですが、里山の暮らしのように植物の恵みをいただきまた土へと戻していくことで、緑がより豊かに育ち人と人が関わるきっかけとなる循環を意識しているといいます。

さらに加えて大切にしているもうひとつの価値観が「緑の共有」です。近年、公園や街路樹などのまちなかの緑の多くは特定の管理業者しか触れることが許されない公共物とされてきましたが、シモキタ園藝部では、まちなかの緑を誰もが触れることができ、恵みを循環させる“共有財産”と捉えているといいます。

植物や虫などの生きものにとって、生息する土地や媒介する草花の所有者・管理者が個人か公共かは関係ありません。たとえばシモキタ園藝部では、2022年から養蜂したハチミツを販売する取り組みも始めていますが、収集するハチミツの出所が個人宅の花なのかシモキタ園藝部の管理する草木なのかに関わりなく、ミツバチは人間が設定した境界線を越え媒介することで、まちの緑を豊かにしています。

このように本来の自然のなかでは、自他の境界線は曖昧。部員たちもそうした生態系の一部である一市民として緑の恩恵を受け取りながら、それをさらに活かしめぐらせていくことを心がけています。そのため、植物や樹木をただ植えて育て整えるだけではない取り組みも行っているのです。

シモキタ園藝部が目指す緑の循環のイメージ(シモキタ園藝部ウェブサイトより)

シモキタ園藝部の活動は主たる植栽管理に限らず、多岐に渡ります。たとえば育てたハーブを使ったドリンクや、手入れの過程で刈った植物を活かしたドライフラワーのスワッグなどを販売するカフェ「ちゃや」を運営したり。

写真の左手奥が「ちゃや」。右手が活動拠点の「こや」。ちゃやではドリンクや軽食、スワッグなどのほか、養蜂で採取した蜂蜜なども購入できる。ドリンクや軽食は、こやのなかや屋上スペースなどで緑に囲まれながらのんびり楽しむこともできる

そのほかにも誰かが育てられなくなった樹木を引き取り新たな育て手につなげる「古樹屋(ふるぎや)」や、植物の基本的な管理技術や人々が自然に親しみ豊かな暮らしを育むための知識を学び活かしていく「シモキタ園藝學校」の開催にも取り組んでいます。

ちゃやで次の育て手を待つ古樹たち。植物を消費の対象として捉えたくないという想いから、それぞれ目安となる引き取り額はあるものの最終的には新たな育て手として植物を”預かる”人が価格を決める仕組みになっている

また斉藤さんを中心としたコンポストチームでは、一般的にはゴミとしてお金を払って捨てられる落ち葉や剪定した枝、近隣の飲食店などで排出されるコーヒーグラウンズ(粕)、果物の皮などをコンポストに投入し、堆肥をつくっています。

コンポストに投入される枝葉。堆肥化した土は赤玉を混ぜ、2L500円で販売も始めたそう。カフェちゃやの売店や、イベントなどで購入できる

コンポストに関わる部員は2週間に1回集まり、堆肥化を促し発酵を均一化するための切り返しと呼ばれる作業を行っているそうで、3ヶ月ほどかけておよそ1000Lもの堆肥をつくるのだとか。できあがった堆肥は古樹屋の植え替えで使ったり、冬の間に地面を覆うマルチング(※)として木々の栄養補給に活用したりすることで土へ還しているのだといいます。

※​​植物の根元や地表面を資材で覆うことで、土壌の環境を改善する園芸の手法

コンポストやハーブなどが育てられている圃場。放置林の手入れをしてもらってきた竹や、刈った枝を積み上げてつくられる粗朶柵(そださく)などを活用して建てられている。粗朶柵は地面から近い下から順に、自然と土に還っていく

寄せ植えがされた植木鉢の真ん中にも、小さなコンポスト!埋まっているコンポストの容器は穴が空いているため、ミミズが出入りし、栄養分の高い糞をしてくれることで堆肥化が進むと同時に、周囲の草花も育っていく仕組み。「つくってみたい!」と思わず声を上げてしまうくらい、かわいらしい佇まいと一石二鳥のアイデア

コンポストの役割は、単純な堆肥としての活用にとどまりません。なんと、堆肥化途上の分解中の土に電極を埋め込み、有機物が発生させる電子を増幅させることで、クリスマスのイルミネーションなどを点灯する電力としても活用しているのだとか!コンポストリーダーの斉藤さんは、「刈り草やグラウンズ(粕)は宝物」と目を細めます。

堆肥化中のコンポストに、電極が埋め込まれている。この発電装置も、部員と企業の共同研究をもとにつくられたそう

斉藤さん 私は自宅の庭に生える雑草を抜くのが本当に大嫌いだったんです(笑)。でもあるとき本を読んでいたら、刈った雑草をコンポストに入れると堆肥になると書いてあって「いや、これはすごい!」と思って。実際にやってみたら本当に分解したんです!

それから自宅で小さくコンポストを続けていたことが、今の園藝部でのコンポスト事業につながっています。

斉藤さんが案内してくれたコンポストの小屋。実は、斉藤さんが来ているTシャツのイラストは、娘さんが描いたというミミズコンポストの絵。コンポストに入れるとミミズが好むものと、苦手なものをイラストで表現しているそう!コンポストへの熱量と愛が伝わってくる

またシモキタ園藝部では、生き物係と呼ばれるチームが生きものを無闇に排除することのない環境づくりに取り組んでいます。たとえば、植物の生態系にとって重要な存在である虫たちが越冬や産卵、子育て、餌の蓄えなどを行えるバグホテルや、植物の根を食べて枯らしてしまう甲虫の幼虫を移動して住まわせるカブトネストなどを圃場内に設置したりしているのだそう。

まちなかであっても自分たちで工夫をして手づくりしながら、自然と共生する道を模索する活動のあり方が伝わってきます。

端材や落ち葉などでつくられた、美しいバグホテル

それぞれの「やりたい!」をフラットに育む場

関橋さんと斉藤さんは立ち上げ当初から活動に関わり、現在では植栽管理やコンポスト事業など、シモキタ園藝部の中心を担うメンバー。とはいえふたりとも、もともと植物に関わる仕事をしているわけでも専門家だったわけでもなかったといいます。

関橋さん 私の場合は田舎で生まれ育ったわけでもなく、たまたま誘われて植樹のボランティアに行くようになったのがきっかけですごく植物が好きになってしまって。

植樹の活動をするようになって、どんぐりを土に蒔いて苗木を育てたのがとても楽しくって、今も自宅の屋上でどんぐりの苗木をたくさん育てています。そういった個人的な取り組みが、園藝部の活動につながっていきました。

「ドングリの命令を受けて活動し続けている(笑)」と話すほど、ドングリ好きな関橋さん

現在所属している250名ほどの部員は、建築家やデザイナー、編集者、学生など職種や年代、活動頻度や住居エリアもさまざま。徒歩・自転車圏の人が七割くらいだそうですが、わざわざ電車に乗って活動に参加している人もいれば、現場の活動に参加するのではなく、活動の応援や情報を得るために所属している地方在住の部員もいるのだとか。

さらには現在に至るまで、植栽管理やカフェなどの一部を除き、活動のほぼすべてが部員によるボランティアによって成り立っていますが、関橋さんや斉藤さんを含め代表理事や各プロジェクトの担当者も、その他の部員と同じように年会費3000円を納めながら、ごくわずかな委託費を受け取るのみで活動しているといいます。

取材当日は、水やりなど部員によるひろばの手入れ活動が行われていた。部員同士は、LINEグループやSlackなどのツールで普段からコミュニケーションを取っているそう

これほど活動にかける熱量やモチベーション、立場もさまざまな人たちが部員として集まっていると、活動を継続していくだけでも障壁がありそうですが、それぞれがやってみたいアイデアが次から次へと出てくると話す関橋さんと斉藤さんは、とても楽しそうです。

関橋さん 楽しくないと続かなくなっちゃいますが、部員の人たちは日頃から「こういうことができたらいいのに」と思っているから、ここに来て楽しいと思えるんじゃないかと。

たとえば、生ゴミをただのゴミとして捨てるのはもったいないなとか、マンション暮らしだから本当はもっと植物を育てたいのになとか。そういう抱いている想いを実現できるのが、シモキタ園藝部の活動なんだと思います。

部員は、子どもから高齢者まで年代も幅広い。写真に写る部員さんは、「〇〇さんがいなくちゃ!」と、若手の部員からも慕われている様子で、年齢を問わない部員同士の仲の良さがうかがえた

このように部員それぞれの「やりたい!」がかたちになっていく秘密は、のはら会議と呼ばれる月1の話し合いの場にありそうです。部員であれば誰でも任意で参加でき、直近の活動についての情報共有を行うほか、部員それぞれのやりたいことを可視化したり実現に向けての計画をみんなで立てたり。本来なら理事の間で議論するようなテーマをあえてオープンに話し合う場にもなっているといいます。

新入部員もベテランも、理事やプロジェクト担当といった肩書きの違いも問わず、全員がフラットな立場で個人のやりたいことを可視化し、後押しする仕組みが、シモキタ園藝部の活動を育む土台にあるのです。

取材当日に、植栽の手入れで集まっていたシモキタ園藝部員のみなさんで一枚。どの方も、にこにこしながら活動に取り組んでいる様子が印象的だった

これからの未来へ向ける眼差し

一方、実際の活動に伴う材料費やちゃやの家賃など経費も当然かかっており、収入の確保など今後の継続に向けての大きな課題もあるといいます。

現在のシモキタ園藝部の主な収入源は、小田急電鉄からの植栽管理委託費のほか、ちゃやや古樹屋の売り上げ、有料の視察受け入れなど。とはいえ、ちゃやの利益も思ったようには上がらなかったりと、収入の確保は一筋縄ではいかないようです。

シモキタ園藝部の圃場で採れたハーブなどを使ったお茶。お客さんに植物や循環に触れてもらう入り口としても、活動の収入としても大事な存在

関橋さん ちゃやは拘束時間も長いため有給にしていることもあり、人件費もかかります。でもここを訪れた人に、植物や循環のことを知ってもらうきっかけになる意義の方が大きいねという話になって。ですので、払い続けないといけない家賃などのお金をどこで稼ぐかというのが課題です。

ただ、あまりにも「稼がなくちゃ…!」という方に振れてしまうと楽しさが失われ良くない方向に行ってしまうと思うので、やっぱり楽しいを軸にしていきたいということは考え続けています。

また先を見据えたとき、今の関橋さんが担っているような団体全体の中心的な運営や植栽管理の役割を誰が継いでいけるのかというのも課題だといいます。一部員としての参加には留まらない責任や業務量もあるからこそ、今後は植栽のプロもしくは見習いのような立場の人が有給スタッフとして中心になりつつ、ボランティアで参加したい人たちを楽しく巻き込んでいくかたちにしていかないと次の代には続いていかないのではと関橋さんは危惧しています。

「お金を稼ぐためなら他のアルバイトをした方がよっぽど効率がいいですよ」と笑う関橋さん。植栽管理は有償とはいえ、植物への愛やまちの緑を育むことへの熱意を胸にほぼボランティアで関わり続けている

関橋さん 園藝部の特筆すべきところは、本来プロが行う植栽管理を市民団体がお金をもらいながらやっているということ。この3年間それを実現できてきたのはすごいことですが、それをさらに今後10年続けていくためには、やっぱりコアで関わる人が仕事として担える仕組みをつくっていかないと酷だと思います。

私がほとんどボランティアで継続できているのは、今までの仕事でそれなりの蓄財をしていることやライフステージが大きく関係しています。今後も私と同じような条件の人がいる保証はないので、植栽管理を維持する部分については特別儲からなかったとしても“楽しい仕事”としてできるかたちをつくっていかないと、今後も自走を続けるのは難しいのではと思っています。

下北沢駅と世田谷駅のなかほどに位置するスペース「BONUS TRUCK」の植栽の水やりや剪定、芝刈り、枝葉の処分などもシモキタ園藝部の大事な役割。日々の水やりはマニュアルに沿って店舗が行っている。植栽管理は仕事として請け負っているものの、天候などによって部員の手伝いの参加率が左右されてしまうことも、今後安定した活動を継続するにあたっての課題だそう

シモキタ園藝部としてこれから乗り越えていく必要のある課題はもちろんあります。それでも植物と人の営みが循環し心地よく共生するまちづくりを地域で広めていくために、これからさらに取り組んでいきたいことがあると関橋さんと斉藤さんは口をそろえます。

その入り口となるのが、受講生が下北線路街の植物に直に触れながら、基本的な植栽管理技術や人々が自然に親しみ豊かな暮らしを育み、循環させていくための知識を習得するシモキタ園藝學校です。

シモキタ園藝學校で学び植栽管理をある程度身につけた人たちが毎年 10〜20人ほど卒業しているそうですが、ときどきそうした卒業生たちのもとへ、まちの人から「うちの庭を手入れしてもらえないか」と相談があるのだとか。今後はそういった仕事を卒業生たちが個人の仕事として受けられる仕組みづくりにも取り組んでいくことで、まちとの接点を増やしていきたいと関橋さんは力を込めます。

関橋さん 卒業生たちがまちへ関わっていくことで、むやみに木々や草花を切ったりするのではなく植物と共生するまちをつくっていくためのより良い緑のお手入れが広がっていったらいいなと思っています。

インタビュー中も笑顔があふれ、心から活動を楽しんでいる様子が伝わってきた

また斉藤さんは、今後も部員を増やしていきたいと意気込みます。

斉藤さん コンポストのところで作業をしていると、通りがかって興味を持った人がいっぱい来るんです。日によっては、コンポストの作業をするよりも質問に答えて活動についての説明をする時間の方が多かったりするくらい(笑)

実際ふらりと立ち寄ったのをきっかけに入部しちゃった人もたくさんいて、最近では七割ぐらいが通りがかったのをきっかけに入部してくれています。そうやってまちの人にいろいろと興味を持ってもらうことが園藝部にとっての一番の目的だったりもするので、これからも仲間を増やしていきたいです。

楽しく自走し続ける活動の秘訣とは?

金銭的な課題や仕組みづくりなど新たな挑戦は見えているものの、関橋さんと斉藤さんのシモキタ園藝部に注ぐエネルギーも部員の方たちの前向きなエネルギーも、こんこんと湧き続けているのを感じた今回の取材。

カレンダーがびっしりと埋まっているシモキタ園藝部の活動スケジュール。活発な様子がよくわかる

その源は、「緑が好き」という気持ちはもちろん、それぞれがフラットで風通しの良いコミュニティの仕組みにこそあるのではと感じました。

活動を動かしていくメンバーが固定化されてしまうと、新しく入った人や参加頻度の少ない人たちの参加ハードルを上げてしまったり、せっかくの「これをやってみたい!」というわくわくした気持ちを阻害しモチベーションを失わせてしまうことも。その結果、活動の担い手が減り、存続が難しくなるということも起こりえます。

一人ひとり、どこにどれくらいの”楽しさ”を見出すのかは異なる以上、組織として楽しく自走し続けるためには、それぞれが臆することなく自分のペースで活動に関わりながら、立場や年齢などの違いに関わりなくお互いにやりたいことを気兼ねなく表明し、応援しあう仕組みや環境づくりが必要なのだと思います。

自走する地域コミュニティ「シモキタ園藝部」。気になった方はぜひ「みどりMAP」を参考にふらりと活動場所に足を運んでみてください。
気づいたら入部して緑の虜になっていた!なんてことも起こってしまうかもしれません。

(撮影:イワイコオイチ)
(編集:池田美砂子)