あなたにとって「しあわせ」とは、なんですか?
お金持ちになることでしょうか? 健康に暮らすことでしょうか? 愛しい誰かと出会うことでしょうか?
兵庫県神戸市に拠点を置き、ファッションや生活雑貨の通信販売などを手掛けるフェリシモが考える「しあわせ」は、「ともにしあわせになるしあわせ」。それは人をしあわせにするということ、人としあわせになるということ、そして、自然と社会とともにしあわせになるということ。
私たちは、さまざまな人、自然、動物とのかかわり合いの中で生きています。フェリシモは事業活動を通して、誰もがしあわせの受け取り手となり、贈り手にもなれる、そんなしあわせの循環を生み出せる方法を考え、実践し続けてきました。
2023年10月に新しくリリースされた「GO! PEACE!」は、フェリシモの考える「しあわせ」を改めて定義するためにつくられたカタログです。
今回は、「ともにしあわせになるしあわせ」の実現のため、これまでフェリシモが考え、実践してきたことから、なぜ今、原点に立ち返り「GO! PEACE!」というカタログをつくるに至ったのかまでを、矢崎和彦代表取締役社長と、「GO! PEACE!」の発起人であるクラスター本部長の矢崎真理(まさよし)さん、モアフェリシモ開発局の松本竜平さんにたっぷりとお話を伺いました。
フェリシモのお客さまは、しあわせの受け取り手であり贈り手でもある
「しあわせには2種類あって、その一つが相対的なしあわせ、もう一つは絶対的なしあわせです。フェリシモが追い求めてきたのは、絶対的なしあわせなんです。」
代表取締役社長の矢崎和彦さんは、フェリシモが歩んできた道のりを振り返り、こう語ります。
矢崎社長 相対的なしあわせの多くは、優劣を競うことで成り立つものです。人と比べてお金持ちだとか、頭がいいとか、早く走れるとか。でもそれってつまり、最もしあわせになれるのはたった一人しかいないということですよね。反対に、絶対的なしあわせというのは、人と比較してどうかということではなく、自分にとってしあわせかどうかに軸を置くものです。私はそれを追い求めた先に、社会全体のしあわせを生み出せると信じています。
言葉だけを聞くと、自分にとってのしあわせを軸に置くことは、どこか一人よがりなしあわせを生み出してしまいそうですが、矢崎社長の考える最大級のしあわせは、自分の「楽しい」や「好き」という気持ちで行動したことが、結果的に誰かをしあわせにしている状態のことだといいます。
矢崎社長 私にとっての一番のしあわせを考えると、それは自分の起こした行動がお客さまの喜びに繋がっていると実感できたときなんです。私だけではなく、誰にとっても自分の存在が誰かをしあわせにしたり、社会をよくできていると思えたときに最もしあわせを感じるのではないでしょうか。だから、お客さま自身がしあわせの創り手や贈り手になれる、役割と舞台をつくることもフェリシモの仕事だと考えています。
「フェリシモ(FELISSIMO)」という社名は、ラテン語を語源とする「至福」や「しあわせ」を意味する「フェリシティ(FELICITY)」と、強調を意味する接尾語「シモ(SSIMO)」を合わせた造語で、「最大級で最上級のしあわせ」という意味が込められています。
「しあわせの受け取り手となり、贈り手にもなれる」。そんな、「最大級で最上級のしあわせ」を実現させるためのフェリシモのビジネスは、どのようなものなのでしょうか。
目指すのは、「事業性」「独創性」「社会性」同時実現
社会全体のしあわせのために「社会性」だけを追い求めても、それを実現することはできないと矢崎社長は言います。
矢崎社長 企業は収益がなければ存続できません。企業として社会性を実現し継続させていくためには、やはり事業で収益を上げていくことが重要です。そして、事業性と社会性の両立を可能にするクリエイティビティ、それが独創性です。仕事が楽しいのは、今までにないものを創り出すこと、誰もやったことのないチャレンジをすることではないでしょうか。さらに、フェリシモの従業員の仕事の源泉は、独創性だと思います。事業性・独創性・社会性。この3つがバランスよく重なる領域がフェリシモの目指すビジネスなんです。
クリエイティビティに満ちた本業を続ける中で、企業の社会的責任も果たしていく。この仕組みを確立することこそが、フェリシモのやるべきことだという思いは、あらゆるプロジェクトを遂行しながら確信へと変わっていったそうです。なかでも、阪神・淡路大震災から始まったプロジェクトは、矢崎社長の心に大きく刻まれています。
矢崎社長 当時、フェリシモの本社は大阪にありましたが、神戸への移転準備を進めているところでした。震災直後、関西に本社があることをご存知だったお客さまから、お手紙やファックスで数え切れないほどの応援メッセージをいただきました。少し時間が経ってからさらに驚いたのは、フェリシモの本社のある大阪は大丈夫だと知ったお客さまが、お金を封筒に入れて義援金として送ってくださるのです。毎月のお買いもの金額より多い金額を振り込まれ、「お釣りは神戸のために使ってください」とおっしゃられるお客さままで出てきました。
その後、フェリシモが公に義援金を募り始めると、即座に5,000万円を超える義援金が寄せられたといいます。この義援金は日本赤十字社を通じて寄付されましたが、フェリシモは継続的な応援が必要だと考えました。一口100円から始められる「もっとずっときっと基金」は東日本大震災発生以来10年以上継続し、4億円を超える基金を集めています。そのお金は現在も全国の震災・災害の支援や防災・減災などの取り組みに充てています。
企業とお客さまが売り手と買い手の関係性を超え、一つの想いをともにすることで、お客さまだけでは叶えられない、また、企業だけでも叶えられない大きな社会貢献を実現できるということが実証された出来事だったといえそうです。
「好き」の気持ちが拡げていくしあわせ
フェリシモはお客さまの想いだけではなく、働く従業員の想いからも様々なプロジェクトが生まれています。
矢崎社長 やっぱり自分の好きなことをしていたらハッピーじゃないですか。もちろん一人ひとり与えられた業務もありますが、少しでも自分の好きなことをさせてあげたいという気持ちで、1週間のうち10%は好きなことをしていいよ、という仕組みをつくったのが部活の始まりなんです。
フェリシモにはなんともユニークな「猫部」や「おてらぶ」、「森活部」や「幸福のチョコ部」など、従業員が自分の好きなことを追求しながら商品開発を行ったり、その「好き」の対象に課題があれば、お客さまと一緒に楽しみながら解決できる方法を考える部活動が存在しています。
動物保護のための基金つき商品を販売したり、お客さまとともに環境保全活動に参加する機会をつくったり、障がいを持った方とともに個性的な商品をつくったり。数知れないほどの商品やプロジェクトが生まれてきました。
矢崎社長 大きな課題に対して、自分一人にできることの少なさを実感したとき、人は心を閉じてしまいます。それでは無力感しか残らない。社会にいいことをしましょう!と呼びかけるより、「好き」や「楽しい」の気持ちの延長線上に社会貢献ができたなら、それほどいいことはないでしょう。
フェリシモの経営理念の中には、「一人ひとりの願いからはじまるしあわせを、人、社会、自然とともにかなえていく」という言葉があります。従業員の「好き」や「やりたい」という想いがお客さまの暮らしに浸透し、大きなしあわせとなる。それを積み重ねていくことで社会もしあわせになる。これはまさにフェリシモが見つけだしたしあわせの循環なのかもしれません。
売り手と買い手の関係性を超えた、志をともにする関係
今回、新しく生まれた「GO! PEACE!」というカタログは、お客さまが楽しいお買いものを通して実現できる社会貢献のアクションを集めたものだといいます。
『GO!PEACE!』の発起人の一人である松本竜平さんはプロジェクトへの思いをこう語ります。
松本さん 日々、たくさんのカタログをつくって商品を売っていく中で、もう一度フェリシモの理念に立ち戻って、そこにストレートに訴えかける活動をしていきたいと思ったんです。フェリシモはこれまで数多くのプロジェクトで、お客さまと売り手と買い手という関係性で終わるのではなく、志をともにする仲間のような関係性を築いてきました。より良い未来のために、そういった関係性をもっと拡げていきたい。『GO! PEACE!』はそんな想いでスタートしました。
松本さん 実は『GO! PEACE!』の前進である『more felissimo』というプロジェクトでは、ととのえる、わらう、はなすなど「お買い物」以外にもできる社会へのアクションを提案していましたが、お客さまがしあわせの贈り手になれるきっかけをつくるうえで、フェリシモが提供できる最も大きな舞台は、やはり買い物なのでは、という思いに至ったんです。
『GO! PEACE!』は大きく次の5つのテーマに分けた商品を提供しているそう。
地球(自然・生き物とともに)
世界(世界の国と地域とともに)
日本 (地域・伝統・文化とともに)
あなた(多様な他者とともに)
わたし (ひとりひとりの願いとともに)
自然や生きものたちに対してもしあわせを循環できるようにつくられた基金つきの商品や、世界とのフェアトレードやトレーサビリティーのとれた商品、日本の伝統工芸品を未来につなげていくような商品、病気や障がい、貧困など困難を抱えている人々を応援できる商品など、それぞれのテーマに沿った商品の販売や基金の紹介を行っています。
その中でも、私が一際ユニークだと感じたのは「わたし(ひとりひとりの願いとともに)」で提供されている商品。
松本さん 一人515円でチケットを買っていただくと必ず何かが届く仕組みになっています。何が届くかは分からない。くじのような形式で、結構いい物も届きますよ(笑)。お支払いいただいた515円のうち350円はさまざまな支援先に寄付されるようになっています。自分も何が届くかドキドキする楽しみを味わいながら、社会貢献もできるって素敵じゃないですか。
ひとつの支援の方法だけではなく、いくつものなかから自分の心にフィットする支援を選べることもこのカタログの魅力です。これは、始めようと思っても到底すぐにできるものではありません。フェリシモがこれまで長い時間をかけて生み出してきた、たくさんの商品と、売り手と買い手を超えるお客さまとの関係性を築いてきたからこそかたちにできるものなのだと強く実感しました。
お客さまの想いの受け皿になりたい
「GO! PEACE!」の共同発起人である矢崎真理さんは、社会貢献活動に気軽に楽しく参加できることについてこう語ります。
矢崎さん 近年、持続可能な社会に向けた動きの中で、買い物に対する価値も変わってきていると思います。でも、エシカルな消費ってちょっとハードルが高いこともあると思います。時間がたくさんあっていろんなことを検討したり選択できる人もいるでしょう。でも、ライフステージが変わって、例えば子どもができたりすると、日々やることに追われてしまう。そうすると、自分の行為の端々まで意識を持つことが難しい。そんな人たちのために、私たちにできることを考え続けています。だからこそ、間口は広く、無理なく、そして何よりも楽しく社会貢献に参加できるという景気づけは、とても重要なことだと思うんです。
矢崎さん しあわせを誰かに贈ることができたという、「ともにしあわせになるしあわせ」な経験。それが、一部の人しか享受できないものになってはいけないと思うんです。
力を持った一部の人たちだけがしあわせの贈り手になるのではなく、誰でも贈る側になれる体験を提供したい。
これまでの取り組みの中でも、お客さまから「こういう機会をつくってくれてありがとう。何かしたいと思っていたけど何をしたらいいかがわからなかった。そんな時にフェリシモが気軽に参加できる機会をつくってくれた」というお声をいただくことが多かったといいます。
カタログ名の「GO! PEACE!」のGO!にも、勢いよく気軽に参加してみよう!という想いが込められているそう。
松本さん この時代にピースという言葉を使っていいのかという議論もありました。でもやっぱり、最終的に私たちがつくりたい未来のかたちはピースなんです。それは平和ということでもあるし、人を含めたこの地球に生きる全ての動物、自然が安定して穏やかでいられる社会という意味も含んでいます。平和とか、環境問題とか大きな課題に、一人でできることの少なさに無力感を感じてしまうより、少しでもできることをフェリシモが提案したい。一人100円でもみんなで長く続けていたら大きな力になるということがこれまでの活動からも証明されていると思っています。誰でもしあわせの贈り手になれるんです。
最後に矢崎さんに「GO! PEACE!」からはじまる新たな旅の行く先についてお伺いすると、「『GO! PEACE!』で築かれていく仲間の関係から、またなにかユニークなものを生み出したり、新しいアクションの方法を考え続けていきたいです」と、明るい笑顔で教えてくれました。
フェリシモの「ともにしあわせになるしあわせ」への追求には終わりがないようです。
「社会のために自分も何かしたい。」そう思っている人たちの気持ちの受け皿を、独創的な発想でつくり続けるフェリシモ。やはりどんな商品にもユニークさのスパイスを忘れない姿勢が、長く支持され続ける理由の一つなのでしょう。
いつか、事業性と独創性と社会性が美しい円で重なり合ったとき、社会は想像もできないほどのしあわせで溢れているのかもしれません。
そんな素敵な未来をつくる一員に、あなたもなれるチャンスがすでに用意されています。
まずは「GO! PEACE!」の特設サイトをご覧ください。
また、カタログ「GO! PEACE!」はこちらのリンクから入手可能です。ぜひ手に取ってみてくださいね。
(撮影:山下雄登)
(編集:増村江利子)