エコハウスDIYクラス第1期生のみなさん
みなさんは、住んでいる家が冬とても寒かったり、夏がとても暑かったりしませんか?
日当たり大好きで古いものが大好き、寒がりなのに窓の多い築50年の借家に住んでいる私も、そうなのです。
冬暖かく、夏は涼しい。そういう心地よい暮らしをしたいなと思うときに、引っ越し以外の選択肢はないだろうか。そんな悩みを持つ人にもぴったりな「エコハウスDIYクラス」が開講されました。
講師には「パッシブハウス・ジャパン」の森みわさんと「みかんぐみ」の竹内昌義さんをお招きし、「賃貸でもできるエコハウスDIY」を学びます。ファシリテーターはgreenz.jp編集長の鈴木菜央さんと「特定非営利活動法人コモンビート」の前嶋葵さん。
フィールドワークに座学、実践とぎゅっと濃厚な4回の授業に参加したのは、 ルポライターや設計士、古民家再生に携わる方、北米に移住を予定しているご家族、東北復興に携わりながら多拠点化をめざす方…などなど多彩で濃いメンバーです。
経験値は、建築関係者と趣味でDIYをしている方、そしてまったくの初めて!な方々がちょうど3分の1ずつ。
今回は第1期生が巣立っていった、「エコハウスDIYクラス」の卒業発表回の模様をご紹介します。
家から始めるDIYから、暮らしを自分の手に取り戻せたら
「なんだ、こんな簡単なことだったんだ」という菜央さんの発見から始まった、このクラス。
知恵と工夫、技術によって、エネルギーを無駄づかいせず快適に過ごせる家は、賃貸でもつくることができるといいます。
菜央さん DIYはDo it yourself、自分で考えて自分でつくるということ。
今、暮らしが色々とサービス化され資本主義社会に組み込まれて、いつの間にか自分の手からすり抜けて向こう側に行っちゃってた、みたいな社会だと思うんです。
賃貸でも持ち家でも、人生のコストの3分の1が家にかかります。その10%とか5%でいいから自分の手に取り戻すと、一気に家全体、暮らし全体が自分の手に取り戻せるんじゃないかな。
クラスでは、エコハウスの最高峰「パッシブハウス」を訪れて心地よさを体感し、熱の基本を学びながら、自分のエコハウスプランを立てていきます。
パッシブハウスの訪問フィールドワークで快適な家を体感した翌週、第2回の座学の様子。みかんぐみの竹内さんから熱の基本を学んだ後、それぞれのDIYプランをもとにグループディスカッション
そして、中でもみなさんが「楽しかった!」と声を揃えるのは、銭湯シェアハウスでの実践DIYワークショップでした。
窓の多い大きな家を、リビング、ダイニング、2階の3チームに分かれて断熱加工していくのは、なかなかの作業ボリュームです。
西村祐子さん 間違ったときのリカバリーの仕方って、どこにも本に書いていないんですよね。
板がちょっと短かったとか、釘が出ちゃったりとか。DIYだから体で覚えるんだ、と思っていても、1人だったら釘が出たとたんに挫折してしまう。後ろからコンコン! って打って、抜いてもらえて。打ち直せました。
岩佐洋介さん 窓に予想外の隙間があったり、リビングチームは大変だったよね。
釜石で早速実践したら、この経験がむちゃむちゃ役に立ちました。ホームセンターで、材がしばって売ってあるんですよ。ほどいてみると、まっすぐじゃない(笑)
1人でやってみようと一日半かけましたが、いや、大変でした。みんなでやることっていいなぁと痛感しました。
どんな現場でも、様々な想定外のことが起こります。まずはみんなで手を動かしてみることで、失敗してもフォローができる、こんな知恵がある、と一気に体験を共有できました。
もともとあったカーテンレールを外し、柱や鴨居を作って二本の桟をぐるりと4周させ、ポリカをはめ込んで行きます。室温15度だったリビングは終了後には21度に!(Photo by 新井由己)
最終発表で、なんと屋根裏への侵入調査の様子を披露してくれた森下詩子さんは、エコハウスもDIYも初めて。数年前、業者に断熱改修を断られてしまい、毎年夏の暑さから北欧に逃げる暮らしだったそうです。
森下詩子さん もともと日本人って自分で何とかしてきたから、それを取り戻したいという想いがあって。今まで目を向けてこなかったことを多分震災あたりからずっと数年考えていました。
今回やってみて、DIYは、ああ、1人じゃできないんだなと。1人でやれることももちろんあると思うんですけれど、みんなでやることで得られるものがありました。
屋根裏の改修も「もちろんやります!」という詩子さんに、早速屋根裏に登りたい!という声が。
吹付けを業者にお願いして、天井張りをみんなでやろう、みたいなワークショップもできるよね、とアイデアも出て、このクラスから新たな仲間ワークショップがそれぞれ続く予感がいっぱいでした。
最終発表。オヤビンさんの種子島再生可能エネルギーハウスの模型に一同沸き立ちました
信頼が増える社会をつくっていきたい。それがDIYをやることの意味だと思う。
最後に、ファシリテーターのお二人にも聞いてみました。
前嶋葵さん グリーンズの「ほしい未来は、つくろう」という言葉にあるように、このクラスをやってみたことで、みなさんのつくりたい未来に一歩近づけたんじゃないかな、という感じがしてとてもうれしい。
この先になにかやろう、これをやろうというワクワク感が伝わってきました。
菜央さん どんな社会をつくろう。自分たちの行動、今ここにいるみんなが楽しくてやっていることが、実はこんな社会をつくっているんだ、と意識していくといいんじゃないかな。
自分で手を動かすことで、自分の生きる力が増やせる。みんなと一緒に生きる力を増やし、仲間とつながれる。
人間のパワーを、力を肯定しているその感覚が、みんなが楽しい気持ちの源泉だと思う、と菜央さん。
菜央さん つながっているところで、どんどん暮らしをつくっていく。
友達から野菜を買うとか、自分がつくったクラフトを友達に売るとか、エンターテイメントをDIYしていくとか、それは信頼が増える社会につながっていくんじゃないかな。
自分がこれから果たして本当に稼ぎ続けられるんだろうか、ローンを払い続けられるんだろうか、とか。
今はそうした不安がいっぱいな世の中だと思うのだけれど、DIYができるようになると、今度は保存食がつくれるようになって、断熱が自分でできて、洋服が自分で直せて、自転車が直せて。生きている不安が減って、どんどん、希望が増えていく。
希望が自分で増やせるとわかっていたら、他の人の希望を増やす手伝いもできるようになる。希望が増える社会につながっていくんじゃないかな、って思います。
葵さん 僕も一緒にやりたいです。これからがスタート、ぜひよろしくおねがいします。
菜央さん 自分が楽しいだけじゃなくて、周りに広げていく心を持って行くと、より楽しい。それを工作員と呼ぶんじゃないかな。みんなで、工作員になろう!
DIYクラスらしく、ポットラック方式の打ち上げパーティには、お手製のジャーキーや朝焼いてきたパンなどがならび、にぎやかにスタートしました。
Do it yourself、自分でやってみる、なんとかしてみる、ということは、自分と誰かがいて一緒になんとかできることの発見なのかもしれません。太陽熱を上手に使う。
明るさをもらい、熱は遮る。寒い時には暖かさを貯めて家の中に引き入れる。エコハウスDIYから、自分とまわりの自然の力をともに認め合える気付きがたくさん得られるような気がしました。
暮らしををちょこっと自分の手に取り戻してみたいな、と思った方、このクラスからはじめの一歩を仲間と一緒に踏み出してみませんか?
(Text: 吉村千晶)
– INFORMATION –
エコハウスDIYは第2期の受講生を募集しています!
みかんぐみ竹内昌義さん、エクセルギーハウス黒岩哲彦さんと学ぶエコハウスDIYクラス
講座日程
第1回 7/5(日) 10:00-20:00 フィールドワーク@小金井(集合:JR中央線 武蔵小金井駅)
第2回 7/7(火) 19:15-21:45
第3回 7/19(日) 10:00-20:00 出張DIYワークショップ@鶴見(集合:JR京浜東北線 鶴見駅)
第4回 7/28(火) 19:15-21:45
第5回 8/14(金) 19:15-21:45
詳細は、こちらまで!